毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~   作:ケ・セラ・セラ

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08-27 虹を越えてきた男

「ふんっ!」

 

 ヒョウエが気合いをかけると共に、ミンを後ろ手に拘束していた封印の手かせ(シールド・シャックル)がこっぱみじんに砕け散る。

 

(ああ、もったいない)

 

 心の中で嘆くヒョウエ。魔道具好きの彼としてはなるべく壊したくはなかったのだが、魔法的な鍵を解くのにどうしても時間がかかるのでこうせざるを得なかった。

 

(それにまあ壊してしまえば再利用もできませんしね)

 

 モリィに化けた変身能力者に封印の手かせ(シールド・シャックル)をかけられて死にかけたのを思いだして溜息をつく。

 

「ありがと、助かったわ・・・丸腰じゃ役に立てそうにないけど」

「僕の後ろに隠れていてください。まあ助太刀の必要もないかもしれませんけどね」

 

 のんびり話す二人の目前では、シロウによる八面六臂の大暴れが繰り広げられていた。

 

 

 

「撃てぇっ!」

「神気遠当ての術! とぉーっ!」

 

 衝撃から立ち直った古傷の隊長が命令を下すのと、シロウが手刀を振り下ろし大音声で気合いをかけたのとが同時。

 

「なっ!?」

「ぐわーっ!?」

 

 シロウの気合いと共に、雨あられと射かけられた氷や雷撃の矢、火の弾丸、金属の槍などが空中で砕け散る。

 それどころか盆地にいた50人を越す戦士や術師――恐らく最低でも青等級から緑等級に相当するであろう精鋭たち――の、シロウに近い方にいた半分くらいが、見えない突風か爆発に巻き込まれたかのように吹き飛ばされた。

 

「!」

「!?」

 

 未知なるものへの恐怖と驚愕で男たちの足が止まる。

 その隙にシロウが斬り込んだ。

 

「たあっ! とぉっ!」

 

 徒手空拳のシロウが、面白いように男たちを打ち倒していく。

 時折火を放って広範囲の敵を燃やしたり、雷を落として後方の術師を打ち倒したりと言った超常的攻撃も交え、カル・リス社のエージェントたちは見る見るうちにその数を減らしていった。

 

「ぎゃっ!」

「ぐわっ!」

 

 むろんその周囲では、背後からシロウを狙おうとする敵をヒョウエの金属球が次々と打ち倒している。

 シロウがちらりと感謝の視線を向け、新たな敵に斬り込んでいった。

 

 

 

「な・・・何あれ・・・?」

 

 呆然と、その常識外れの大暴れにミンが呟く。

 

「単純に黒等級レベルの戦闘力ですね。最初のあれはニホンの古武道で言う遠当てと、いわゆる外気功を組み合わせたものでしょうか。

 武術の達人は生命エネルギーや魔力を練って、飛ぶ打撃を繰り出せると聞きますが」

 

 かつて遭遇した妖刀を操る怪人と語りの師匠を思い出しながらヒョウエ。

 古武術で言う遠当ては相手が動こうとする瞬間に大声で気合いをかけて動きを制限する技。乱暴に言えば大声で相手をすくませる技だ。

 一方で外気功は、かめは●波とか百歩神拳とか真空波動●とかサイコソ●ドとか鳳龍●空斬とかの、いわゆる気を飛ばす技そのものである。

 声に気功を乗せて、精神面と肉体面の両方に同時に衝撃を与え、打ち倒す技ではないかとヒョウエは見てとった。

 

「でもあの火や雷は? どう見ても呪文とか唱えてないし・・・無音呪文使いなの? あれだけ肉弾戦強くて!」

「まあその可能性もありますが・・・多分あれ精霊魔法(・・・・)ですね」

「!?」

 

 目を白黒させるミン。

 精霊魔法、あるいは呪術、妖精魔法とも言う。

 遥かな古代に存在した真なる魔法の後継技法であり、真なる魔法を小分けして生み出された神授魔法(系統魔法)とは兄弟かいとこのような関係に当たる。

 

 「念ずることで現実を改変する」万能の業である真なる魔法を呪文ごとに一つ一つ切り分けて習得するのが神授魔法。

 現代の人類(妖精含む)の魔法能力では超古代の"真なる魔術師(トゥルー・ウィザード)"のように真なる魔法を完全な形で操ることはできないため、できる事を限定してその範囲の中で万能であろうとしたのが精霊魔法だ。

 例えば人間の精霊魔法である魔女術ならば、霊との交感や治療、占術や病気の治療、呪いなど。その一方で妖精の中でも魔力の強い種族であるエルフやフェアリーの精霊魔法はかなり広範な分野の事象を操ることができる。

 

「け、けどあんなの魔女術(ウィッチクラフト)じゃ全然ないわよ! 強力な魔女(ウィッチ)は天候を操れると聞いたことはあるけど・・」

「まあ人間の精霊魔法と言っても色々あるんでしょう、僕たちの知らないようなのが」

 

 言いつつ、ヒョウエはシロウの術にゲマイのそれの気配を感じていた。

 ヒョウエの九つの金属球に刻まれた術式はイサミとゲマイ出身のアンドロメダによるものだ。だから、金属球の術と彼の使う術に類似性があるのがわかる。

 

日輪(Surya)火の星(Angaraka)月輪(Soma)雷の星(Brihaspati)・・・明らかにゲマイ九曜術の系統だ。けど雰囲気や術の使い方は精霊魔法なんだよな・・・?)

 

「そもそも何よあれ! 大怪我でリタイアしたんじゃなかったの!?」

「さあ、だと思うんですが」

 

 金属球でシロウを援護し、自分たちの方に来る攻撃をそらしながら、器用に肩をすくめて空とぼけるヒョウエ。

 普段ならミンも何かを察したかもしれないが、動揺しているせいか気付いた様には見えない。

 

 実はヒョウエは、シロウの負傷が見せかけだと言うことに気付いていた。

 あの時治療しようと近づいたヒョウエに、シロウが目配せした。

 杖を転じてレースに飛び出したのはそれが理由だ。

 その後も何度かコンタクトをとっている。

 姿を隠して暗躍してもらった、その結果が現状だった。

 

 

 

 それからさほど間を置かず、盆地にいたカル・リス社の暗躍部隊は全滅していた。

 半分以上はシロウが倒したものだ。

 

「・・・!」

 

 カル・リス社の精鋭達があっという間に全滅してしまった事に眉を寄せるミン。

 その右手がぴくりと動いたが、何かをする前に空の彼方に視線が向けられる。

 

「お、来ましたね」

 

 空に見えるいくつかの影、地上を走ってくる二つの影。

 三人娘とサフィア、レース参加者の四人と一匹、そしてムーナ達が乗っているのであろう、大型の魔導ポッドがこちらに近づいて来ていた。

 

「おう、無事だったか!」

「ヒヒンッ!」

「さぁすが、二人で片付けちゃったか・・・あれ、あっちの人誰?」

 

 最初に到着したゴードとカイヤンが首をかしげている間にも、他の面々が追いついてくる。

 最後に魔導ポッドが着陸すると、中からお付きの三人が飛び出した。

 曖昧な笑みを浮かべるミンにムーナが抱きつく。

 

「ああ、よかったミンちゃん! ごめんねえ、ごめんねえ・・・」

「大丈夫よ、ムーナねえさん。このとおり、ヒョウエ君たちに助けられて傷一つ負ってないから」

 

 涙ながらに喜ぶムーナ。後ろの男二人も抱きつきはしないものの、涙ぐんで喜んでいる。

 

「ほんとすれてねえ連中だな」

 

 再びのモリィの苦笑。

 

「・・・何? お前、アグナムのシロウか!?」

「なんだとぉ?!」

「ど、どーゆーことですか!」

「だましてすまないと思っている。これには訳があってな・・・」

 

 一方でシロウの正体に気付いた面々が驚愕したりしている中で、サフィアがちらりとヒョウエに視線をやる。

 ヒョウエが頷くと、エブリンガーとサフィア達、レース参加者たちが散開してミンを取り囲み、武器を突きつけた。

 

「え? え? え?」

 

 金属球。雷光銃。日本刀。忍者刀と手裏剣。レイピア。

 馬上用のサーベル。ショートソード。小型の雷光銃。拳に宿る破壊の光。振り上げられた手刀。

 それらに取り囲まれ、ムーナを始めとする三人のお付きがおろおろする。

 

「・・・」

 

 そしてミンは、冷静な顔でヒョウエを見返した。




ごちゃごちゃ言ってますが、要するにレインボーマンネタがやりたいだけです(ぉ
なお

かめは●波・・・説明不要
百歩神拳・・・「闘将!拉麺男」の主人公、ラーメンマンが使う必殺技として有名だが、元ネタは中国拳法の伝説から。
真空波動●・・・ストリートファイターシリーズのアレ。電刃波動拳も好き。
サイコソ●ド・・・少年キャプテンでやってた「剣豪ゼロ」という漫画の超能力剣法。高層ビルや宇宙戦艦もぶったぎれる。
鳳●虚空斬・・・「隣り合わせの灰と青春」と同じファミコン必勝本で連載していたウィザードリィ漫画の外伝主人公(侍)の必殺技。空間切れる。
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