毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~   作:ケ・セラ・セラ

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08-24 アストロレーサー

 ヒョウエの部屋に泊まり込んで一夜を明かした三人娘とサフィア達だったが、幸いなことに刺客の襲撃はなかった。

 翌朝にまた護衛をまいて、冒険者の酒場で朝食を取りがてら作戦会議。

 

「まあ取りあえず僕は昨日までと同じようにレースをやってればいいんですよね」

「ええ。最悪このまま尻尾をつかめないとしても、あなたがレースで優勝してくれれば、お婆さまの野望はくじけるわ」

「このまま諦めてレースの流れに任せてくれれば良いと思うんだけどね。キミはどう思う?」

「私もそう思うけど・・・まあ、ないわね。あのクソババァのことだし」

「で、ございますか」

 

 溜息をつくカスミ。

 一方で彼女の主は一瞬で戦闘モードに入っている。

 

「かまいませんわ、カスミ。来るというなら残らず切り捨てるまででしてよ」

 

 忍者は徹底したリアリストで、武士や騎士はリアリストとロマンチストの混合物だ。

 諜報者である忍びと、戦闘者であるサムライの差とも言える。

 

 談笑からシームレスで殺し合いができる精神性。それを支えるのは戦士としての誇り。

 そういう意味ではリアスは既に一流のサムライ、少なくともそうなれる素質があった。

 

「・・・ふぅん」

 

 ミンがそれを面白そうに見つめている。

 彼女のお付き達も昨日の醜態との落差に少々驚いているようだった。

 こちらは少し感心顔のサフィアが地図を広げた。

 

「今日も一応周囲の村に網を張っておこう。今までの基準で行くならこことここ、後こことここも回っておくべきかな」

「そうね。私は異論ないわ」

「僕もです」

 

 一同が席を立った。彼女らの移動速度で対応を考えるなら、レース開始の一時間以上前には出発しないと間に合わない。

 

「それでは無事でまた会えることを願っていますよ」

「はっ、余計なお世話だぜ。お前はレースに集中してりゃいいんだよ」

「ご武運を祈っております」

「頑張ってくださいませ、ヒョウエ様」

 

 三人娘のそれぞれの激励に頷くと、ヒョウエは身を翻して冒険者の酒場を出た。

 

 

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお! かっとビングですよ、僕!」

 

「突き抜けろぉ! 青く! もっと青く!」

 

「俺の魔力全てくれてやる! 貴様も使い切れ、"天翔る銀の船(シルシープ)"!」

「ヒヒィィィィン!」

 

「光に乗れぇ! 吠えろ稲妻ァ! お姉様の弟を自称するあいつに天誅をォ! ボボ、リミッター解除よ!」

『しかしご主人様、この時点でリミッターを解除すれば機体の負担が・・・』

「構わない! あいつにだけは負けたくないの!」

『・・・了承しました。"READY"』

 

「負けない! もっと、もっとだ! 限界まで削り尽くせ! 燃やし尽くせ!」

 

 火を吐く杖にまたがるヒョウエ。

 自分の足一つで音速を叩き出すゴード。

 白き残像となって駆け抜けるカイヤンと神馬シルシープ。

 緑の流れる光に包まれて宙を飛ぶマデレイラとサポートAIボボ。

 半ばエネルギーの塊となって空を駆けるモニカ。

 

「すばらしい! 我々は今夢を見ているのでしょうか! いかに魔導、いかに奇跡、いかに神より授かった《加護》や神獣、古代魔道の叡智を集めたアーティファクトがあると言えど、人がこれだけの速度で競い合えるなど誰が思ったでしょうか!

 序盤の波乱、第三区間から第四区間の偽りの安定を経て第五区間での大逆転!

 あのヒョウエ選手の猛追撃からの一位フィニッシュに、選手も、観客の皆さんも、そして我々実況にも火が付いた!

 怒る心に火をつけろ! 一レース完全燃焼! タマとバットは男の証! 失礼、代表のうち二名にはツいておりませんでした! 謹んでお詫び申し上げます!」

 

 五人と一匹と一体が繰り広げる壮絶なデッドヒート。

 実況と観客の熱狂も最高潮に達している。

 下品な失言にブーイングも飛ぶが、ほとんどの観客はレースに熱狂している。

 

 結局のところレースは前日と変わらない順位でゴールした。

 トップにヒョウエ、やや遅れてゴードとカイヤンがほぼ同着、更にやや遅れてマデレイラとモニカ。

 だが疾走二時間、レースの様子を中継する幻像から目を離す観客はほとんどいなかった。

 

 

 

 そのまま三日が過ぎた。その間襲撃はない。村が山賊に襲撃されることもなく、ひたすらレースの熱狂の中に日々が過ぎていく。

 が、周辺を警戒するモリィ達の不安は逆に膨らんでいった。

 相手が何も仕掛けてこないわけはない。あるいは既に仕掛けられているのではないか――そんな不安に耐えながらも、ヒョウエを含めた八人は自分の仕事をこなしていった。

 

 九日目の昼。

 レース後、例によってあてがわれた部屋に引き取り、用意された昼食をとってごろりと横になる。

 リーザやサナがいたら注意されるところだが、今ここには二人ともいない。

 

「あー、解放感ですねー」

 

 別にリーザたちや三人娘のことが嫌いなわけではないが、一人でゴロゴロしていたい時間というのはどうしてもある。

 男なら尚更だし、レースがらみのあれこれで神経が疲れているのもある。

 寝台の上でうとうとしていると、馴染みの声が脳裏に響いた。

 

(ヒョウエくん、聞こえる?)

(あー、聞こえますよ。感度良好)

(・・・ご飯食べた後横になってなかった? 少し反応鈍かったけど)

(いえいえ、そんなことは)

(ふーん?)

 

 しばしの沈黙。

 あ、これ絶対ばれてるなと思いつつも、おとぼけを続けるヒョウエ。

 やがてリーザの方が溜息をついた。今回は見逃してやるというサイン。

 何だかんだと言って彼女はヒョウエには甘い。そして今回はもう一つ理由もあった。

 

(もういいよ。それよりも急いで。モリィさんから思念が届いたんだけど、かなり切羽詰まった状態になってるらしいの)

(! 誰か怪我でも?)

(わからない。生きるか死ぬかの瀬戸際って感じではないけど断言はできないよ)

(わかりました。今すぐ行きます)

(ヒョウエくんも気を付けてね?)

(ええ、もちろん)

 

 幼馴染みとの精神通話を切り、ヒョウエはベッドから跳ね起きた。

 

 

 

 幻影での変装やカモフラージュを済ませ、リーザから聞いた冒険者の酒場に小走りで急ぐ。

 朝食をとる冒険者たちで騒々しい酒場の中でただひとつ、険しい顔で無言の卓。

 モリィ。リアス。カスミ。サフィア。そしてミンのお付きの三人。

 ミンだけがいない。

 彼女らの顔が、ヒョウエを認めてほっとしたように緩んだ。

 

「何がありました?」

 

 挨拶ももどかしく、席についてすぐ尋ねる。

 

「それが・・・」

 

 モリィがちらりと、ミンのお付きの三人の方を見る。

 顔を見交わすと、この中ではリーダー格らしい20代後半ほどの女が口を開く。

 体にぴったりした革の上下、ミンほどではないが色気を振りまくタイプのあだな女性である。

 

「それがねえ、その・・・ミンちゃんが捕まっちゃったんだよ」

「・・・!」

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