毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~ 作:ケ・セラ・セラ
クロウとアルテナ、スケイルズとソルが廊下を歩いていく。
四人とも旅支度だ。
「で、結局引き受けちゃう訳か。あーあ、お人好しだねクロウもソルも」
「そう言うお前だってついてきてるじゃないか。別に頼んではいないぞ?」
「馬鹿言うなよ! お前達だけじゃ頼りないからな! 俺がついててやらねーと!」
後ろで交わされる会話を聞きながら、クロウは苦笑する。
横を歩いていたアルテナが不思議そうな顔で少年を見上げた。
「なあクロウ。何故スケイルズもソルも心にもないことを言っておるのだ?
どう見てもスケイルズは自ら望んでついてきておるし、ソルもスケイルズがついてくることを望んでおるではないか」
「ぬ」
「ぐっ」
絶句してしまったソルとスケイルズを見て思わず吹き出す。
「おい!」
「笑うなよ!」
「はは、ごめんごめん」
顔を赤くした二人の抗議を軽く受け流すと、斜め下のアルテナに視線を落とす。
「人間はね、歳を取るとどうしても素直になれなくなるんだ。本当の事を言わないで上げるのも優しさなんだよ」
「そういうものか。ひねくれものは面倒だな」
神妙な顔でまじめに頷くアルテナ。
後ろでソルとスケイルズが再び抗議の声を上げるが、二人とも無視した。
校舎の中庭に出た。
周囲に人気はなく、空には静かで雄大な満天の星空が広がっている。
「しかし帰ってきたと思ったらまた旅の空か。少しくらいゆっくりしたかったぜ」
「まあ事が事だからな・・・それに今回はアルテナが背中に乗せてくれる。これまでよりは随分と楽になるはずだ」
「だといいけどねえ」
「それじゃアルテナ、お願いします」
「うむ」
アルテナの姿がぶれ、次の瞬間巨大な黄金の龍が出現する。
乗れ、というように首を下げると、クロウ達三人がその体をよじ登り、首の後ろに念動で体を固定する。
「大丈夫です。行って下さい」
クロウの言葉に龍が頷き、翼を広げて舞い上がった。
数度羽ばたいて見る見るうちに高度を上げ、夜空の彼方に黄金の龍が飛び去る。
「・・・」
校舎の開いた窓から副学長だけがそれを見送っていた。
黄金の流星が夜空を駆ける。
恐らく時速は200から300kmほどだろう。この世界では最速の移動手段の一つに違いない。
流れていく景色にスケイルズが歓声を上げる。声こそあげないものの、ソルも感嘆の面持ちだ。
黒瑪瑙の城から帰ってくるまでに数日間体験しはしたものの、やはり普通の人間からすれば驚嘆すべき体験ではあるのだろう。
(まあ僕は慣れてますけどねー)
それでもこうして空を駆けるのは久々で、やはり心は躍る。
しばらく風を楽しんだところで、後ろから声がかかった。
「クロウ、そういやあどこに向かってるんだっけ?」
「呆れましたね。話を聞いてなかったんですか? 《使命》の島ですよ。どうやらそこに亀裂があるらしいと副学長が」
「こいつに言っても無駄だ、クロウ。一年も付き合ってるんだからわかるだろう。
まあかいつまんで言えば向こうは幻影を交えた結界を張っているらしくて、歩いても飛んでも瞬間移動でもそれらしき場所に近づくことが出来ない。人数を揃えればわからないが、亀裂を広がらないようにするので手一杯。
なので世界を渡る力を持つ
「なるほどー」
《熊》
《針》
《雌馬》 《雄牛》
《祭壇》
《エーテル》
《足跡》 《使命》
以前にも述べたように、この世界の島はこのような配置になっている。
もっとも南東にある《使命》の島は魔導学院のある《祭壇》の島から直線距離で数千キロ、船で行くのであれば島を経由してその1.5倍ほどになる。
船で行くなら最低半年はかかる距離だが、それでもアルテナの翼であれば三日で到達できるだろう。
「それではよろしくお願いしますね、アルテナ」
『任せておけ』
頷いた金竜の背中を、クロウは優しく撫でてやった。
《祭壇》の島から《エーテル》の島の間の海を横断するのに一晩。
半日休んで《エーテル》の島を横断するのに半日。
一晩休んで《使命》の島まで渡るのに一日。
特に何も起こらず、予定通り一行は《使命》の島に到着した。
手近の港町で一泊し、英気を養ったところでいよいよ本命の場所に向かう。
飛び立った黄金の龍はあっという間に雲を越えた。
果てしなく広がる蒼穹、眼下には白い雲海。
「それで、結界の張ってある場所ってどのへんなんだ?」
「この島の中央、『予言者の峰』と呼ばれる巨大な山の麓にあるらしい。一見した限りではごく普通の変哲もない山の中だってさ」
「ふーん。巨大ってどれくらい?」
「地理のボルドゥ先生によれば、ざっと12000mだってさ」
「ファッ!?」
「ほう、そんなに高いのか。話だけは聞いていたが」
興味を引かれたようにクロウが振り返る。
「そう言えばソルはこの島の出身だっけ。何か知っていることはある?」
「おとぎ話のレベルだがな。頂上には神々の円卓があり、そこまで登り切るとどんな願いでも叶えてくれるとか、中腹にある洞窟には予言者たちが住んでいて、この世の始まりから終わりまでの全てを記録し続けているとか、地下にある大空洞には人ほどもある大きなクモが無数に住み着いているとか」
「よく知ってるなあ。ソルは確か東の端っこの方の出身だろ? 島の中央にある山のことがそんなに伝わってるのか?」
スケイルズの言葉にソルが苦笑する。
「そりゃまあこの島のどこからでも見えるからな。おとぎ話の種くらいにはなるだろうよ」
「は? でも山だろ? 島の真ん中にあるのに東の端っこからでも見えるって・・・・」
「見えるんだよ。ほら、雲が切れるぞ・・・」
「!」
「!?」
十数秒後、アルテナが雲海の切れ間に飛び込んだ。
視界が晴れ、「それ」が視界に飛び込んできたとき、クロウとスケイルズは揃って絶句した。
「うお・・・」
「なんだ、ありゃ・・・!?」
「まあ、驚くよな」
再びソルが苦笑した。
高度500mから見える地平線と両脇に浮かぶ水平線。
その視界の中央に地平線を貫いてそそり立つのは純白の三角錐。
明らかに地平線の向こうに存在する、それでもなお視界に飛び込んでくる巨大な存在。
"神々の峰"ルレク・セレースだった。
>素直になれない二人
ただし両方とも男。