毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~   作:ケ・セラ・セラ

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09-14 黒瑪瑙の都

 旅は更に数ヶ月続いた。港港で話を聞きつつ、こわれた指輪からその片割れへの流れを辿って《雌馬の島》から《雄牛の島》へ。季節は冬から春へ移り変わる。

 風を呼び、海図を眺め、釣りをして料理する。

 《雄牛の島》の北側を半ばほどまで来たところ、ようやく魔力の流れが東ではなく南に曲がってきた。

 

「また河をさかのぼるか」

「残念だけど、今回は遡行できるような大きな河がない。船を預けて陸路だな」

「けどよ、俺馬は乗れないぜ?」

「俺が教えてやるよ。さもなきゃ荷物みたいに馬の背にくくりつけてやる」

「えぇ・・・」

 

 心底情け無さそうな顔のスケイルズに、クロウとソルが大笑いした。

 

 

 

 《雄牛の島》の北側を四分の三ほど行ったところで、概ね流れを感じる方角が南側からになる。

 

「断言は出来ないんだな」

「近づいてるような気はするんだけど、相変わらず曖昧なんだよね・・・」

 

 "失せもの探し"の術を使ってもはっきりとしない方角にクロウが頭をひねる。

 この術は探す対象の手掛かりがあれば、そして手掛かりが強ければ強いほど効果を発揮する。

 たとえば人間を捜すなら髪の毛など対象の一部が最も強い手掛かりであり、着ていた服や愛用の道具がそれに次ぐ。対象の名前や絵姿、同じ血が流れている対象の肉親などもいい手掛かりになる。

 いわゆる共感魔術という奴だがそれはさておき、つまり元は一つだった指輪の片割れがあるのだから、一発で場所がわかってもおかしくないはずなのだ。

 

(結界か、はたまたダンジョンの中かモンスターの腹の中か・・・また面倒なことになりそうですね)

 

 心の中で溜息をつき、地図を眺める。

 

「ここの港町で船を預けて馬を買いましょう。

 スケイルズは覚悟して下さいね。普通に歩かせていても一ヶ月くらいはお尻が地獄ですから」

「マジか」

「ああ、確かに乗馬を始めてそのくらいまでは尻がな・・・普段使わない部分が鞍とこすれるから、尻の皮が分厚くなるまでは結構痛いぞ。毎日ずっと乗るとなれば尚更だろうな」

「勘弁してくれよぉ・・・」

 

 がっくりとうなだれるスケイルズ。

 クロウとソルがまた大笑いした。

 

 

 

「金貨十枚も払ってよかったのか? 船番の親父、目を丸くしてたぞ」

「実際長くなる可能性もありますからね。早めに戻ればある程度返して貰える約束ですし。それに相場より多目に払っておけば、より信用も出来るというものです」

「そういうものか」

「ついでに幻影もかけておけば良かったんじゃないの?」

「向こうも仕事ですから今回はまあ大丈夫でしょう。そうでなければ実力行使するまでです」

「違いない」

 

 春の陽気の中、笑いながら南への街道を行く三人。

 スケイルズの馬術は見るからに素人だが、ソルとクロウはそれなりに慣れた風情だ。

 それでも今は笑っているスケイルズが昼過ぎになると尻の痛みを訴え始め、夕方には哀れな声でクロウの癒しの呪文を乞うことになるのだが。

 閑話休題(それはさておき)

 

「気になるのはこの『黒瑪瑙の女王の城』だな」

 

 港町で手に入れた地図を開きながらクロウ。

 港町の南数百キロ、《雄牛の島》の中心近くに存在するという王国。

 その領土は差し渡し数百キロ、面積にして《雄牛の島》の三分の一に及ぶ。イメージ的には九州がほぼ丸ごと入るくらいだ。

 ソルの実家含めて都市国家クラスが大半のこの世界ではかなりの大国と言える。

 

「変な事言ってたよな、千年間同じ人が女王をやってるって。そんなこと有り得るのか?」

「極めて強力な魔術師なら絶対ありえないとは言えないけど・・・それより気になるのは黒瑪瑙(ブラックオニキス)って名前の方かな」

 

 ソルとスケイルズが顔を見合わせた。

 

「黒瑪瑙がどうかしたのか?」

「スケイルズの聞いてきた話にあったでしょう。女王の城には家より大きな黒瑪瑙のご神体があるって」

「ああ。それが?」

水晶(クリスタル)の城で出会った古代の妖魔を覚えているよね? 妖魔と言うのは創世の八神が世界を作ったときに、大地のかけらと霊界の闇から生まれた存在だと言われている。

 だから、依り代として石とか宝石みたいな、鉱物を選ぶ事が多いらしいんだ」

「!」

「つまり、おまえは」

 

 クロウが頷いた。

 

「ああ。黒瑪瑙の城には、セレのところと同じような妖魔がいる可能性がある」

 

 

 

 この時代、長距離の街道はほぼ整備されていない。

 旅の商人が通るのか、一応道のような物はあるが、あるかないかわからないようなものだ。

 道なき荒野を馬で進み、三人(と三頭)は旅を続ける。

 

 時折村に立ち寄ってクロウが魔術による幻影を併用した語りで歓待されたりもするが、大概は野宿。

 雪をかぶった黒曜石のような山脈を何とか越えて平野に降りると、そこは黒瑪瑙の女王の王国だった。

 

「・・・なんだこれは」

「すごいね・・・」

 

 そこに広がっていたのは一面の黄金の平野だった。

 刈り入れ時の春小麦は重い穂をつけて頭を垂れ、風に揺れている。

 農業についてもかなり原始的なこの世界では、そうそう見られる光景ではない。

 そもそもこれだけの農地を開拓すること自体、膨大なマンパワーが必要とされる。

 漁村育ちのスケイルズはもちろん、領主の息子であるソルですら見た事のない風景であった。

 

「うお・・・」

「よっぽど凄い国なんだなここは」

 

 その後も彼らは驚くようなものを目にし続けた。

 整備された街道、巨大な城壁と広大な城市、常設の市場、祭りでもない限りお目にかかれないような沢山の人間。

 店に並ぶ物もクロウ達が見たこともないようなものばかりで、ナイフや革袋、手鏡や陶磁器と言った日用品についても明らかに出来が違う。

 時代の進んだ「ヒョウエ」の記憶の中のそれらにむしろ近い。

 

「うお、あの釣り竿すげえ・・・針がぴかぴかしてんぞ!?」

「このマント止め・・・素晴らしい彫金だ。俺の故郷なら家宝になるレベルだな」

「はいはい二人とも、どうせ買えないんだからほどほどにしとく。預かった資金は僕達のお金じゃないんだから」

「買ってよお母さん!」

「誰がお母さんだ。ほれ、行くぞ」

「ああっ、せめてもうちょっと・・・!」

 

 嘆くスケイルズを念動術で強引に引きずり、クロウ達はその場を後にした。

 ソルもかなり後ろ髪を引かれてはいたが、こちらは自分の意志でその場を離れることが出来たようである。

 閑話休題(それはさておき)

 

 

 

「・・・」

「・・・」

「・・・」

 

 都を見下ろす丘の上、クロウ達は三者三様に絶句していた。

 人の良さそうな荷馬車の御者がそれを見て笑っている。

 

「兄ちゃんたち、来るのは始めてかい。良く見とくんだね、あれがオニキス城。黒瑪瑙の女王様の都さ!」

 

 黒曜石のように黒光りする城壁と巨大な城。

 そして城壁と城の間を埋めるのは打って変わって色鮮やかな屋根を持つ無数の家々。

 あるいは五十万都市メットーにも比肩するかと思われる巨大都市。

 それが女王と同じ名を持つ首都にして居城、黒瑪瑙(オニキス)だった。

 

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