毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~ 作:ケ・セラ・セラ
会議室。
クロウ達と副学長以下50名ほどの教師が着席している。
あれから更に増えた教師の数を見て、副学長が溜息をついた。
「それではクロウ、話して下さい。細大漏らさず」
「はい」
クロウが今回の探索のことを話し始める。
前回と同じく、航海中にあった些細なことまでもだ。
船に名前をつけたこと。巨大な魚の一本釣り。初めての乗馬。黒瑪瑙の王国の噂。黒い山脈と黄金の沃野。進んだ文化と細工物。黒瑪瑙の都のきらびやかさと豊かさ。宿屋にやってきた女王の使いと宮廷。黒瑪瑙の女王と宮廷術師プラマーと無表情な廷臣たち。黒瑪瑙の女王の力と地下の岩窟の牢獄。指輪の片割れと女王の名前、女王の正体。
「そう言えばプラマーはこの学院出身と言っていましたが、心当たりはありますか?」
「・・・千年以上前ですがそうした卒業生はいました。恐らくはそれでしょうね」
「ですか・・・それで彼女の変じた黄金の竜に乗って戻ってきたわけですが・・・その前にお話しすることが一つ」
真剣な顔のクロウに、わずかにソルが眉を寄せた。スケイルズは「何かあったっけ?」という顔。
「お話しなさい」
同じく真剣な顔で副学長が頷いた。
「はい。アルテナは真なる竜であり、世界を渡る力を持っています。彼女が城を脱出して、僕達を連れて行ってくれたのが・・・」
ここが天上界と物質界の間にある幻夢界であること、世界の壁が崩壊しようとしていること、それを防ぐべく自分が送られた事などを語る。
副学長以下の教師たちは黙ってそれを聞いていた。
「そして、僕達は再びアルテナの背に乗って元の世界に戻り、そこからアルテナの翼と船で戻ってきました。以上です」
クロウがそう言って話を結んだ途端、堰を切ったように議論が始まった。
「彼の話が真実とするならば、つまり今ここにいる我々は過去の幻影と言うことか?」
「記憶が実体化したものかもしれないな」
「むしろ世界線が混線していると考えた方がよくないだろうか。天上界や幻夢界という概念は初耳だが、夢であれば時間や空間の概念がない世界ということも有り得る」
「時間、あるいは空間を遠く隔てた二つの世界が幻夢界とやらを媒介に繋がってしまったと言うことか」
「有り得た可能性の世界という考えもあるぞ。何かの理由によって世界線が枝分かれし、別の枝と触れあってしまったとしたら」
「多重次元論か。だが彼らの話によれば、『下』の世界も文化が異なりこそすれ我々同様の人間が住み、神を崇めていたという。全く異なる世界だとしたら同じような存在が同じような文化を築くだろうか?」
「認識がいじられている可能性もあるからな。実は八本足のクモのような知的生命体なのが、別次元から降り立った彼らには人間同様に見えている、あるいは脳が調整してそのように見せているのもないとは言えん」
さすがに人類最高レベルの術師兼学士たちの集団だけあって、高度で濃密な議論が矢継ぎ早に展開される。
クロウは何とかついて行っているものの、スケイルズはもちろんソルでさえ会話の内容が理解できない。
そのクロウも周囲から質問攻めで、十分に理解出来ているとは言いがたい状況だ。
「つまり逆に我々が自分を人間と認識しているだけの、八本足の知的生命体である可能性もあるな?」
「中々面白い観点だな。まあ我々ですら認識を欺く幻術の一つや二つは使えるわけだし、神などの高次存在がそのようにしようとすればたやすい事ではあろうな」
「幻術か・・・いや幻術じゃない・・・また幻術なのか!?」
「ははははは!」
「そのへんにしておきなさい」
やがて議論がズレ始めたところで、一人加わっていなかった副学長がパンパン、と手を打って場を収めた。
場が素直に静まりかえったところで、改めてクロウ達に視線を向ける。
「実のところ、何者かの手によって世界の壁に穴が空けられているのではないかという疑いは私たちも持っていました。
霊界との間に空いた巨大な穴。最初はあなたの強大な魔力がこじ開けたものと思っていましたが、それでも学院の教師たちが協力すれば閉じられるもののはずでした。
しかし私たちの全力を振り絞っても穴が完全に塞がることはありませんでした。
あなたたちが最初の探索をしている間、そして今回の探索の間も可能な限りの教師を投入して穴を塞ごうとしましたが、むしろ穴は少しずつ広がっているのです。
今では教師としての仕事をしていない間はほとんど全員がその術式にかかりきりです。
このままでは学院を一時全面休校にすることも考えなくてはならないでしょう。それでもこの事態を解決できるかどうか」
「・・・!」
余りの事態にクロウ達が揃って絶句した。
「・・・今にして思えば、黄金虹竜の指輪などという極めて重要な探索に、先生方ではなく僕達みたいな生徒を送り出したのもそのせいですか」
「理由の一つではあります。あなたたちに運命を感じたのも嘘ではありませんよ」
その時、頭をひねりながらも大人しく話を聞いていたアルテナの顔に理解の光が射した。
「ああ! そういうことか!」
「どうしたんです、アルテナ?」
「うむ。世界と世界の間を渡るとき、わらわは本能的に強い抵抗があるのを予期していたのじゃ。それがお前の世界に行くときも、戻ってくるときも、それほどの抵抗は感じなんだ。まさしくその大穴のせいであろうよ」
「むう」
ざわざわとどよめく教師陣。また議論が始まろうとするのを再び手を打って副学長が鎮める。
今度はクロウが何かに気付いた顔になる。
「と言うことは副学長先生。ひょっとして僕の召喚は状況には余り関係なかったということですか?」
「断言は出来ませんね。ただ多少なりとも悪化させた可能性は高いですし、禁じられている召喚を行ったのは変わりませんよ」
「はい、わかっています」
クロウとソルが神妙に頭を下げた。
しかし頭を上げた後のクロウの眉間には、眉を寄せたしわがよっている。
「それはそれとして副学長先生。何となくこの先の展開が予想できるんですが」
にっこりと笑う副学長。
「あら、それは素晴らしいですね。先生察しのいい子は好きですよ」
「『下』で師匠に無茶ぶりをされるときの空気と全く同じなので」
反応までうちの師匠にそっくりだ、とこれは声に出さずに心の中で呟く。
それを察したかどうか、白面の美女は笑顔のままで次の言葉を口にした。
「クロウ以下三名に新たな探索を命じます。三人は黄金の虹竜の娘アルテナを連れ、世界に亀裂を入れんとする何者かを捜し、これを阻止しなさい」
また幻術なのか!?