毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~   作:ケ・セラ・セラ

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08-22 自分の言葉は必ず自分に跳ね返る

「参ったねこれは」

「まるで貝だな」

 

 ヒョウエが大歓声を受けている一方で、そんなことはつゆ知らず頭を抱える人々もいる。

 山賊たちを全滅させてから数十分後、三人娘とサフィア達は苦り切った顔で溜息をついていた。

 最初に昏倒させて残しておいた黒ローブの術師を(雷光銃と刀を突きつけた上で)尋問してみたのだが、大抵の犯罪者なら口を割らせることのできるサフィアの尋問テクニックをもってしても何ら成果は上げられなかった。

 口が固い以前に、何を訊かれても何も答えない。明らかに尋問に対するトレーニングを積んでいる反応だ。

 

 拷問も考えてはみたがサフィアはQBからその手のテクニックを伝授されていないし(曰く「向いていない」とのこと)、カスミもいろはをさっと教わった程度だ。

 それくらいならカレン、"片隅の垂れ幕(コーナー・ヴェール)"に引き渡した方がまだしもだろう、と言うことで話がまとまり、

 サフィアが冷却呪文で失神させた上で拘束する(人間は脳の温度が30度以下になると意識を保っていられなくなる)と、彼女たちは術師をぶら下げてヒョウエが――ミンも――待っているであろうチェックポイントの街に向けて飛び立った。

 

 

 

「「「ヒョウエ! ヒョウエ! ヒョウエ! ヒョウエ!」」」

「うぬぬぬぬぬ!」

 

 歓声を受けるヒョウエをマデレイラが睨んでいる。

 怒りの余りメガネから破壊光線(ビーム)が出そうなご面相だ。

 例によって流されているレースダイジェストの例のシーンも最早気にならないようだ。

 自慢の魔導ポッドの切り札を切って、それでもなおヒョウエに負けたことがよほどプライドを傷つけたらしい。

 

 隣に立っていたモニカ(何とかマデレイラが四位はキープした)が苦笑しながら頭を撫でてやるが、マデレイラはその手を乱暴に振り払って女冒険者をきっと睨む。

 身長差は50センチをゆうに超えるので、かなり首の角度が苦しそうではあるが。

 プルプルと震えながらそれでも自分を睨みつけるマデレイラを見て、モニカの苦笑はますます深くなるようだった。

 

 いつもならそれをゲラゲラ笑って見ていそうな駄目な大人二人も、今回はその元気がない。

 終盤のスパートで疲労困憊しているのもあるだろう。

 だが一番大きいのは全力を出して負けたこと。

 つまりはマデレイラと同じだ。

 二人はちらりと視線を交わした後、ものも言わずに別れてその場を去っていった。

 

 

 

「「「ヒョウエ! ヒョウエ! ヒョウエ! ヒョウエ!」」」

 

 歓声にしばらく応えて愛想を振りまくと、ヒョウエは激突した石壁に向かって"修理(リペア)"の呪文を発動する。

 

「おおおおおおおおおおおおおお」

 

 歓呼の声が感嘆と驚愕の声に変わった。

 ドラゴンでもぶつかったのかと言うくらいの大穴を開けて崩壊した壁が見る見るうちに復元していき、完全に元通りになる。周囲の壁より新しく立派に見えるくらいだ。

 

「「「ヒョウエ! ヒョウエ! ヒョウエ! ヒョウエ!」」」

 

 更に熱を帯びて響き始めた声援に軽く手を振って応えると、ヒョウエは護衛の兵士を伴って与えられた宿舎に引き取った。

 

「うん?」

 

 部屋の前に籠を持ったメイドと共に運営のスタッフ。

 二人が深々と頭を下げる。

 

「お疲れさまでした、ヒョウエ選手。部屋の中に湯と桶、着替えがご用意してございます。お召し物は洗濯してすぐにお届けしますので・・・」

「ああ」

 

 どうやら汚れてしまったので気を利かせてくれたらしいと合点して、笑顔で頷く。

 

「ありがとうございます。お湯はありがたく使わせて頂きますけど、洗濯は結構ですよ」

「え? しかし・・・」

 

 パチン、とヒョウエが指を鳴らした。

 土ぼこりにまみれたヒョウエの格好に視線をやった二人と後ろの兵士たちの目が丸くなる。

 帽子、上着、袖、すそ。

 土の色にまみれていた布地が、すうっと元の青さを取り戻していく。

 

 魔力を見る事ができれば、魔力の波に洗われた部分から汚れが取れていくことに気付いたろう。

 十秒も経たずに、ほこりまみれだったヒョウエの帽子とローブは元の青さと鮮やかな金糸銀糸の綺羅綺羅しさを取り戻していた。

 もう一度パチンと指を鳴らすと、今度は自前の"清掃(クリーニング)"の呪文で顔や髪についた土ぼこりがすっと消える。

 

「ほわああああああ」

「まあこう言うわけで、魔法の服ですので洗濯はいらないんです」

「ははー・・・・・・・」

 

 驚きすぎて変な声を出すメイドと、言葉にならない運営スタッフ。

 

「それではこれで。お湯ありがとうございました」

 

 一礼してヒョウエは部屋の中に入った。

 

 

 

 桶に張った湯に浸かり、体を手ぬぐいでぬぐう。

 ぬるくなると"発火(イグナイト)"の呪文で沸かし直し、体がポカポカしてきたところで用意してもらった新しい下着に替え、ごろりとベッドの上に転がる。

 

「あー・・・極楽ですねえ」

 

 できればこのまま寝てしまいたいのだが、現状はそれを許さない。

 それでも(ヒョウエの基準からしても)大量の魔力を練った疲労からうとうとしていると、一時間ほどでそれが来た。

 

(ヒョウエくん?)

(ああリーザ。みんな来ました?)

(うん、モリィさんたちから連絡があった。それより大丈夫?)

(大丈夫ですよ。多少ぶつけましたけど、この程度どうってことはありません。大体リーザもサナ姉も心配しすぎなんですよ・・・)

 

 言ってから「しまった」と思うヒョウエ。

 まるで目の前にいるかのように、幼馴染みの少女の中で拳銃の撃鉄がガチンと落ちるのが見えた。

 

(ヒョウエくん?)

(はい)

 

 面と向き合っていたら思わず正座していたであろう。

 寝転がったヒョウエの背筋がぴんと伸びる。

 

(私も、サナ姉さんも凄く心配したんだからね!? モリィさんたちだって!

 私たちがヒョウエくんのこといつも心配してるのわかる!?)

(はい、存じております。すいません)

 

 全面降伏の平謝り。

 「女を怒らせたときはとにかくあやまれ」とは父親の薫陶である。

 

(そうですよヒョウエ様。ヒョウエ様の無茶には慣れておりますが、あの時は見ていて心臓が止まるかと思いました)

(はいすいませんサナ姉。おっしゃるとおりです)

(そうだよ! それで心配しすぎって! 心配するに決まってるじゃない!)

(はい、このたびは不用意な発言でご不快な気持ちにさせてしまい、大変申し訳ございませんでした)

 

 珍しいことにサナまで参加してくる。

 普段は気を利かせているのかリーザとの会話に割り込んで来ることは滅多にないのだが、今回ばかりは控えめな女執事も腹に据えかねたらしかった。

 

(聞いてるの、ヒョウエくん?)

(いいですか、ヒョウエ様?)

(はい、聞いております。ご心配をおかけして申し訳ないと思っております)

 

 心の中でひたすら平身低頭するヒョウエ。

 二人がかりのお説教はそれから更に十分ほど続いた。

 モリィ達が待っていなければ更に二十分は続いたであろう。

 因果応報。

 

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