毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~   作:ケ・セラ・セラ

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02-02 白の甲冑

「あ、あの、申し訳ありませんでした」

「失礼致しました・・・」

「・・・いいですよ、慣れてますし」

 

 実際慣れているはずなのだが微妙に憮然として返すヒョウエ。

 二人の驚き顔が余りに真に迫っていたからかもしれない。

 

 なお異世界人の名前はこの世界の人間には耳慣れないものなので、ヒョウエが男名前とわかる人間は少ない。

 閑話休題(それはともかく)

 

「色々面倒な事情がありそうですね。聞いておいた方がいい話でしょうか?」

 

 その言葉に主従が視線を交わす。

 

「・・・そうですね。ただ廊下でするような話でも無いので、部屋の方でよろしいですか?」

 

 ヒョウエが無言で頷いた。

 

 

 

 案内されたのは続き部屋の客間だった。

 応接間、居間に当たる部屋の中央を空けてスペースを確保してある。

 その中央に座する一領の甲冑。

 

「おお!」

 

 思わず近寄っていた。触れはしないがそのままなめ回すように検分する。

 外国人が勘違いしたような和風の装飾が施されているが白色の素体は板金鎧、むしろSFチックなパワードスーツにも見える。

 

「ふーむ・・・ふーむ!」

 

 そのままどれだけそうしていただろうか。遠慮がちに声をかけられて我に返った。

 

「あの。カスミがお茶を入れてくれたので、お座りになりませんか?」

 

 気がつけば申し訳なさそうな顔のリアス。

 いつのまにかお茶の用意を完璧に整えたカスミが、半目でヒョウエを見ていた。

 

 

 

 香草茶はさすがに一級のものだった。茶葉もいいが淹れ方も素晴らしい。

 それを言うとカスミは微笑んで一礼し、リアスが得意げな顔になった。

 

「それで事情とやらですが」

「はい・・・薄々お察しとは思いますが、この件は家の後継争いが関わっています。

 血筋で言えば私が嫡流なのですが、ご存じのようにニシカワは『白のサムライ』の家です。白甲冑をまとって戦場に立てないものが当主になることは許されません」

「で、動かせなかったわけですか」

 

 こくり、と暗い顔のリアスが頷く。

 

「父は早世しまして、今は祖父が当主代行を務めています。私が15になったので正式に当主の座を受け継ぐことになり、白甲冑を装着する継承の儀を執り行うことになりました。

 白甲冑も人によって向き不向きというのでしょうか。すぐ動かせる人、動かせるようになるまで時間がかかる人。まれには全く動かせずに廃嫡される人もいたそうです」

 

 ちらり、と部屋の中央に座する白甲冑に目をやる。

 リアスの体にはやや大きいそれは、静かに彼女の話を聞いているようにも見えた。

 

「それで正式な継承の儀の前に慣れるための期間をおくのが通例になっているのですが・・・私には動かせなかったのです。無双の力を発揮する真なる魔法の時代の遺物(アーティファクト)がただの重い鎧でしかありませんでした。

 二度三度と挑んでも鎧は応えてくれず・・・今や廃嫡も公然と噂されているそうです」

「お嬢様・・・」

 

 重いため息。

 黒髪の童女が気遣わしげに主を見やるが、その心遣いは届いていない。

 

「先ほど廊下で会った人がその場合の継承候補、というわけですか?」

「はい。ローレンスと言いまして私の従兄です。子供の頃は良くかわいがってくれて、とてもいい人だったのですが・・・」

 

 口をつぐんでしまったリアスに代わり、カスミが後を続ける。

 

「リアス様の叔父様の長男、つまり先代様の甥ですし腕も立ちますので一族の中では一目置かれておられます。

 血筋の面でも技量の面でも、リアス様の次には御当主にふさわしいお方・・・なのですが」

「人が変わってしまったと」

「私の記憶している限りでもお優しく、えらぶるところのない方でした。リアス様が御当主の器だと明言もされておられました。

 それがここ一年ほどはあのように言動が粗暴になりまして。四六時中カタナを差して歩くようになり、リアス様にもお辛く当たられるようになって・・・」

「うーん」

 

 腕を組んで考え込む。

 確かに人間が豹変するのはないことではない。たとえば諦めていた当主の座を手に入れられる目処がついたとか・・・。

 しかし何かがずれている気がした。

 根拠はないし言語化もできないのだが、何かが違う気がする。

 

「あなたがこれを動かせないのが、あの人が何か仕掛けた結果という可能性は?」

「その可能性は低いかと。本来これは専門のもの達が常時複数で守っています。

 当主以外は基本的に触れませんし、買収などもほぼ不可能。ローレンス様が彼らを派閥に取り込んだと言うことであれば、細工よりそちらのほうがよほど問題でしょう」

 

 答えたのはカスミだった。

 10才の童女とは思えない理路整然とした物言いに思わず顔をまじまじと見てしまう。

 

「何か?」

「いえ何でも」

 

 もっとも、外見と中身のギャップという意味ではヒョウエも大概ではあるのだが。

 

 

 

 しばらく沈黙が落ちたのち、ヒョウエが首を振った。

 

「まあ、考えていても仕方ありませんか。僕は探偵じゃなくて術師ですし。今はリアスさんがこれを動かせるようにすることですね」

「そうですね。それができれば全ては丸く収まります。今、家のどれだけの人間があちらについているかはわかりませんが、兄様も文句はつけられないでしょう」

 

 リアスが頷く。カスミも。

 

「それじゃ早速始めましょうか。取りあえず一度白甲冑を装着して貰えますか? 鎧下(インナー)だけで結構です」

「え・・・」

 

 見る見るうちにリアスの顔が紅潮していく。

 カスミが怒りたいけど怒れない、そんな顔でヒョウエを見ていた。

 僅かにうろたえるが、その時脳裏に閃くものがあった。

 

「あー。ひょっとしてインナーが素肌の上にしか着れない?」

「はい・・・え、おわかりになるんですか?」

「まあ専門家ですので」

 

 先ほど鎧を検分していたときに気付いたことだ。

 軍の具現化術式などは速度・防御・筋力などを上昇させる術式を一体成型で具現化させているのだが、ヒョウエが見た限り白甲冑の表面装甲、プレートアーマーのプレートの部分には防御の術式しか付与されていなかった。

 『白のサムライ』が常人離れした膂力と速度を発揮したことは有名であり、つまりそれらを発揮する機構は鎧そのものではなく鎧下(インナー)に仕込まれている事になる。

 そしてこの手の遺失魔導鎧は普通の服の上に着る物もあるが、裸の上に直接装着するものもあるとヒョウエは知っていた。

 

「さすがに遺物(アーティファクト)、構造が洗練されてますね。

 しかし外付け強化かと思ったけど、素肌に直接と言うことは肉体の反射神経や筋力を上昇させる術式か? とするとその辺のマッチングで何か問題が・・・」

「・・・」

「・・・」

 

 気がつくとまた、リアスとカスミが何とも言えない表情でヒョウエを見ていた。

 こほんと咳払いしてヒョウエはその場を取り繕う。

 

「取りあえずインナーだけ着てみてください。隣の部屋で待っていますので、終わったら声を」

「はい・・・」

 

 恥ずかしそうにうつむくリアス。

 

(? まあ、未婚の貴族令嬢ですしね)

 

 それで自分を納得させてヒョウエが部屋を出た。

 

 

 

「なるほど納得です」

「ヒョウエ様!」

 

 思わず頷いたヒョウエにカスミが噛みついた。

 噛みつかれた方は口の中に牙が見えそうだなと暢気なことを思っていたりする。

 

「・・・・・・・・・・」

 

 そして納得された当人は両腕で体を隠し、恥ずかしそうに俯いていた。

 黒い革のような薄手の手袋に靴下、ヒジヒザに同色のサポーター。それらを皮膚に密着した黒いベルトともテーピングともつかないものが繋いでいる。

 体はパラシュートやロッククライミングのハーネスのように要所要所を支え隠しているだけで、貴族令嬢の感覚としては下着、ほとんど裸に近い。

 現代日本の基準でもなかなか過激なレベルで、この世界の女性が恥ずかしがるのも当然と言えた。

 

("鎮静化(カーム)"の呪文でも使えればなあ)

 

 ヒョウエが使える精神系の呪文は意識を一点に集中させる"精神集中(コンセントレイト)"だけである。精神の動揺を抑える"鎮静化(カーム)"とは似ているようで違う。

 溜息をつきつつ、持参した荷物の中から様々な器具を取りだして準備を始めた。

 それが整うと努めて事務的に、患者を診察する医者のようにチェックを開始する。

 

「魔力は練れますか? ではゆっくり呼吸して・・・はい、一、二、一、二・・・」

 

 幼少の頃からそちらの鍛練も積んでいるのかリアスの呼吸法はよどみないもので、安定して魔力を放っている。

 だがそれを見てヒョウエは眉をひそめていた。




 白甲冑のインナーは大体H●T LIMITです(ぉ
 大■ーガー養成ギプスでも可。

 作者のモチベーションは読者の皆様の評価と感想です。
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