毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~   作:ケ・セラ・セラ

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08-16 助っ人参上

 挨拶を交わしてテーブルに着くと、ワインが運ばれてきた。

 

「わざわざいらして頂きありがとうございます」

「なに、報酬を貰って働くんだからボクとしては何も問題ないさ。

 まさかサナの《加護》にあそこまでの力があったとは思わなかったけどね。瞬間移動(これ)を経験できただけでも今回の依頼を受けた価値はあったよ」

 

 朗らかに笑うサフィアに笑みをこぼすヒョウエ。

 昨日、急遽リーザ達を介して連絡を取って貰ったのが彼女だった。

 実のところ、精神リンクしていればヒョウエ、リーザ、サナの三人は互いの能力をほぼ自由に使える。

 そうしてサナの瞬間移動の力でこちらに来て貰ったのだ。

 

 青い鎧のみならず冒険者としてもクライムファイターじみた真似をしているヒョウエであるが、目についた犯罪者を手当たり次第にというスタイルなので、実のところ真っ当な捜査活動は得意ではないし、得意な知り合いもいない。

 そこで数少ない例外であるこの男装の麗人に来て貰い、一連の流れを調べて貰ったのだ。

 

「すいませんね、時間がなかったもので。それでどうでした」

「カレン殿下と"狩人(ハンター)"氏の協力も得て、運営の外部スタッフとして潜り込めた。

 殿下に頂いた身分証明のおかげで山賊たちに聞き込みができたし、例の村にも行ってみた・・・多分君の推測、当たりだよ」

 

 ヒョウエが頷く。

 例の山賊に襲われていた村はここから1000km近くあるが、彼女にはこの前の事件の報酬としてディテク王国諜報機関"片隅の垂れ幕(コーナー・ヴェール)"から貸し出されている古代のアーティファクトの模造品、"銀の翼"がある。

 流石にヒョウエたちには遠く及ばないが、それでも時速500kmほどの速度は出るそれで手早く往復してきたのだろう。

 ちなみに型番にもよるが、ゼロ戦の最高速度が時速550km前後である。個人装備でそれに迫る性能を引き出せる真なる魔法の時代の技術がいかに優れていたかを窺わせる。

 

 今はもちろん装備していないが、恐らくは足元に転がしてある小ぶりな革袋の中に入っているのだろう。

 魔力を感じるそれは恐らく"隠しポケット"と呼ばれる魔法の袋。一抱えほどもある古代遺物(アーティファクト)も、魔法の袋であれば重さもサイズも関係なくしまい込める。

 閑話休題(それはさておき)

 

「山賊たちは『僕を』足止めするために雇われたってことですね」

「現状ではそう結論づけざるを得ない。もっとも、黒幕についてはさっぱりだからあくまで現状では、だけど」

「黒幕については何かないんですか?」

「魔法の達人と言うことくらいかな。黒いローブに身を包んでいて顔は影が差していてわからない、声もボコボコした変な響きで聞き取りづらかった、って言ってる」

「ふむ。幻影(イリュージョン)(シャドウ)、声は腹話術(ヴェントリロキズム)変音(サウンドチェンジ)あたりでしょうか」

「そのへんだろうね。それにそいつ、金に目がくらんで襲いかかろうとした山賊の一人を、睨むだけで燃やしたそうだよ」

「無音呪文ですか・・・!」

 

 無音呪文。名前の通りの高等技術だ。

 "大魔術師(ウィザード)"や魔導君主レベルの実力の持ち主かヒョウエのようなチート持ち、さもなくば特定の呪文だけをよほど鍛えた"一芸魔術師(エクスソーサラー)"のたぐいでなければまずものにはできない。

 たとえば火球(ファイアーボール)の呪文だけを徹底的に鍛える"火投げ師(ファイアスローワー)"と呼ばれる人々は、ほぼ例外なく火球の呪文(だけ)を無音で発動できる。

 火をつけたのは恐らく"火炎生成(プロジェクト・フレイム)"あたりだろうが、比較的初歩の呪文とは言えそれを無音で発動するのはやはりただものではない。

 

「やっぱり火事を起こさないように言い含められてたんですね?」

「大金の入った金袋を放り出してこれこれのタイミングであの村を襲え、時間は必ず守れ、何をしてもいいが火をつけるのだけはなしだ、火が付いたらすぐに消せ・・・それだけ言って姿を消したとか。

 もちろん、自分に襲いかかってきた馬鹿を火だるまにした後でね」

「・・・」

 

 沈黙が降りた。ヒョウエもサフィアも、考え込んで口を開かない。

 

「まあ考えていても仕方がありませんか。どう考えても情報が足りません」

「そうだね」

 

 サフィアが溜息をつく。

 彼女が"仮面(ペルソナ)"を切り替えて生み出される"探偵(ショルメス)"は"片隅の垂れ幕(コーナー・ヴェール)"のベテラン分析官をも凌ぐ情報分析力を持つが、情報がこれだけ乏しくてはいくら頭脳の冴えがあってもどうしようもない。

 

「カル・リス社が一番怪しいのは確かなんだけれどね。ここで何を言っても憶測にしかならないというか」

「ですねえ」

 

 溜息をついた後、ヒョウエが居住まいを正す。

 

「うん?」

「なので、サフィアさんには更に別途依頼をさせていただきたいんですが」

 

 サフィアが笑みを浮かべて頷く。

 

「もちろんだとも。そのために視覚強化と"迷彩(カモフラージュ)"の魔道具も用意してきたから」

「用意が良いですねえ」

 

 感嘆の面持ちでヒョウエが頷く。

 

「なに、"簡単な推理さヒョウエくん(Elementary , my dear Hyoue)"というやつだ。これが妨害であるなら間違いなく敵は二の矢三の矢を放ってくるだろう。

 キミがレースと自らの良心を両立させたいなら、キミほどではないにしろ機動力があって腕の立つ冒険者・・・つまりボクに対応を依頼するのが一番手っ取り早い。

 残念ながらここはディテクじゃないから、青い鎧が飛んできてくれるのも期待できないしね」

「そ、そうですね」

 

 もちろんそういう意図ではないだろうが、一瞬冷や汗を浮かべるヒョウエ。

 うん?と首をかしげた後サフィアが近辺の地図を取り出した。

 こちらもあらかじめ用意しておいたらしい。

 

「ボクの"仮面(ペルソナ)"、"探偵(ショルメス)"の推理によれば、次に襲われるとしたら恐らくここかここだね。ちょっと近いけどこちらもありうる」

「根拠は?」

「至極単純に大街道からの距離だよ。キミが気がつくことができて、他の参加者が気がつかない距離となると恐らく五キロから十キロの間。

 あちらもキミの視力の正確なデータは持ってないだろうから、ある程度試行錯誤にはなるだろうけどね。それと地形的にここは街道を歩いていると気付かないけど飛行していると気付くかも知れない」

「なるほど」

 

 感心しきりのヒョウエ。

 

「それではお任せしてしまってよろしいでしょうか」

「任された。というか、レースの行程を考えるとボクはもう出ないと間に合わないね。

 それじゃ」

「お願いします」

 

 そのままサフィアは立ち上がり、すたすたと酒場を出て行く。

 頼もしそうにその背中を見つめて、ヒョウエは注文したワインを口にする。

 一杯一ダコックの安ワインがやけに美味く感じた。

 

 

 

 その後、スタート地点に向かったヒョウエを待っていたのは極寒とは言わないまでもかなり冷たいマデレイラの視線であった。

 

「ふぅん。朝からお酒ですか。昨日はちょっと見直しましたけど、その評価は撤回しますね」

「え? いや、これは・・・」

 

 言い訳しようとするヒョウエの肩に、がしっとゴードの腕が回された。

 

「お嬢ちゃん、そこは理解してやりなさいよ。男にはね、呑まなきゃやってられないこともあるのよ!」

「何ですか、余計な口を・・・」

 

 逆側からがしっと回されるもう一本の腕。

 

「そうだぞ小娘。女が男の世界に踏み込むものではない」

 

 まじめくさった顔でカイヤン。ただし目が笑っている。

 対照的にマデレイラの視線の温度は急降下。

 

「見下げ果てた人たちですね。所詮あなたもその二人と同類ですか」

「違いますって!」

 

 結構必死で訴えるも、マデレイラがそれを聞き届けることはなかった。合掌。

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