毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~   作:ケ・セラ・セラ

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エピローグ「ヒーローになりたい!」

「英雄なんて子供の夢さ。でも、この世界にはその夢が実在するんだ」

 

                ――とあるオリジナル冒険者族――

 

 

 

「・・・さっき謝ったのはこういう意味か、おい?」

「まあそれだけでもないですけど」

 

 先ほどとは打って変わった、ぶすっとした顔でモリィがヒョウエをいびる。

 夕日の光で赤く染まる荒野のただ中。

 ヒョウエはモリィにおんぶされていた。

 全身がだらりと脱力し、全く力が入っていない。

 

「そのへんの悪党を殴り飛ばす程度なら全然平気なんですけどねえ・・・。

 今回はさすがに力を使いすぎました」

 

 "隠された水晶の心臓(クリプトス・クリスタル・ハート)"の全力稼働。

 それによって生まれる膨大な魔力を超高度な術式によって制御・圧縮。

 およそあり得ない密度の魔力と術式が具現化したものこそ、あの青い鎧だった。

 

 全力を使いすぎるとしばらく水晶の心臓は停止し、ヒョウエも半ば心臓が止まったような状態になる。

 その結果がこの脱力状態だった。下手をすれば一日以上続くと言うことなので、やむなくこうして王都まで歩いている。

 

「そういやあ、お前事件があればどこにでも飛んでくるだろ。今回は何で一日かかったんだよ」

「リーザの加護――実は耳は耳でも心の耳なんですが――の範囲がだいたい王都周辺なんですよ。リーザが被害者の心の声を聞き、僕とサナ姉と三人の精神を結びつけます。サナ姉の加護を僕が使うことによって限定的に瞬間転移(テレポート)が使えるようになるんです」

「瞬間転移・・・あの魔法使いがパッと消える奴か」

「実際に使える人なんて滅多にいませんけどね。大魔術師(ウィザード)なみの技量と特殊な才能が必要なので。サナ姉だって自分で使ったら十数メートル転移するのがせいぜいですよ」

 

 ふう、とモリィが溜息をついた。

 

「どうしました?」

「いや・・・お前本当にヒーローだったんだなって思ってさ。

 自分のことしか考えてないあたしとはえらい違いだ」

 

 ふふっとヒョウエが笑った。

 

「僕だってそんな立派なもんじゃありませんよ――僕はね、子供の頃友達を見捨てたんです。怖かった。だから友達を見捨てて逃げて、友達は死んだ。

 言ってみればその時のつぐないをしているようなものです。

 褒められるような事じゃない。本当に褒められるようなことじゃないんですよ」

「それでもお前がみんなを助けてる事には違いないだろ。他の誰が認めなくても、お前が自分自身でそれを認められなくてもあたしが認めてやる。

 ――お前はヒーローだ。あたしの、ヒーローだ」

 

 無言。

 吹き渡る風の音と、モリィの足音だけが荒野に響く。

 

「・・・・・・・・・・・・・・ありがとうございます」

 

 ヒョウエはそれだけ言うのが精一杯だった。

 

 

 

 そのまま一キロくらいを歩いたとき、モリィが再び口を開いた。

 

「その、さ。前に冒険者族云々言った事があったろ」

「ありましたね」

「実はさ、あたしも冒険者族なんだ。まあ随分血は薄まってるけどさ・・・ひょっとして気付いてたか?」

「ええまあ」

 

 苦笑が混じった溜息をつく。

 

「ひいじいさんがその、オリジナル冒険者族だっけ? 異世界から来たひとでさ。

 雷光銃も元はと言えばその人が見つけたんだ」

「じゃあ・・・まさか?」

「ああ、"雷光のフランコ"だよ。本名じゃないらしいが」

「まあ日本人・・・冒険者族の名前じゃありませんね。ひょっとして棺桶でも引きずってました?」

「なんだそりゃ」

「いえなんでも」

 

 拳銃使いでフランコと言ったらやっぱりあれかなあ、などと馬鹿な事を考えているところでモリィが話を再開する。

 

「ひいじいさんは一生冒険者やってたらしい。じいさんもひいじいさんに仕込まれて冒険者やってたんだけど引退して商人になってさ、結構成功した。

 あたしが子供の頃までは生きててさ、雷光銃の撃ち方とかガンスピンとか教えて貰った。オヤジにはそっちの才能が全くなかったんだとさ」

「ああ、見事なものでしたね」

 

 ふう、と溜息をつく。

 

「けどオヤジには商人としての才能もなかったみたいでさ。子供から見ても馬鹿正直な人だった。それで屋敷は人手に渡り、スラム暮らし。数年で夫婦仲良く逝っちまったよ」

「・・・」

「そんでさ・・・お前のヒョウエってのも冒険者族の名前なんだろ?」

「ええ。僕が生まれたときにオリジナル冒険者族だというのがわかって、知り合いのオリジナルの人に頼んでそう言う名前をつけたそうです」

「実はさ・・・あたしにもあるんだよ。冒険者族の名前が。本当はさ、モリィじゃなくて『モリエ』っていうんだ。スラムで暮らすようになって、呼びにくいからモリィって呼ばれて、それが定着しちまった」

 

 モリィが首元を探り、認識票と並んで首に吊していた袋から紙切れを取り出す。そこには達筆な墨書で「小林 百里恵」とあった。

 

「じゃあ今後はモリエと?」

「・・・いや。あたしはモリィだ。少なくともあの家を、生まれたところを取り戻すまではスラムのモリィだ。それでいいよ」

「ですか。では今後ともよろしく、モリィ」

「ああ、よろしくな、ヒョウエ」

 

 

 

「そう言えばモリィは実家を買い戻すのが目標なんでしょう? 何でしたらお金貸しましょうか」

「いらねえよ、あんな金。後味が悪くて借りられるか。大体おまえ、返せなかったらあたしもヒーローの一味に巻き込む気だろうが」

「あちゃー、ばれてましたか」

 

 初めて会ったときのようにけらけらと笑うヒョウエ。

 苦笑を浮かべるモリィ。

 

「いいか、あたしはヒーローなんてやる気はねえからな。ガラじゃねえよ」

「いやいや、ヒーローなんて、案外誰でもなれるものですよ。たとえば子供達にお菓子をおごって上げたり、体を張って子供達を守って上げるとか」

 

 モリィの足がぴたりと止まった。

 

「・・・見てたのかよ?」

 

 今度はくすくすと、ヒョウエが笑う。

 

「今顔赤くしてるでしょう。モリィってやっぱりかわいいですよね・・・うわっ!? あいたあたたた! 痛い! 痛い! 引きずらないで!」

「うるせえ! しばらく反省しろ!」

 

 首に回していた腕を振り払い、馬鹿(ヒョウエ)の両足首だけを持ってモリィが疾走する。引きずられた背中に荒野のでこぼこや小石が当たってとても痛い。

 

「反省したから赦してください! 過ちを赦すのもヒーローの条件ですよ!」

「知るかクソボケ! あたしはヒーローなんかじゃないって言ってるだろ!」

 

 顔を真っ赤にして全速力で走るモリィ、悲鳴を上げながらどこか楽しそうなヒョウエ。

 夕やけ空に声が吸い込まれていく。

 

 毎日戦隊は毎日が毎日日和。

 雨の日も風の日も、それはそれで毎日日和。

 かたつむり枝に這い、神空にしろしめす。

 全て世はこともなし。




 「毎日戦隊エブリンガー」これにて第一エピソードの終幕でございます。
 作者の好きなものをブチ込んでごった煮にしてみましたがいかがでしたでしょうか。
 第二エピソードからは一日一話更新に変更していきます。どこまで続くかはわかりませんが、いけるところまでいってみようかとw
 よろしければ今後ともご笑覧下さい。


 作者のモチベーションは読者の皆様の評価と感想です。
 評価と感想よろしくお願いします。
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