毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~   作:ケ・セラ・セラ

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09-11 白き髪の大魔女

「ともかくも座って下さい」

「は、はい」

 

 言葉と身振りでクロウ達にうながすと、副学長は教師陣をじろりと睨んだ。

 

「大体なんですかあなたたち、立たないで結構、そういうのよして下さいと言ってるじゃないですか。お師様にならわかりますが、私は一番弟子に過ぎないんですよ。あなたたちと同格です」

「最年長にして美しく優秀で聡明な姉弟子に対する崇敬の表れですよ。みんなあなたを敬愛しているのです」

 

 教師の一人がしかめつらしく頭を下げる。ただしその口元には笑み。

 他にも何人か笑っているのを見るに、お定まりのやりとりなのだろう。召霊術副主任と、意外なことに主任も笑っている側だ。

 副学長の純白のこめかみがピクピクと動く。

 

(ひねくれた親愛の情の表明だなあ)

 

 心の中で肩をすくめつつ、クロウが着席する。

 敬愛してるのは本当だろうが、素直にそれを表現できないのだろう。

 あるいは敬愛する姉弟子をいじって楽しんでいるのか。

 

「・・・ふう、まったく」

 

 納得いかなそうな顔をしてはいるものの、クロウ達が着席したのを見て副学長も席に着いた。

 教師たちも笑いを収めて着席する。

 場が静まったのを確認して、副学長がクロウ達に視線を向けた。

 

「まずはこのたびの探索行(クエスト)、ご苦労様でした。本当に良くやってくれました」

「いえ、自分の愚行の尻ぬぐいをしただけです」

 

 クロウ、そしてソルが神妙に頭を下げる。スケイルズも少し神妙な顔。

 副学長が微笑ましげな笑みを浮かべた。

 

「それでも、ですよ。あなたたちは期待以上の働きをしてくれました。エコール魔道学院副学長として、その働きを称賛しましょう」

 

 ぱちぱち、と教師たちから拍手が起こる。

 クロウ達が改めて頭を下げた。

 

「さて」

 

 副学長が表情を改めた。拍手がやむ。

 

「今回の探索行、霊の世界から迷い出てきた邪悪な霊魂は退けることが出来ましたが、新たな問題も浮上しました」

 

 クロウ達に視線。

 

「あの指輪のことですか」

「ええ。ですので、改めて今回の探索行の一部始終を――関係ないと思われることでも――全て話して下さい」

「船で移動中のあれこれとかもですか?」

「あれこれもです」

 

 両隣に座るスケイルズやソルと視線を交わす。

 長くなりそうだなと思いつつ、クロウは話し始めた。

 

 

 

 話は本当に微に入り細に入り細かい事まで尋ねられた。

 スケイルズが釣りに没頭した話、釣りへの情熱を鼻で笑われてケンカになった話。

 狩りや鹿肉のステーキや調味料、がめつい村長と幻の怪物。

 いくつかの話で教師たちの笑いを引き出しつつ、話はいよいよ佳境へ向かっていく。

 

 古びた城、突然現れた少女と召使いたち、豪華な晩餐と夜の誘い。

 魂を喰らう巨大な水晶、その中にいた本物のセレと"影"。

 "影"との戦いの顛末と、相手の名前を見抜いて再結合を果たしたクロウ。

 

 途中でスケイルズとクロウの補足(どうやら妖魔のセレとクロウが連れだって二人を寝室から連れだしたらしい)が入ったが、概ねクロウの説明で話は進む。

 塵となったセレの下りでは鼻を啜る声が聞こえ、最後に指輪と帰路のあれこれを話してクロウの話は終わった。

 

「話は以上です」

 

 そう話を結ぶ。

 気がつくと副学長がじっとクロウの方を見つめていた。

 

「・・・なんでしょう」

「他に何かありませんか?」

「いえ、何もありません」

「・・・」

「・・・」

 

 副学長がじっと見つめる。

 それを見返す。

 

「・・・」

「・・・」

 

 教師たちがざわつき始めた。

 スケイルズとソルも、クロウの横顔を見たり、互いに顔を見合わせている。

 

「・・・」

「・・・」

 

 副学長がふう、と息をついた。

 

「いいでしょう。そう言うならそう言う事にしておきます」

「よくわかりませんがわかりました」

 

 ヒョウエとしてもクロウとしても、内面が顔に出やすいのは自覚がある。

 

(何か気付かれたかな)

 

 副学長以外の教師も何人かは疑問の目でクロウを見ていた。

 とは言え「私は他の世界から来たクロウを名乗る何者かです」などと名乗ったら頭のおかしい人扱いされる事間違い無しだ。

 むしろ大魔術師ぞろいのこの場でそんな事を言って信じられてしまったときの方が危ない。

 最悪拘束されて肉体と精神と魂を隅から隅まで解剖されかねない。

 

「それで」

 

 副学長が懐から小さな布包みを取り出す。

 視線が集中する中、布を開いた中から出て来たのはあのアレキサンドライトもどきの指輪だった。

 

「クロウ、スケイルズ、ソル。これについて何か知っていますか?」

 

 三人とも首を振る。

 

「でしょうね。これについて知っているのは私のお師様・・・学長とそのご兄弟、私たち学院の教師101人以外にはほとんどいないはずです」

 

 部屋の雰囲気が心なしか重くなった気がした。

 

「それで・・・これは何なんです?」

 

 三人を代表してクロウが質問を投げかける。

 一息間が空いた。

 

「全ての真なる竜の祖――黄金鱗の虹竜の左目から削り出された指輪。これはその片割れよ」

「え?」

 

 スケイルズが思わず声を上げた。クロウとソルも声を上げはしないものの、驚愕の表情を浮かべている。

 副学長が微笑んだ。

 

「スケイルズ生徒、あなた黄金の虹竜について知っているようね。言ってみなさい」

「へ? は、はい!」

 

 まさかここで授業が始まるとは思わず、思わずスケイルズがしゃちほこばる。

 

「え、ええと。金の竜――黄金の虹の竜は神様・・・『創世の八神』が世界を作る前に生み出した巨大な竜で、創世の八神は竜の背に乗って世界をどう作るか話しあって、やがて竜は疲れて神様の作った海に体を浸し眠りにつくと、その八つのこぶが八つの島になったって・・・」

「結構、よくできました。『オオヤシマの竜』の昔話よね」

 

 ぱちぱちと雑な拍手をすると、白い魔女は居住まいを正す。

 

「私たち人が知恵の生きものなら、竜は力の生きもの。風や炎や海や大地と同じく、ある意味ではこの世界の一部です。神々は人と竜の双方によって安定するようにこの世界をお作りになりました。その辺はいずれ授業で教わることになるでしょう。

 それはさておきこの指輪は八つの島となった黄金の虹竜の左目を削りだして作った指輪。使い方によっては黄金の虹竜を目覚めさせる事も、逆に竜の体を流れる力――つまり地脈を操作することも出来る。

 神々はこの指輪を通じて竜の力を調整し、島を安定させていたのだけれども、ある時指輪は失われて、それ以来竜の力を制御する術は失われたの」

「・・・それって凄い大ごとじゃないです? それがないと神様でも竜の力で地脈・・・ああ、だから竜脈っていうのか・・・がコントロールできないんですよね?」

「ええ」

 

 副学長が溜息をつく。

 

「幸いにして今のところ致命的な事態にはなっていないけど、それでも色々な歪みやよどみが溜まり続けているのは確かよ。どうにかして指輪を取り戻して、定期的な調整(メンテナンス)を行わないことには、いずれ大災害が起こるでしょうね」

 

 ごくり、とスケイルズが生唾を飲み込んだ。

 クロウとソルも流石に表情が堅い。

 

「それで・・・僕達にそんな話を聞かせてどうしようというんですか? まさかとは思いますが・・・」

「ええ、そうよ。あなたたちに、この指輪の片割れを探しに行って欲しいの」

 

 にっこりと、白い髪の美女が微笑んだ。

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