毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~   作:ケ・セラ・セラ

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08-30 大乱戦スマッシュシスターズ

 戦いは続いている。

 巨魔(ファンガス)もさすがに連続してあれだけの胞子を吐き出す事は不可能らしく、体から伸びる数十本の触手を竜巻のように回転させて周囲を薙ぎ払う。更に菌糸の塊を撃ち出す遠隔攻撃のおまけつきだ。

 

「おららららららっ!」

「はっ! やっ!」

 

 触手のムチや時折撃ち出される菌糸の塊を避けつつ、巨魔の足元を駆け回るのは音速の騎士ゴードと神馬の騎手カイヤン。

 ゴードは分身しているようにしか見えない素早い動きで蹴りやショートソードを叩き込み、カイヤンは馬の体重と速度を乗せたサーベルで巨魔の足を存分に切り裂いている。

 

 その足元には着弾した菌糸の塊があちこちにわだかまっている。

 遠くで菌糸に触れてしまったトカゲが離れられずにもがいているのが見えた。

 粘着質のそれに触れてしまえば、恐らくゴード達も同じ末路を辿るだろう。

 

「なぁに、ちょうどいいハンデさぁ!」

 

 全体重を乗せた神速の蹴り。

 質量xスピードという、どんなに魔法や科学が発達しようとも覆らない物理打撃の法則。

 

「つまりスピードが無限大なら蹴りの威力も無限大! 速く! もっと速く! 青く! もっと青くっ!」

 

 既にドップラー効果による青方偏移を生じる「青の領域」に入り込んでいるゴード。

 蹴りが当たる瞬間、更に加速して打撃の威力を増している。

 打点の周辺、1m近い範囲の菌糸体が爆ぜて四散した。

 

「ハイヤーッ!」

「ヒヒーンッ!」

 

 一方でカイヤンは周囲を駆け回りながら巨魔の足を切り裂き、つま先を斜めに切り落としたりと、ヒットアンドアウェイに徹している。

 ゴードのような強力な加護を用いてはいないが、至極単純に速く、強く、そして戦い方がうまい。

 相手の攻撃を予測して一瞬早く回避機動を取り、これしかないというベストの位置とタイミングでサーベルを叩き込む。

 刀身の根元近くまで斬り込まれたサーベルが、まな板の上のマッシュルームよりたやすくキノコ巨魔の足を切り裂いていく。

 

「つあっ!」

「やっ!」

 

 一方上空では白の甲冑のフェイスガードを下ろし、胞子を吸い込まないように完全気密になったリアス。

 そこまでではないが口元を赤紫の忍び手ぬぐいで覆ったカスミ。

 力場で細剣を覆うサフィア。

 光の剣を両手に生み出したシロウ。

 四人それぞれに接近戦を挑んでいた。

 リアスの西川正宗とサフィアの力場剣、シロウの光の双剣が巨魔の肉体を切り裂き、カスミは三人の回りを飛び回って触手を切り払うなどフォローに努めている。

 

「おらおらおらおらっ!」

「はっ! はっ! はぁっ!」

「このっ! このっ!」

 

 少し離れたところではモリィ、モニカ、マデレイラの飛び道具組が雷光やエネルギー光線、雷撃砲を撃ちまくっている。

 強力な上に狙いが至極正確な雷光銃、威力ではそれに匹敵、あるいは凌駕するモニカのエネルギー光線に比べると、本来移動用であるドルフィンの雷撃砲はやはり威力に劣った。

 加えて巨魔(ファンガス)の体はいくら切り裂いても焼き払っても、あっという間に復元癒着してしまう。スライムか何かを相手にしているような気分だ。

 

「くっ・・・こうなったら・・・」

『いけません、ご主人様。リスクが高いです』

「わかってるわよそんなこと! でもやらなかったら死ぬわ!」

『・・・ご主人様の保護性能の低下、駆動時間の大幅な低下。非常用緊急離脱のためのエネルギーを残すと五分が限界です』

「いいわ! やって!」

『READY』

 

 ドルフィンのコンソールにはまった白い球体、サポートAIのボボ。

 その両目が一瞬光った。

 

「何!?」

 

 カイヤンとシルシープを蹴り飛ばそうとした巨魔(ファンガス)の足に、魔導ポッド「ドルフィン」が体当たりをかます。

 巨魔(ファンガス)が体勢を崩し、その隙に離脱した草原の勇者が目を剥いた。

 

 魔導ポッドの白い外装に割れ目が走る。

 割れた外装からパーツが更に伸び、先端が両脇に展開して腕になる。

 次の瞬間、そこには身長4mほどの人型が出現していた。

 

格闘(ピニカ)モード変形完了、いけます、ご主人様』

「OK! レーザーサーベル展開!」

『了解、レーザーサーベル展開』

 

 人型のパワードスーツとなったドルフィンの両手の甲から光が伸び、それぞれ2mほどの細身の剣の形をとる。

 踏み込んだドルフィンの連続斬撃が、巨魔(ファンガス)の足を「M」の字に切り裂いた。

 

「ほぉ、そんな芸があったのか!」

「無駄口を叩かない! とにかく攻撃して、再生能力を超える損傷を与えないと!」

「あいよ!」

 

 軽口を叩きながら、笑みを浮かべるゴード。その速度が更に上がり、6人ほどのゴードが同時に巨魔(ファンガス)の足を蹴りつける。

 

(ぐっ、きついなこれ・・・)

 

 だがそのゴードも限界が近い。《加速の加護》は強力なだけに消耗も激しい。先ほど竜巻を起こすなどと言う無茶をしたから尚更だ。

 同様に攻撃を続けるカイヤンがそれに気付いて舌打ちした。上空に目配せをするとモニカもそれに気がついたようである。このあたりはやはり経験の差だ。

 

「モリィ! シロウ! このままでは埒があかん! 出力を上げられるか?」

「できるけど時間をくれよ、姐さん」

「私も溜めが必要になる」

 

 二人の返事に頷き、モニカの体の光が強くなる。自らの肉体をエネルギーに変換するその比率を、暴走覚悟で更に高めたのだ。

 

「そうか。私はこのあたりが限界だ。私が支えるその間に何とかしてくれ」

「おう」

 

 言葉短かに頷くモリィ。シロウは無言で頷くと周囲を飛んでいたカスミを呼び止めて何やら話している。

 前に向き直ったモニカの横に並ぶ、颯爽たる影一つ。

 

「待ちなよ。一人で格好いい真似はさせないぜ?」

 

 ぱちり、とウィンクするサフィアに苦笑一つ。

 

「別に格好をつけているわけではないんだがな」

「それが既にしてかっこいいのさ。ああ、妬けちゃうね」

 

 それだけ言うと、サフィアは両手の腕輪の力を合わせ、二倍ほどになった力場剣を両手で構えて巨魔に突貫していく。

 モニカも苦笑を収め、限界ギリギリまで上昇させた出力をビームにして、可能な限りの連射を始めた。

 

 

 

 その持てる全てを振り絞り、巨魔に挑む面々。

 モリィは雷光銃のチャージに集中し、シロウとカスミも何やら呼吸を合わせて精神集中している。

 だがゴードとモニカは限界が近く、マデレイラのドルフィンも駆動時間は残り短い。

 

「ああもう、伝説の破山剣でもあれば!」

 

 リアスが苛立たしげに叫ぶ。

 「銀の翼」の機動力と白の甲冑の膂力、リアス自身の剣技によって全く危なげなく戦えてはいるが、この巨魔を切り倒すには剣の大きさが足りない。

 なお破山剣というのは一度だけなら山をも断つという伝説の剣だ。大地の力を秘めていると言われているが、なにぶん実在も定かではない代物のこと、実際のところはわからない。

 

「!」

 

 その表情が変わった。

 巨魔がモリィとシロウのチャージに気付いたのだ。

 

『オオオオオオオオオオオオオオ』

 

 二人、カスミを入れて三人の方に巨魔が踏み出し、拳を振り上げる。

 

「カスミ! させませんっ!」

「サフィアとリアスは腕を! 他は右足を狙って!」

「わかりました!」

 

 モニカの指示が飛ぶ。全員が一斉に阻止にかかるが、それでも止めるには火力が足りない。

 集中しているシロウの目元に焦りが浮かぶ。

 術の発動には後一呼吸必要だ。その前に攻撃を受ければ術は破られ、注いだ"気"も無駄になってしまう。

 

「ちっ!」

 

 モリィが雷光銃を撃ち放った。

 完全でないとはいえ、大岩をも貫く雷光銃のチャージ攻撃だ。

 咄嗟に狙った胴体に大穴を開けるも、しかし貫通には至らない。

 巨魔は僅かに揺らいだだけで、一直線にシロウを目指す。

 悪魔にもわかっているのだ。魔を討つ九曜の精霊魔法、その奥義を受ければいくら自分でも危ういと。

 

『じゃが・・・わしが一手上を行ったな!』

「そうは左遷の吹きだまり!」

『なぬ?!』

「!?!」

 

 その場の全員が驚愕した。

 後方で待機しているとばかり思っていたムーナ達の大型魔導ポッド。

 操縦席に見えるのはムーナの部下の男二人。

 10mほどはあるそれが一直線に巨魔に向けて突っ込み、そして衝突した。

 

『!? き、貴様らっ!』

「ムーナさまのかたきでんねん!」

「死んでねえですよっ?!」

 

 むろんこの程度でどうにかなる巨魔ではない。

 だがそれでも大質量高速度の物体との衝突は、拳を繰り出そうとしていた巨魔のバランスを崩し、片膝をつかせるのに十分ではあった。

 一方激突した大型魔導ポッドは弾力のある巨魔の体に大きく弾かれて、荒野を派手に転がっていく。

 

『この・・・あっ!?』

 

 そちらを憎々しげに睨んだ巨魔が、ハッと気付いて正面に向き直る。

 シロウの、そしてカスミの術が完成していた。

 

「天魔伏滅・・・大日輪無量光!」

 

 十字に交差させた光の剣から太陽のようなまばゆい光がほとばしり、閃光が視界を塗りつぶした。




マデレイラの魔導ポッドが人型に変形するのは、当時ポピニカから発売されていたマシンドルフィンの超合金に搭載されていた、玩具オリジナルの人型変形機能が元ネタです。
マシンマン本編では人型変形はなかった・・・はずw
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