毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~ 作:ケ・セラ・セラ
「遅かったな。始めちまってるぜ」
「すいませんね、ちょっとありまして」
冒険者の酒場に行くと、既にモリィ達とミン達が揃っていた。
もちろん護衛はまいてきたし、ヒョウエの姿は幻影で別人に変わっている。
あてがわれた部屋のベッドではヒョウエの幻影が高いびきをかいているはずだ。
三人娘やミンも言われなければわからないほどの変装をしていた。
ミンは護衛なのか三人の男女を連れていたが、彼らも恐らくはそうなのだろう。
サフィアを入れた八人は既に運ばれてきた料理を腹に入れ始めていた。
「当てて上げましょうかぁ。女の子とトラブルでしょ。恋人か誰かに泣かれちゃったかしらぁ?」
「ああ、派手にやらかしたらしいな。リーザとサナさんにお説教喰らったか」
眼を細めて、根拠もないのにずばり言い当ててくるミン。
にひひと笑ってこちらも正確に事実を指摘するモリィ。
いたずらっぽく笑って肩をすくめるサフィアはまだしも、リアスとカスミにも「ああ」と納得顔をされている事に納得がいかない。
「女難を退けてくれる神様っていませんでしたかねえ」
ヒョウエは割と本気で天を仰いで嘆息した。
「まあ取りあえず食事にしますか」
「お、ごまかしたごまかした」
「あーうるさい」
女性陣(ミンのお付き含む)の視線から逃れるようにヒョウエが席に着き、料理を勢いよく腹に詰め込み始めた。
実際、昼時である。加えて先ほどまでのレースでヒョウエ基準でもかなりの魔力を消費しているので随分と空腹だった。
九人分の料理があっという間に卓の上から消えていく。追加注文した料理も来る端からヒョウエの胃袋に直行だ。
慣れている三人娘もふくめ、他の八人がまじまじとその様子を見ている。
「・・・その体のどこにそれだけ入るのかしらねえ。私より小さくて細いのに」
「それがあたしらも疑問なんだよなあ」
ミンとモリィ。いつの間にか気安くなってる二人が溜息をついた。
「あー食べた食べた。ごちそうさまでした!」
ヒョウエが大きく息をついた後、両手をぱしんと合わせる。
恐らくは十人前ほどの料理がその胃袋に収まっているはずだ。
ゆったりしたローブを着ていることもあるが、その腹はほとんど膨らんだように見えない。
ミンのお付きたちが幽霊でも見るような目でその様を見ていた。
「そう言えばサナが言ってたなあ。魔法を沢山使った後のヒョウエくんの食事を作るのは大変だって」
「これの面倒見れるのはあの姐さんくらいだろうなあ・・・」
「わ、私だってどうにかしてみせますわ! ・・・料理人を沢山雇って・・・」
「・・・」
「お嬢様、こう言う時に他力本願は評価が下がりますよ」と口にしないのがカスミの優しさである。
「おめー他力本願かよ。だっせーな」
「何ですって!?」
一方で遠慮なしに口に出すのがモリィだ。
「本当の事を言うときは馬のあぶみに片足をかけておけ(=逃げる準備をしておけ)」とか、「その通り だから余計に 腹が立ち」とか、昔の人はうまいことを言ったものである。
「それじゃ反省会と行こうか。こっちは山賊25人、手練れの殺し屋らしき人物五人を片付けて、術師を一人確保した。これは"
まず口火を切ったのはサフィア。"
それに口を尖らせて抗議するのはミン。
「あいつらに引き渡したの? こっちに渡してくれれば使い道もあったのに!」
「かも知れないけどね。彼女たちにも恩は売っておきたいのさ。それにまさかキミ達の方が"
「むう」
口をへの字にして黙り込むミン。
そうしていると意外に年相応の少女に見える。
「まあでも、私のところにはいないけどお婆さまには気を付けなさい。
あいつのところには多分"
すっ、とサフィアの眼が細められた。
「それは尋問術の達人かな? それとも魔術か、あるいは《加護》か」
「私も詳しくは知らない。でもよほどの相手でも抵抗できずに情報抜かれるような事は言っていたわ」
「ふむ・・・」
首を横に振るミンに、サフィアが考え込む。
代わってヒョウエが口を開いた。
「ここにいるところを見るとそちらもうまくやったようですね?」
「もちろん。ただまあ、それも今日まででしょうけどね」
「ですね」
頷くヒョウエ。
「そっか、連続で対処されたら」
「当然攻め手は変えてくるわ。多分、ヒョウエくんを直接狙ってくるんじゃないかしら。それも多分レースの合間に」
「ですね」
モリィが気付き、ミンの言葉にヒョウエが頷く。
一応護衛の兵士は付いているし大会の方でもスタッフが待機しているが、相手がヒョウエの実力の一端なりと知っている以上、相応の手練れを送り込んでくるだろう。並の兵士や冒険者では役に立たない。
「・・・今日来ますかね?」
「ないとは言えない、かな」
恐らくカル・リス社、イナ・イーナ・ボーインの配下はマデレイラのそれを大型化したような十数人乗りの高速魔導ポッドを使っている。
ミン達も同じものを使っているが、これは10人ほどが乗れる代わりに「銀の翼」より更に遅い時速300kmが限界(それにしてもこの世界では驚異的な速度だが)だ。
今イナ・イーナがいるはずのメットーからでは、一万kmほど離れたこの場所には丸一日半ほどかけねば到達できない。
だから状況の変化に即応はできない、はずなのだが・・・。
「あの妖怪ババァが"
「でしょうね。それこそ運送関係の大商会ですし、どこかの転移術師にコネがあってもおかしくはないでしょう」
頷き合う。
「取りあえず、今夜からサフィアさんとモリィ達は僕の部屋に泊まって貰えます? できれば透明化の術をかけた上で」
リアスの顔にぼんっ、と血が昇った。
「ヒ、ヒョウエ様とどどどどどど、同衾っ!? そんな、いけませんわ! まだ婚約も交わしておりませんのに! いえですがヒョウエ様がお望みなのであれば・・・」
妄想が暴走し恋情が炎上するズッコケさむらいドンデラリアスを、ヒョウエが無表情に、モリィが醒めた目で、サフィアとミンが面白そうに、ミンのお付きが唖然と。
そしてカスミが深い深い溜息をついた。
「なあカスミ。取りあえずぶっ叩いて正気に戻すか?」
「お気遣いありがとうございます。ですがこう言う場合に特効薬がございまして」
ニヤニヤするモリィの提案を断り、カスミが椅子の上に立ち上がる。
「ああ、駄目ですわヒョウエ様、嫁入り前の娘にその様なことを・・・」
更に耳年増の妄想がヒートアップする駄目娘の耳元に、カスミが何事かを囁く。
「・・・」
「!?」
リアスの体が硬直し、顔からさっと血の気が引いた。
ぎぎぎ、と音を立てそうな動きで傍らの、妹のような侍女のほうを振り向く。
「か、カスミ・・・な、なんで・・・」
カスミが片目をつぶり、リアスの唇に人差し指を当てる。
「語らぬが華、と言うこともあろうかと存じます、お嬢様」
「・・・」
その笑顔の前に、リアスは沈黙するほかなかったようである。