毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~ 作:ケ・セラ・セラ
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
『いったいったヒョウエがいったー! いや、ヒョウエ選手だけではない! マデレイラ選手、モニカ選手もトップの二人を猛追! ぐんぐんと差が縮まっていく!
おおっと、ここで先頭の二人も大きくスピードを上げた! ぬるい走りをしてるんじゃねえトップはオレだと言わんばかりの傲岸不遜!
これはもう全くわからない! トップの二人が逃げ切るか、追う三人が差し切るか、まさに待ったなし触れなば切れなんの一触即発のレース展開だーっ!」
ヒョウエがモニカを抜き去った瞬間、世界中のパブリックビューイングで大歓声が起こる。
初日の事故、二日目のヒョウエたちの順位ダウンに続いて三日目四日目と順位の変わらない単調な展開で焦らされた分の勢いが今一気に吹き出していた。
「いいぞ! 差せ! 差し切れ!」
「負けるな音速の騎士! オレぁおめえに賭けてんだ!」
「マデレイラちゅわーん!」
「モニカお姉様ー! がんばってー!」
「カイヤンの! ちょっといいとこ見てみたい!」
各国ではそれぞれの国の代表に対する応援が飛び交う。
もっとも外見やら賭けやらで他国代表を応援する人間もいるし、代表の出てない国で特定の代表選手を応援する人間もいる。
「勝て! 頼む、勝ってくれヒョウエくん!」
「おたくディテクの人だろ。音速騎士が勝ってもおたくのとこの勝ちなんだからいいじゃん」
「ディテクだけ二人出てるってずるいよな・・・あ、わかった。あの子に大金賭けたんだろ。それともそう言う趣味か?」
「いや、うちタム・リスの下請けなんで・・・」
「「あ、そういう」」
「! 動きましたか!」
カイヤンには届かないまでも、姉弟子から借りだしてきた感覚強化の魔道具の力によって、ヒョウエは先頭の二人の動きを察する。
やはり奥の手を隠していたのだろう、二人ともこれまでのペースを考慮した走りではない。特にゴードはヒョウエとの競争の時にも見せなかった全力中の全力。
だが、それでもなおヒョウエの方が僅かに早い。
後ろを確認し、キャノピーの中で歯ぎしりするマデレイラと、笑みを浮かべるモニカの顔を確認する。
「ふふふ、みんなで楽しもうじゃないですか。今だけは僕も何も考えず、レースを楽しませてもらいますから・・・!」
「
内部の圧力が更に上がり、噴射炎が一段と大きくなる。
燃焼室の念動障壁を強化しつつ、ヒョウエは笑顔で更なる重力加速度を受け入れた。
「ってな具合で、今頃楽しんでるんだろうなあ、ヒョウエのヤツ」
「・・・見てもいないのに勝手に決めつけるのは邪推というものでしてよ、モリィさん」
「けどあいつならそんな感じだろ絶対」
「・・・」
「・・・」
モリィの断言に、一応はたしなめたリアスも沈黙する。
透明の結界を張っているカスミもフォローらしきものは口にできない。
「まあ確かにヒョウエくんならそんな感じかなぁとも思うけど、無駄話はほどほどにね。
特にモリィ君の目は今のボクたちの命綱なんだから」
「へーい」
苦笑するサフィアに生返事を返すモリィ。
今、彼女たちは高度1000mの空中にいた。
ヒョウエの介入を狙って騒ぎを起こすであろう山賊と、それについているであろうカル・リス側の戦力に対応するためだ。
カレンに無理を言ってサフィアと同じ飛行魔道具を借り受け、カスミの術で姿を隠しつつモリィの目で山賊たちを探している。
今回襲われそうなもう一つの村にはミン・ニム・ボーインとその部下たちが向かっているはずだった。
「しかしこの・・・白の翼は難しいですわね」
「銀の翼。白の翼はオリジナルな」
「どっちでもいいじゃありませんの。白の翼を元にして作られたのでしょう、これは?」
「違うのだ!」
「ふわっ!?」
いきなり形相を変えたモリィにリアスが軽く引く。
「"白の翼"は
「は、はい」
普段ならカチンと来て思わず言い返しているだろうリアスだが、今回は自分の方が地雷を踏んだらしいのが何となくわかる。
何がレッスン4だかよくわからないが(多分ニホン産のスラングか何かだろう)、妙な勢いのモリィに逆らわない方が良さそうだと判断して素直にコクコクと頷いた。
「よし。まあお前重いからな。あたしらは思った通りに飛べる感じなんだが」
「誰が重いですって!?」
「鎧! 鎧のことだよ!」
今度は攻守一転、リアスが般若の形相でモリィに噛みつく。
当然だがソフトレザー・ジャケットのモリィとサフィア、「着込み」程度のカスミに比べて全身金属鎧を装着しているリアスは重い。
普段軽々と動けているのは筋力強化がかかっているからであって、軽量堅牢な魔法合金製とは言え、やはりこの四人の中では突出して重い。
リアスが女性としては体格がいいからなおさらだ。
だが、だとしても女性に体重と年齢の話を振ってはいけない。たとえ同じ女性であっても。たとえ同じ女性であっても。
ちなみにカスミの「着込み」とは薄く小さな金属の輪を縫い付けた服だ。
チェインメイルではない本来の意味での「くさりかたびら(鎖を縫い付けた服の意)」である。忍者のみならず武者が鎧の下に良く着ている。
ドラマなどで鎧を脱いだ武者の鎧下に黒く小さな何かが着いていたりするのがそれだ。
チェインメイルの概念が日本に入って来たときに訳語としてこれが当てられたが、本来はリングメイルアーマーの方が近い。
「お、見つけたぜ。ひのふの、30人ちょいってところか」
ぎゃあぎゃあじゃれあいながらも、きっちり仕事はしていたモリィ。
リアスも即座に口を閉じて臨戦態勢に移行する。
「山賊だけかい?」
「いや、間違いなくカル・リスなり地元の殺し屋なりが混じってるな。
山賊が30人くらいだけど、その中に明らかに歩き方が違う奴が五人混じってる。
同じような小汚ねえ格好はしてるがその辺のごろつきじゃねえ、殺しのプロだ。
多分真っ向からやりあったらサフィアの姐さんでも二、三人が限度だろ。
後、少し離れた所に透明化して後をついてきてる術師っぽいのが一人いる」
「おおう」
思わず声が漏れる。
同時に思わず呆れた表情が出てしまったがボクは悪くあるまい、とサフィアは思う。
「この距離からよくもまあそこまで・・・本当に便利な《加護》だな」
「姐さんだって大概だろ」
肩をすくめて返すモリィ。
まあ剣士と魔術師と探偵と運動選手とスパイと芸術家と職人その他を同時に兼ねられるサフィアの《加護》だって確かにとんでもない。
ゲームで言えば通常の人間が三つしか技能を取れないところ、三十個技能を取れるようなものだ。
そのたとえで言えば同時に使える技能が三つという制限はあるが。
「で、どうするんだ? 今はあんたがリーダーだぜ、姐さん」
「そうだね。まずは後方に降りて不意打ちで術師を倒そう。尋問したいからなるべく生け捕りで。
透明化に気付かれるようならモリィ君が雷光銃で何とか術師を倒してその後は流れかな。
ただ一つ聞いておきたいんだけど、カスミくんの作る闇、モリィくんは見通せるかい?」
「問題ないぜ」
「よし」
一つ頷いてサフィアは話を続ける。
「ならばまず術師を倒し、その後カスミくんは相手を闇で包んでくれ。それ以外は何もしなくていい。ただ相手を闇から出さないように。
そこにモリィくんが手練れのヤツを狙って雷光銃を撃ち込む。うまく始末できたら、後は雑魚を掃討するだけだ」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
三人娘が絶句してサフィアを見る。
「? なんだい?」
「いや、えげつねえなサフィア姐さん・・・」
「地の利は活かすものさ。こちらで地の利を作れるときは尚更ね」
そう言って、この百戦錬磨のクライムファイターは色っぽく微笑んだ。
その後のことは詳しく語るまでもない。
おおよそはサフィアの立てた計画通りに運んだ。
まず不意を打たれた術師はリアスの峰打ち一発で昏倒させられた。
「透明の術を使える人間は、得てして他者がその術を使ってくるとは思わないものです」とはカスミの言だ。恐らくは一族に伝わる戒めだろう。
その後突然闇に包まれた殺し屋たちをモリィがあっという間に射倒す。
いかに手練れとは言え、右往左往する山賊に巻き込まれて回避もままならない状態ではいかんともしがたかった。
そして残りのごろつきたちを片付けて彼らの仕事は終わった。
「なんつーか・・・あっさりしたもんだなあ」
「策がはまるというのはこういうことさ。あらかじめわかっていればいくらでもやりようはある。さて、それじゃ尋問タイムと行こうか?」
昏倒した術師を見下ろして朗らかに笑うサフィ。モリィが肩をすくめた。