毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~   作:ケ・セラ・セラ

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09-05 『針の島』

 二十日ほど経って、彼らの船は『針の島』に到着した。

 見た目は砂漠に覆われていることもなく、森の木々が水色の葉をつけていると言うこともない、ごく普通の島だ。

 エコール魔道学院の生徒たちは八つの島から集められるのだが、スケイルズは『祭壇の島』出身で他の島に行ったことがない。

 だからか先ほどから舳先に立って興奮しながら島を指さしていたのだが、島影が大きくなるにつれその興奮はしぼんでいくようだった。

 

「なんだ、普通の島だな。島中に針が生えているのかと思ってたのに」

「馬鹿かお前は。それを言ったら『祭壇の島』は島中に祭壇があるのか」

「ウチの島ではどの家にも神に供物を捧げる祭壇があるぞ」

「ンなもんどこの島だって同じだっ!」

 

(この二人もすっかり仲良くなったなあ)

 

 などと思いつつクロウが海図を取り出す。コンパスで方向を確かめた後、軽く精神統一して自分の中から流れていく魔力の方向を確認。

 気がつくと、じゃれ合っていた二人が心配そうにこちらを覗き込んでいた。

 

「どうだ?」

「感覚は変わらない。こっちに来ているのは間違いないと思う」

「先週立ち寄った小島でも、影っぽいやつを目撃してた人がいたな」

 

 スケイルズの言葉に頷き、地図に指を走らせる。

 

「今このへん、『針の島』の南西の端だな。どちらかというと東の方に強い力を感じるから、ここから東、南の海岸沿いに進んで影を探そう。いいか?」

「もちろん!」

「船長はお前だ。その指示に従うさ」

 

 そういうことになった。

 

 

 

 沿岸沿いに船旅は続く。時折漁師達と情報交換したり、補給のために上陸したりを挟みつつ、嵐に遭うこともなく船は順調に進んでいった。

 

「うひょう、久々の肉だぜ!」

 

 歓喜の声を上げるスケイルズがかぶりつくのは鹿肉のステーキ。

 上陸の時に狩ってきた獲物だ。

 ソルの弓の腕は中々のもので、クロウの探知の術、隠形の術と組み合わせるとあっという間に丸々太った鹿を一頭仕留めてしまった。

 世の狩人が聞けば泣いてうらやましがるであろう。

 

「スケイルズ。あなた、この前僕が『そろそろ魚のメニュー考えるのもつらいなあ』と言ったら滅茶苦茶怒ってませんでした?」

「えー、それはそれ、これはこれだよ」

「クロウ、お前はそろそろ怒っていい」

 

 後に、自分の分だけ調味料抜きにされたスケイルズは泣きながら土下座して謝ったがそれはさておき。

 

「・・・感じる方向性が変わりました。東から、北東の方に動いてます」

「本当か!」

「つまり、内陸にいるって事だな・・・正確な距離はわからないのか?」

「近づいているとは思いますがまだ・・・感じる方向が真北に近くなったら接岸して上陸しましょう」

 

 二日後、精神集中していたクロウの言葉に二人が頷く。

 更に二日後、船は内陸へ向かう河を、北に向かってさかのぼり始めた。

 

 

 

「ふう」

 

 クロウが精神集中を解き、息をついた。

 まぶたの裏に浮かんでいた、川べりの村のヴィジョンが消える。

 

「そろそろかな」

「船を下りるのか?」

 

 スケイルズの質問に頷く。

 

「この辺で船を下りて北東に進もう。千里眼の術で見たら少し先に村があるから、そこで船を預かって貰う」

「大丈夫かな」

「魔導学院の人間だと言って、幻影の一つも見せれば大丈夫でしょ。船の方にもそう言う術を仕掛けておいて」

「なるほど」

 

 実際その通りになった。

 村長と会い、金貨を渡して船を預ける。

 ずるそうな目で承知した村長だったが、それもクロウの作り出した怪物の幻影を見るまでだった。

 

「ひっ、ひいい!?」

「もし船に手を出したらこの怪物に食い殺されますから、村の人たちにもよく言っておいて下さいね?」

「は、はい・・・!」

 

 カクカクと首を縦に振る村長と笑顔で握手し、クロウは肩を叩いた。

 

「ところでここから北東の方に何かありますか?」

「は、はい。この周辺の領主のお城があります。紋章は『黄金の旅立ち』、御当主は『富を守る兜』様です」

「結構。くれぐれも船のことよろしくお願いしますね?」

 

 首を振っているんだか震えているんだかわからないほどの高速で頷く村長に笑みを浮かべると、クロウは二人を伴って歩き出した。

 村を出てしばらくした後、耐えきれなくなったようにスケイルズが笑い出す。

 

「ははははは! 見たかよ村長のあの顔! 今にもおしっこちびりそうなツラしてたぜ!」

「卵とは言え魔術師を舐めるからああなる。だいたい金貨を貰っておいて欲の皮をつっぱらせるのがいかん」

 

 楽しそうにそれに同調するソル。

 クロウの顔にも「してやったり」の表情が浮かんでいた。

 

「まあ正直あの幻影はやり過ぎかもと思いましたけど、やっぱりやっておいて良かったですかね」

「よく言うぜ! 最初からそのつもりだったくせによ!」

 

 スケイルズがバシバシとクロウの肩を叩く。

 笑いながら三人の少年は連れだって歩いていった。

 

 

 

 荒野のただ中にその城はあった。

 周辺にはそれなりに農地などもあるものの、どことなく暗い印象を受ける。

 赤くなりかけた夕方の太陽が余計にそう思わせるのかもしれない。

 

「・・・ここか?」

「はっきりとはわからないけど、あの影の気配を感じる。少なくともつい最近ここに来たんだと思う・・・領主様に面会をお願いして、話を聞いてみよう」

 

 二人が頷いた。

 

 

 

 予想に反して城門には門番はおらず、門も開けっ放し、跳ね橋も下ろしっぱなしだ。

 

「数百年放置してたみたいな感じだな」

 

 スケイルズが無駄口を叩くが、今回はクロウも同感だった。

 ぼろぼろに風化しているというわけでもないが、どこか古びた印象がある。

 

「ごめんなさい、どちらかいらっしゃいませんか」

 

 声をかけながら跳ね橋を渡り、門をくぐって奥へ進む。

 城壁に囲まれた広い中庭には厩舎や納屋、馬場などもあるが、どこにも人の気配はない。

 中央の居館に向かい、正面の大扉をノックした後力一杯押す。

 鍵やかんぬきが掛かっているということもなく、きしみ音を立てて大扉は開いた。

 

「・・・」

 

 扉の中は想像したとおりの広間だった。

 左右に階段があって二階の回廊に続き、左右の棟に続くのだろう扉と、奥に続く扉がある。

 質素で飾り気のない、地方領主の館という感じだ。

 

「もしもーし、誰かいませんか・・・」

 

 期待をせずに、礼儀上声をかける。だから声が返ってきたときにはそれなりに驚いた。

 

「あら、お客様?」

「!?」

「うおっ!?」

 

 二階の回廊から少女が見下ろしていた。

 簡素な白い貫頭衣を身につけ、腕と足はむき出しだ。

 肌は浅黒く、艶のある黒髪をおかっぱにしていた。

 

「し、失礼しました。わたくしどもはエコール魔道学院の生徒で、故あってこの地にまかりこしました。

 わたくしは"数字の海を飛ぶ鴉"、クロウと申します」

「え? あ、ああ。"川べりに落ちた鱗"、スケイルズです」

「"獅子の頭上に輝く太陽"、ソルと言います」

 

 ぼうっと少女を見ていたスケイルズが、脇腹を肘でつつかれて慌てて名乗る。

 こちらは領主の息子らしい育ちの良さと礼儀を見せて、ソルが優雅に一礼した。

 

「ふぅん」

 

 階段の上から三人を見回して面白そうな顔になる少女。

 

「私は"月の女神の微笑み"、セレ。よろしくね」

 

 少女が微笑んだ瞬間、クロウの頭の片隅に極々かすかな違和感が走った。

 

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