毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~ 作:ケ・セラ・セラ
ミン・ナム・ボーインが捕まった。
その情報に一瞬固まるがすぐに気を取り直す。
「状況はどういう?」
「それなんだけどさぁ・・・」
ミンのお付きの女性――「ムーナ」と名乗ったが恐らく偽名かコードネーム――の話によれば、ここ数日やってきたようにルート沿いの村周辺を見回っていたところ、村を目指して移動している賊の群れらしきものを見つけた。
いつものように姿を消して強襲しようとしたが返り討ちにあい、ミンを取り戻したければヒョウエがレース中にこれこれに来い、というメッセージを伝えられて放置されたのだという。
「強かったんですか?」
「強かったのもそうだけど、あたしらの装備や戦い方、《加護》まで熟知していた動きだった。手も足も出なかったよ。ありゃ
意気消沈する三人組。
ヒョウエが三人娘とサフィアの方に視線を向けると、それぞれが頷いた。
「あたしらの方もそんな感じだった。サフィアの姐御がいなかったら負けてたかもしんねえ」
「こちらも、明らかに戦法を熟知した上で対策を取られてたね。雷光銃を弾く魔道具、ボクの力場の剣を相殺する力場の盾、リアスくんの"白の甲冑"でも防げない音波攻撃、透明化を見破る術師と対策する魔道具・・・地力で何とか押し切ったようなものだよ」
肩をすくめるサフィアに、硬い表情でリアスとカスミも頷く。
ヒョウエの見たところ三人組と三人娘の間にはそこまでの実力差はない。
雷光銃や白の甲冑、力場の腕輪などの強力な装備品が明暗を分けたのかもしれなかった。
「お願いだよ、ヒョウエさん、いや殿下! ミンちゃんを助けておくれよぅ!」
うっすらと涙を浮かべてリーダー格の女が懇願する。
それを断ることはヒョウエにはできなかった。
ためいき。
「あなたたちとミンさんに貸し一つですよ。それも大きな」
「!」
三人組の顔がぱっと明るくなる。
「すれてねえ奴らだな、裏稼業のくせに」
モリィが苦笑を漏らした。
翌日。
ライタイム国境の町から始まる最終区間、いよいよ笑っても泣いてもこれで最後。
ヒョウエ、ゴード、カイヤン、マデレイラ、モニカ。
順位こそ変わらないが、既にその差は先頭のヒョウエから最後尾のモニカまで時間にして一分を切っていた。
誰が勝ってもおかしくない僅差。
今日の終わりに先頭に立っているのは誰か。
それが、いやが上にも観客たちの熱狂を駆り立てる。
「ヒョウエーッ!」
「ゴードーッ!」
「勝ってくれカイヤン! お前はダルクの誇りなんだ!」
「マデレイラ様ーっ!」
「モ・ニ・カ! モ・ニ・カ!」
むろんアグナムを除くそれぞれの代表選手の故国でも、選手たちに対する声援は否応なしに最高潮に達している。
ディテクの首都メットー。ダルクの遊牧民が交易のために集う「石の町」。魔導の都クリエ・オウンド。ライタイムの古都アトラ。
それらの国の地方都市やアグナムを含めたその他の国の都市に設置されたパブリックビューイングは、一つの例外もなく熱狂と声援に満ち満ちていた。
「うおおおおおおお!」
「来た来た来た来たぁ!」
最後の号砲が鳴った。
ヒョウエが、ゴードが、カイヤンと"
大歓声。
ここまでの九日間、熱狂してきたように。
いや、それ以上の熱いクライマックスを見られると、観客は信じて疑っていなかった。
「え?」
「あれ」
「おい、どうした?!」
ざわめく会場。
パブリックビューイングの幻像はそれぞれの選手について一つずつ。
加えて地図上に選手を示す色違いの光点が表示されるものの、計六つ。
そのうちまずヒョウエを映していた幻像が消えた。地図上の光点はそのままだ。
それに続いてマデレイラ、モニカ、そしてゴードとカイヤンを映した幻像も消え、地図上の光点だけが残った。
「おいどうした、幻像来てねえぞ!」
「早く戻せ!」
「あの点が動いてねえってことは、全員止まってるってことか・・・?」
首をかしげるものもいるが、大多数の観客は怒濤のブーイング。
それが怒号になり、観客たちが騒ぎ出すのにはそれほど時間はかからなかった。
メットー北西区画のとある豪邸。
ゲマイの魔導八君主の一人、「ゲマイの死なない王様」ことダー・シ・シャディー・クレモントが数ヶ月間借り上げているその場所には、今や無数の魔道具と術師が詰め込まれ、全世界にレースの幻像を中継する放送拠点となっていた。
今回の放送の責任者の一人である術師が、通信用の魔道具から口を離してダー・シに向き直る。
「各地のパブリックビューイングが荒れており、暴動になりかかっている場所も複数あります。この際放送を再開しては・・・?」
「ダメヨ。選手たちガ全員自発的にビーコンを外してるんダカラ。
無理に放送したラ後で何があるかわからないワッ。選手の中ニハ、王族や魔導君主家の人間だっているのヨ!」
広い部屋の中央、輿に乗ったままヒョウエたちの幻像を見ているダー・シが部下の進言をはねつけた。
今回のレース中継、魔導ビーコンを首から外せば幻像はカットされると言うことになっているが、それは選手の都合を優先した処置にすぎない。
ダー・シ配下の術師たちによる念視はあくまでビーコンを目標として発動しており、ビーコンを遠くに捨てでもしない限り念視は維持される。
捨てた場合でもヒョウエやシルシープのような化け物じみた魔力を持っているのでもない限り、元から念視や千里眼を得意とする彼らの術を防ぐことは難しい。
なので、現在各地への中継を切っているだけでヒョウエたちへの念視は続いている。
「しょうがないワネッ! これまでのダイジェストを流してお茶を濁しナサイッ! すぐにレースは再開しますって言っておくのも忘れずにネッ!」
「は、はっ!」
ダー・シの命令一下、部下たちがきびきびと活動を再開する。
「・・・」
指示や報告が飛び交う中、ダー・シはヒョウエたちの幻像をじっと見つめた。
「――と、言うわけです」
溜息をつきつつ、ヒョウエは説明を終えた。
周囲にはレース参加者である四人と一匹と一台が勢揃いしている。
ミンをさらったカル・リス社の人間からのメッセージに従ってレースを途中離脱しようとしたらまずマデレイラが、そして他の面々もついてきてしまったのでビーコンを外して幻像をカットした上で事情を説明するはめになってしまったのだ。
誤魔化そうとも思ったが、当事者でもあるゴードにはバレるだろう。
ならばいっそというわけだ。
なお"失せもの捜し"の術はよほど強力な対探知手段を講じているのか、全く反応がない。なので出たとこ勝負というわけである。
「・・・何それ!」
「許せんな」
真っ当に怒りを露わにするのはマデレイラとモニカ。
表情にこそ出さないが、怒っているのはゴードもだ。
「よーくわかった。あいつら、ハナっから俺にまともに勝負をさせる気はなかったってことだな」
普段は軽い調子の彼だが、今のゴードにその面影は全くない。
一切遊びのない表情の奥からは、マグマのような怒りが垣間見える。
「お前の怒りは正当なものだ、友ゴード。そこまでコケにされたら殺すしかあるまい」
カイヤンが頷く。
「もっとも、それはお前らの問題だ。俺には関係ない」
「ですか」
ドライに言い放つカイヤン。
ヒョウエもある程度予想していたので驚きはない。
ゴードやモニカも同様だ。しかしマデレイラは腹に据えかねたらしい。
「何それ! こんな事やらかしてレースをダメにされて、黙って引き下がるの?! それ以前に人として許されないって思わない?」
「別に。俺や身内がやられたらケジメをつけさせるが、他人がどうなろうと知ったことではない」
「~~~~~~~!」
怒り心頭と言った表情で、マデレイラがドンドンと足を踏みならす。
モニカも不愉快そうな顔はしているが何も言わない。
「だがしかし、だ」
「?」
カイヤンがそこでニヤリと笑みを浮かべた。
「貴様らをこのまま行かせてレースを続けてもそれはそれで困る。
後から『あの時レースを続けていれば俺が勝っていた』などと言われては不愉快極まるからな」
ヒュウ、とゴードが口笛を吹いた。
ヒョウエとモニカが笑みを浮かべ、対照的にマデレイラがさめた表情になる。
「結局行くんじゃない。だったら最初からそう言えばいいのに、なによ、ごちゃごちゃ前置きして言い訳しなきゃ気が済まないのが大人の男ってもんなの?」
「何だとこのガキ」
「まあまあ」
「まあまあまあ」
一転してマジ顔でマデレイラを睨みつけるカイヤン。
大人げないダルクの英雄を、苦笑を浮かべたヒョウエとゴードがなだめる。
「お前も素直じゃない主人で大変だな」
「ヒヒン」
こちらも苦笑するモニカに、「わかってくれるか」とでも言いたげに神馬がいなないた。
超スーパーカー ガッタイガーは名前の通り合体するスーパーカーのアニメ。
五人の選手が協力する展開なのでこのタイトルに。
中国訳だとガッ「タイガー」だからなのか「猛虎号」って名前になっててちょっと草w