毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~ 作:ケ・セラ・セラ
青き閃光が走る。
そのたびに巨人たちが破壊されていく。
首がもぎ取られる。
胸に大穴が空く。
頭から股間まで真っ二つに引き裂かれる。
古代の偉大な魔術師たちによって作られた巨人兵器が、一秒ごとにスクラップになっていく。
「・・・」
巨人の王とモリィが呆然としていた数秒の間に十体、五分の一の
『 !』
人間の声には聞こえない音を"王"が発する。
生き残った巨人たちが、一斉に両手を掲げた。
見えない念動の投網が青い鎧に次々と投げかけられる。
僅かずつ青い鎧の動きが遅くなり、四体を更に破壊したところで空中に止まった。
無数の念動の壁を全て同時に突き破るのは、青い鎧と言えども容易くはない。
いつの間にか巨人たちは半円形の包囲網を作っている。
『やれ!』
"王"の号令一下、巨人たちの胸が一斉に開いた。
青い鎧によって多くが破壊されたとはいえ、それでも三十を越す青き魔光が放たれる。
一つでも天を穿ち、地を焼き尽くすそれが三十数本。
いかに青い鎧とは言え、避けることも耐えることもかなわない。
かなわない、はずだった。
『なぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?』
"王"が叫ぶ。
一点に集中した青白い光線が強制的に拡散させられ、四方八方に飛び散る。
光と稲妻の乱舞で視認はできないが、その中心にいるのは青い鎧。
極限まで圧縮された濃密な魔力が巨人の魔力光と干渉し、分解・拡散させている。
それでも巨人は魔力光を放ち続ける。
飛び散る青白い光のかけらがあるいは雲散霧消し、あるいは荒野に着弾して数十メートルはあるクレーターを作る。大地が溶解し、急速に冷却されてひび割れたガラスになる。
無数のクレーターが周囲を埋め尽くしたところで光が細り始めた。
見る見るうちに光線の幅が狭まり、十数秒で光が消える。
巨人達が手を伸ばした先には、先ほどと変わらず悠然と空に浮かぶ青い鎧。
なびくケープにすら、焦げ目一つできてはいない。
再び、青い閃光が走った。
体内に残った魔力をほぼ使い切った巨人たちにそれに抗う術はない。
今や巨人たちはその肉体を支える構造強化の術式、体を守る防御の術式ですらろくに稼働させられない。
青い閃光が一直線に走るたびに、数体の巨人が粉々になって吹き飛ぶ。
そのさまはもはや鋼鉄の巨人ではなく、"
メナディのビスケットのように容易く粉々になる巨人たち。
残った三十数体の巨人たちが全て破壊されるのに、十秒と掛からなかった。
『あ、あ、あ・・・』
呆然と"王"が呻く。
最後の
『ひっ・・・』
指揮官機ゆえの高度な演算能力が人間の感情をエミュレートし、理解してしまう。
恐怖という感情を。
慌てて両手を向け、念動の魔力を放つ。
彼には兵士機の三倍の出力が付与されている。
疲労した青い鎧が相手ならばあるいは・・・
そう思った瞬間、"王"の右腕が肩から吹き飛んでいた。
青い残像。
誰もいない虚空に向けて、左手から念動の魔力が投げかけられる。
再び青い閃光。
左腕がやはり肩から吹き飛ぶ。
『あ、あ、あ、ああああああああああああああああああああああああ!』
絶叫が不意に途切れる。
喉元に青い閃光が走ったかと思うと、"王"の首が吹き飛ぶ。
ゆっくりと落ちていた右腕が、この時ようやく地面に落ちて土煙を上げる。
十数秒遅れて体と首が地面に落ち、巨人の王は機能を停止した。
『クソ! クソ、クソ、クソッ! ナンデコウナル!?』
銀の甲虫――巨人兵器指揮ユニットの中央演算デバイスは一直線に飛行していた。
まさか、まさかたった一人の人間にあんな事ができるとは。
彼を作ったいにしえの魔術師でも、生身であんな真似はできない。
『ナンナンダ、アイツハ!』
だがまだ終わりではない。
青い鎧の正体があいつなら、あの女を人質に取れば――!
がくん、と空中でユニットは静止した。
マニピュレーターをうごめかせるが、飛行ユニットを全開にしているのに躯体はピクリとも動かない。
「逃がすと思ったか?」
深みのあるバリトンが死刑宣告のように響いた。
『ヒッ・・・!』
青い呪鍛鋼の籠手にわしづかみにされる躯体。
再び感じる恐怖という感情。
「彼女にあれだけの事をしてくれたお前を、許すわけがないだろう?」
『イ、イヤダァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!』
絶叫し、身をよじる。
次の瞬間、彼は恐怖から永遠に解放された。
モリィはその一部始終をつぶさに見ていた。
そのもとに青い鎧が飛んでくる。目の前にふわりと降りた。
「・・・・・」
モリィが無言で青い鎧を見上げる。
そうであって欲しいという気持ちと、まさかという気持ちがせめぎ合う。
ぴしり、と音がした。
鎧に無数のひびが縦横に入り、ジグソーパズルのようにバラバラになる。
空中に浮いた無数のパーツが渦を巻いて組み合わされていき、それと共に色を失って鋼色になる。完成したのはモリィにもここ半月で見慣れた
鎧の中にいたものがとん、と地面に降り立った。
にっこり笑いかけてくるその顔を見た途端、モリィの両目からボロボロと涙がこぼれた。
「ヒョウエ・・・ヒョウエぇぇぇぇ!」
抱きついてくるモリィをしっかりと受け止める。
「すいません」
「馬鹿! 何で謝るんだよ! 悪いのはアタシだろ! ドジ踏んで捕まって・・・お前が死んだかと思った! ほんとに死んでたら・・アタシは・・・!」
泣きじゃくるモリィの頭を、ヒョウエはしばらく撫でてやっていた。