毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~   作:ケ・セラ・セラ

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09-19 人間はピンチになると天才になる

「半欠けの指輪だ! もっと良く探せ! 絶対にあるはずだ!」

 

 ヒステリックな宮廷術師の声がクロウ達の泊まっていた宿屋に響く。

 至るところひっくり返された部屋の中にはプラマーと無表情の兵士達、拘束されたスケイルズとソル。

 後ろ手に縛られた二人はシャツとパンツ一枚の格好だ。

 プラマーの怒声にも動じることなく、兵士達は淡々と返事を返す。

 

「探せるところは探しました、プラマー様。こやつらの荷物、服、馬の荷袋から家具の隙間まで全てです」

「まさか、あやつが持っていたのか? 狙われているのがわかっていてわざわざ王宮まで持ってきた? ありえん!」

「・・・」

 

 スケイルズとソルが無言で視線を交わす。

 どうやらと言うべきかやはりと言うべきか、彼らの目的もやはりあのこわれた指輪であるらしい。

 このプラマーとやらも宮廷術師を任じているだけあってそれなり以上の腕の持ち主なのだろうが、クロウ同様片割れの方向やある程度の距離はわかっても、正確な位置を突き止めることはできないのだろう。

 

(そもそもそれが出来るなら、学院の先生たちがやってるよな)

(そりゃそうだ。しかし何でできないんだろうな?)

(竜ってのは魔法が効きにくいって言うし、そのせいじゃね?)

(馬鹿言え、体のカケラにしか過ぎないんだぞ、そんなことがあるものかと言いたいところだが、流石に黄金の虹竜となればないとは言い切れないか・・・?)

(だろう? だろう?)

 

 そのようなひそひそ話をしていたところでプラマーが二人に向き直った。

 

「指輪はどうした! あの小僧が持っているのか!

 お前達が持っていたり隠したりしているならさっさと白状しろ! 今のうちだぞ!」

「・・・」

「あぁん? なんだ、その反抗的な目は!?」

 

 右手に持った学院の杖で、ソルの顎を上向かせるプラマー。

 睨みつけるプラマーを、無言でソルがにらみ返す。

 

「この・・・」

「あーっ!?」

 

 プラマーが杖を振り上げたところで、いきなりスケイルズが大声を出した。

 

「何だ小僧!」

「い、いえなんでも・・・」

「言え! 言わんと・・・」

 

 今度はスケイルズに向かって杖を振り上げたプラマーが、それを下ろしてニヤリと笑った。

 

「そうだな、術師が杖で殴るというのも優雅ではない」

「で、ですよねー・・・」

 

 ほっとするスケイルズ。それを見てプラマーがいやらしい笑みを浮かべる。

 

「血の管が詰まって指先から体が腐っていく呪いをかけてやろう。

 術師なら術で痛めつけるべきだな」

「ぎゃあああああああああああああああああ!?」

 

 悲鳴を上げながらゴロゴロ転がるスケイルズ。

 

「押さえつけろ。さて小僧、話すなら今のうちだぞ・・・」

「はい、話します! こわれた指輪は宮殿に行ったクロウが持ってる白絹張りの箱の中に入ってて、荷物の中の二本の銅のカギに魔法がかかってて、クロウが持ち上げた箱に俺とソルがそのカギを使ってでないと決して開かないようになってるんです!

 お願いだから助けてぇぇぇぇ!」

 

 みっともなく泣きわめくスケイルズに顔をしかめ、プラマーが兵士達の方を向く。

 

「おい」

「はい、さっき確かに・・・ありました」

 

 紐にぶら下がった二本の鍵を兵士が差し出す。

 プラマーがそれに触れて頷いた。

 

「確かに魔力がかかっているな・・・こいつとの繋がりも感じる。よし、宮殿までそいつらを引っ立てろ。抵抗したら死なない程度に痛めつけていいぞ」

「はっ」

「しません! しませんから魔法使わないでぇぇぇ!」

「それはお前達次第だな。いくぞ!」

 

 懇願するスケイルズを嘲り笑い、プラマーが上機嫌で身を翻す。

 背中をこづかれて、スケイルズとソルも歩き出した。

 囚人用の頑丈な鉄格子付きの馬車に放り込まれて、そのまま宮殿へと出発する。

 走り出してしばらく、周囲の注意がそれたところで二人が額を寄せ合った。

 

「あの鍵は実際何なんだ?」

「子供の頃大風で倒れた納屋とトイレの錠前の鍵さ。

 いらなくなったんで俺が貰って、お守り代わりにずっと持ってたんだ。

 俺が学院に出発するとき、それを知ってた地元の魔法使いが幸運の魔法をかけてくれたんだよ」

「なるほど、魔法がかかってるのもお前と繋がりがあるのも当然だな。やるじゃないか」

「人間はピンチになると天才になるのさ」

 

 声を出さず、二人は笑いあった。

 

 

 

「・・・っむ」

 

 闇の中。

 か細いほくちの熾火だけが照らす洞窟の途中でクロウが立ち止まった。

 

「どうした」

 

 手を繋ぐ少女が相変わらずの平板な声で問うと、戸惑ったような顔でクロウが振り向く。

 

「どうもぐるぐる回っているようです。見て下さい」

 

 ほくちを持った手で指し示したのは小さな開口部にはまった鉄格子。

 開かないよう、いくつかの岩で抑えられている。

 

「さっき僕が入っていた牢屋です。これまでに分かれ道とかありましたか?」

 

 少女が首を振る。

 クロウが溜息をついた。

 

「参りましたね。今までここから出る時はどうしていたんですか?」

「プラマーと歩いているといつの間にか宮殿の中にいた」

「ふむ・・・仕掛けとか天井に入り口があるわけではないか・・・? 幻影でも仕掛けられている? だがここは魔素欠乏空間だし・・・」

 

 考え込んだクロウの手を少女が引いた。

 

「クロウ、クロウ」

「なんでしょう?」

「プラマーが来たぞ」

「!? わかるのですか!?」

「うむ」

 

 一瞬逡巡して、クロウは少女を抱き上げた。

 

「失礼します!」

「うむ?」

 

 きょとんとする少女にかまわず、全身に魔力を流す。

 有り余る魔力で筋力を強化して、クロウは全速力で走り出した。

 

 

 

「・・・近いな。陛下、これよりはお静かに」

「うむ」

 

 少女の入っていた岩屋の少し手前あたりで、前方の通路がうっすらと明るんでいるのが見えた。

 それと共に強化した聴覚に複数の足音と息づかいが聞こえてくる。

 恐らく五人から十人ほど。恐らくは少女を迎えに来たのだろう。それともクロウを尋問するのか。

 通路で迎え撃つか、やりすごして出口から脱出するか、それとも少女のいた岩屋の中で待ち受けるかと考えたところである事に気付く。

 

(しまった! 岩屋に鍵をかけ直していない!)

 

 間に合わせの道具とクロウの腕では、鍵をかけ直すのにもそれなりの時間がかかる。あの時はもたもたしていては捕まる恐れがあったし、今かけ直す暇は更にない。

 

(くそ、しょうがない!)

 

 腹をくくって――やけになったともいう――少女を下ろし、ここで待っているようにとジェスチャーで示すと、そのままクロウはほくちを少女と一緒に後に残し、莫大な魔力で強化した筋力で洞窟の壁を蹴って飛び上がった。

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