毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~   作:ケ・セラ・セラ

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01-24 SUPERMAN

 

 巨大な、青白い光の大爆発。

 数キロ離れているにもかかわらず、爆風でモリィの体は吹き飛ばされた。

 

「ひひひひひ! ひひひひひひ!」

 

 意識が途切れていたらしい。マインドツイスターの狂った笑い声でモリィは覚醒した。

 なぎ倒された木々の合間、下生えの中だ。

 動くなと命令されている体は受け身も取れない。

 運良く下生えに突っ込まなかったら死んでいたかもしれなかった。

 

「ヒョウエ・・・ヒョウエは・・・」

 

 必死に目を動かして爆発の跡を見ようとするが、下生えに埋もれた姿勢では何もわからない。

 

「ひひひ! やあ、起こしてしまったか! サービスだ! もう動いてもいいよ!」

 

 即座に跳ね起きて走り出した。

 多くの木が倒れている。倒木を飛び越えて、それが見えるところまで走った。

 ヒョウエが戦っていた場所が視界に入る。

 

「・・・・・・・・」

 

 何もなかった。

 岩も、荒野に自生していた僅かな植物も、荒野すらなかった。

 巨大なクレーターがひとつ、あるきりだった。

 

 力が抜けて、地べたにへたり込んだ。

 気張っていた心が破れる。ずっとかぶっていた鉄の仮面が剥がれ落ちる。

 ボロボロと涙がこぼれた。母が死んで以来、決して流すまいと思っていた涙が。

 

「ヒョウエ・・・・ヒョウエ・・・・ヒョウエェェェェェェェェェェェェェェ!

 なんでだよ、何であたしのために死ぬんだよ! お前死んじゃいけない奴じゃないか! スラムのガキどもを、サナさんやリーザはどうするんだよぉ!」

「ひひひ! ひひひひひ! いやあ、それが見たかった! 最高ですよモリィさん!」

 

 モリィが泣き叫ぶ。マインドツイスターが狂ったように笑う。

 

「いやでも本当に凄いや! まさか相打ちとは言えギガントを倒しちゃうとは!

 うん、正直舐めてたごめん! しょうがないな! あれが一番状態が良かったんだけど(・・・・・・・・・・・・・・・・)しょうがない(・・・・・・)!」

 

 地面に突っ伏していたモリィが頭を上げた。

 愕然とした表情が涙に濡れた顔に張り付いている。

 

「待て・・・お前今なんつった? 『あれが一番状態がいい』?」

「ひひひ! そうとも! こうなったらしょうがない! 人間捕まえて当座の燃料にするしかないね! 幸い人間がたぁくさんいる生け簀がすぐそこにある!」

 

 両手を広げて笑うマインドツイスターの肩越しに見えるのはメットー。

 50万人が住む大陸最大の都市。

 

「このっ!」

 

 神速。

 人間の反射神経が対応できない速度で引き抜かれた雷光銃が閃光を放つ。

 光はマインドツイスターの胸を貫いて大穴を開けた。

 

「え・・・?」

 

 モリィはむしろ唖然としていた。反射的に抜いて撃ったが、精神操作の術で止められると思っていたのだ。

 

「ひひひひ! この体ももういらないからね! サービスだよ! 付き合ってくれたお礼にここからのショーを特等席で見せて上げよう! さよならモリィさん! もうどうでもいいよ君!」

 

 狂ったように笑い続けるマインドツイスター。その顔面がいきなり二つに割れた。

 面の下にあったのは金属でできた顔のようなもの。

 そして脳があるべき場所に収まっている銀色の金属質の甲虫のようなもの。

 甲虫の頭には赤い宝石。先だってマインドツイスターがモリィに見せたそれと同種の。

 

「・・・記憶の宝石!?」

『ヒヒヒヒヒ! ジャアネ!』

 

 宝石のはまった甲虫が甲高い、きしるような声で喋る。

 マインドツイスターだったものの頭部から甲虫が飛び出す。

 あっという間に雷光銃の射程外に逃れたそれは、山の中に吸い込まれるように消えた。

 

 

 

 数分後。

 山全体が一斉に爆発した。

 

 巨人。

 巨人。

 巨人、巨人、巨人、巨人巨人巨人巨人・・・!

 

 50を越えるだろう巨人(ギガント)の軍団。

 そして、明らかに他の巨人とは違う、頭二つは大きな巨大で重装備の巨人。

 王の如き造形を施されたそれが、モリィを見る。

 口元がニヤリと笑ったように見えた。

 

「・・・・・・・・!」

 

 "マインドツイスター"の中に入っていた「あれ」だと直感する。

 「それ」が歩き出した。王に付き従う兵士のように他の巨人がそれに付き従う。

 

 人間の60倍の身長を持つ巨人たちだ。人間が歩いて十時間かかる距離を、彼らは十分で踏破する。

 その先にあるのは王都メットー。このままでは50万の人間が死ぬ。

 それがわかっていてモリィには何も出来ない。危険を知らせることすらできない。

 

 だが、モリィが忘れていることがあった。

 巨人の王が忘れていることがあった。

 ヒーローとは、こんな時にこそ現れるのだ。

 

 いや。

 

 こう言う時に現れるからこそ、ヒーローなのだ。

 

 

 

 「それ」が鳴った。

 

「!」

「!?」

 

 モリィが息を呑む。巨人たちが歩みを止める。

 

 ファンファーレが鳴った。

 少なくとも彼らは確かにそれを聞いた。

 

 奏でるものなどいなくとも。

 そこがたとえ荒野のただ中であっても。

 ヒーローは、ファンファーレと共に現れるのだ。

 

 

 

『な、いったい何事・・・』

 

 巨人の王が呟いたその瞬間、青い閃光が走った。

 

「!?」

 

 軍団の左端を歩いていた巨人が吹き飛んだ。

 顔面がひしゃげ、首がへし折れ、壊れた人形のように回転して吹き飛んでいく。

 数キロ吹き飛び、封印されていた山の中腹に叩き付けられてようやく止まる。

 先ほど巨人が現れた時と同じくらいの、巨大な土ぼこりがあがった。

 

「・・・」

「・・・・・・」

 

 モリィと巨人の王が共に絶句した。

 100mの巨人が小石のように吹き飛ばされる。

 理解と想像が追いつかない。

 現実味のまるで薄い光景。

 

 ほんの一瞬のことだがモリィには見えていた。

 それは巨人の顔面に炸裂した拳。

 

 それをなした「もの」は赤いケープをなびかせ、悠然とそこに在った。

 鮮やかな青い呪鍛鋼(スペルスティール)全身騎士甲冑(フルプレートアーマー)

 同じく鮮やかな、足元まで届く真紅のケープ。

 胸元に煌めく黄金の宝珠。

 そしてモリィには見える、全身を覆う直視できないほど濃密な魔力の光。

 

「青い・・・鎧・・・!」

 

 モリィは呆然とつぶやき、巨人の王は叫ぶ。

 

『馬鹿な! 『青い鎧』はメットーか、少なくともその近辺にしか出現しないはずだ!

 だからわざわざメットーから一日は離れたここまで奴をおびき寄せたんだぞ!』

 

 だがそれは確かにそこにいた。

 身長100mを越える巨人たちをも圧する存在感をもって。

 伝説か神話の如き光景。

 ヒーローは、今ここに降り立った。




 脳内BGM:『Superman』 https://www.youtube.com/watch?v=g1GNAXZMqCs
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