毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~ 作:ケ・セラ・セラ
三人の航海は順調だった。
この時期特有の季節風が逆風になり、行きよりもやや時間がかかりはしたものの、それ以外は特筆すべき事もなく船はエコール島に到着した。
船をもやってから港の番人に預け、三人は魔導学院の門をくぐった。
そのまま召霊の主任教師、クロウに航海を命じた彼の部屋に直行する。
主任教師は副主任――召霊術のいくつかの専門的な事項については彼が教える――と話しているところだった。
やせぎすの長身、男性だが紫の髪とアイシャドウに頬紅と口紅という特徴的な風貌の副主任が振り向いて笑みを浮かべる。
つかつかつかと歩み寄ってきて、いきなりクロウの頬を両手で包んだ。
「あら、あらあらあら! 無事で帰ってきたわね! どう、ちょっと見せて。うん、変なところはないみたいね。幽体も欠損はないみたいだし、うまく取り戻せたのね。ちょっと影の痕跡があるけど、これは時間が経てば消えるかしら? 少なくとも"
「クリス。後にしてくれ・・・まずは報告を聞きたい」
「おっと、そうね。スィーリもクロウくんもごめんなさい、私ったらはしゃいじゃって」
副主任が手を引き、笑顔のまま脇に下がる。
「あー、いえいえ。そう言えば寝ている間にはお世話になりましたようで。ありがとうございます」
「いいのよぅ。仕事と興味の両立した案件だったしぃ」
肩を抱いてくねくねする副主任。
(聞きしに勝る強烈なキャラだなあ)
後ろで呆然としているスケイルズとソルにしぐさで促すと、クロウは二人を伴って主任教師の前に歩み出た。
二人と共に一礼する。
「『数字の海を飛ぶ鴉』ならびに同行者二名、帰還しました」
「ごくろう・・・まずは概要を」
「はい」
頷くとクロウは『針の島』の領主の城と、そこであった出来事をかいつまんで話した。
「ふむ・・・」
「へぇぇぇ・・・」
興味深そうに頷く主任。壁により掛かって何やら考え込む副主任。
「その妖魔は・・・倒したのか?」
「本体と思われる水晶は砕きましたが、完全に倒せたかどうかは私では何とも」
「そうだな・・・古代の妖魔は私たちでははかりかねる存在だ。私も一度遭遇したことがあるが魂の形態・・・存在そのものが完全に人とは異なっていた。正直意志が疎通できることすら不可解だ」
「人間も犬や猫とある程度意志を疎通している、少なくともそのつもりになってはいますが似たようなものでしょうか」
「たとえとしては悪くない・・・人と犬と言うよりは人と土くらいの差異ではあるがな。精霊の方がよほど人に近い」
「そう言えば霊界との穴は?」
「ああ。何とか塞いだよ・・・クリスや副学長も手伝ってくれたことだしね・・・」
「でしたか・・・お」
クロウがローブのポケットに手を入れた。
取り出したのは、あの
「そう言えば水晶を砕いた後からこのようなものを見つけたのですが・・・」
「「!」」
主任と副主任が目を見開いた。
「ねえスィーリ、これって・・・!」
「・・・ああ。お前達、これは誰かに見せたり、これのことを話したりしているか?」
クロウ達三人が顔を見合わせる。
「見たのはこの三人と先生方だけですし、港からここに直行しましたので、誰にも話してはいません。だよな、スケイルズ?」
「何で俺に聞くんだよ・・・ええと、多分話してないと思います。クロウの言う通り、この島に戻ってからは誰とも話してないんで」
「俺の記憶でもそうだったと思います」
「よし」
少しほっとしたように主任が頷く。
「三人とも・・・城であった事とこの指輪に関しては一切の口外を禁じる。聞かれたら・・・収穫祭の夜に現れた邪悪な霊を倒したとだけ言っておけ」
「わ、わかりました」
三人が頷くのを確認して、主任も再度頷く。
「それと・・・だ」
「はい、まだ何か」
「言い忘れていた・・・良く戻った。地下の世界の邪悪な霊を祓い、古代の妖魔も打ち倒してみせた。お前達を誇りに思う。数日はゆっくり休め。授業も休んでいい」
「・・・ありがとうございます!」
クロウが、それに続いてスケイルズとソルが深々と頭を下げた。
しばらく休めと言われたが、クロウは翌日から即座に授業に復帰していた。
食堂に向かって階段を下りながらスケイルズと会話を交わす。
「熱心だねえ。2、3日は休んでもバチは当たらないと思うぜ」
「そうだけど勿体ないじゃないですか。折角エコール魔道学院に入学できたんですし」
ヒョウエとしての自分を取り戻して様々な術を思いだしたクロウではあるが、それを差し引いてもこの魔道学院での授業は新鮮味溢れるものだった。
基本的にはヒョウエの知っている系統魔法と変わらないが、アプローチがかなり違う。応用性も広い。
系統魔法が剣術の型を反復して技を覚えていくとするなら、学院で教わる魔法は剣術を学ぶのにまずランニングから始めるようなおもむきがある。
(まるで呪術・・・いや、真なる魔法ですねえ)
学院に入って以来感じていた違和感はこれだったのかと納得する。
半身を取り戻して以来、そのへんの差異が更によくわかるようになり、比例して学院の授業がより魅力的になっていった。
「まじめな奴だなあ」
そう言って肩をすくめるスケイルズも、実のところ授業には熱心である。成績は平凡だが。
前に語ったとおり、学費の捻出にかなり無理をしている両親の姿を見ているとそうならざるを得ないのだろう。成績は平凡だが。
夜も明かりの魔法を使って遅くまで勉強しているのを同室のクロウはよく知っていた。成績は平凡だが。
「よう、二人とも。やっぱり今日から授業には出るのか?」
食堂。ソルが目ざとく二人の服装に気付いた。
そう言うソルも制服のローブをまとっている。
「おまえもじゃんかよ」
「ソルは普通に優等生だからね」
召霊術にこだわっていた時期も他の授業に熱心に出席していた姿を思い出してクロウが笑う。スケイルズと違って成績は常にトップクラスだった。スケイルズと違って。
まあ残念ながらクロウがいるのでトップにはなれないのだが。
「おいあれクロウとスケイルズだぜ」
「戻ってきてたんだ」
「・・・横にいるのソルだよな?」
「どうしたんだよ、まるで別人じゃないか」
「というかいつの間にクロウ達と仲良くなったんだ・・・?」
そうした声にも頓着することなく、三人は食事をとりながら談笑を続けていた。
クロウ達が学院に復帰し、日常が戻ってから数日後。
三人は揃って会議室に呼び出された。
「あの指輪のことかな?」
「まあ妖魔のこととか影のこととか、色々あるんじゃねえかな・・・」
セレのことを思い出しているのか、スケイルズの声が沈む。
無言のまま、クロウは会議室の扉をノックした。
「クロウです。スケイルズとソルも一緒にいます」
「入りなさい」
「はい、失礼します」
部屋の中では主任と副主任、それに二十人ほどの教師たちが卓についていた。
(想像より多いな。それだけ大ごとと言うことか)
「揃ったようですね」
奥から声がかかった。涼やかでありながら深い年月を感じさせるような、女性の声。
座っていた教師たちが一斉に起立し、頭を下げる。
「・・・!」
「うお・・・」
扉から出て来た人物を見て、クロウが目を見張る。
ソルは思わず驚愕の声を漏らし、スケイルズに至ってはぽかんと口を開けている。
「三人とも楽にして下さい。話が聞きたいだけですので」
にっこりと笑うのは白いローブに白い肌、くるぶしにまで届く美しい白い髪、宝石のような青い眼の女性魔術師。クロウが紅顔の美少年ならこちらは絶世の美女。
見たのは入学式の時だけだったが、その印象的な姿は忘れようもない。
「副学長・・・!?」
驚きと共にクロウの声が漏れた。
どうでもいいけど週五になったので、金曜分の事前投稿をした後、ついついその次の投稿の日付を土曜にしてしまう。