毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~ 作:ケ・セラ・セラ
「みんな下がれ!」
「しゃっ!」
初撃は同時。
クロウの魔力が空中を走り、対照的にアノソクレスの魔力が地上を走った。
「!?」
「ぶふぉぁっ!」
クロウが放ったのは念動の力そのものを凝縮した弾丸。
普段の金属球と異なり力を集中させにくいものの回避しづらく、また迎撃も困難。
九発全てをまともに食らい、黒蜘蛛の怪人は吹き飛んだ。
だがただ吹き飛んだわけではない。
地上を走った魔力は一点にて四方八方へ放射状に広がり、地面をひび割れさせる。
放射状に広がった縦線にひび割れのような横線――蜘蛛の巣のような光る陣が半径十メートルほどにわたって出現した。
「なんだ!?」
「ぬう、動けん」
スケイルズの驚きの声と、アルテナの不満そうな声。
蜘蛛の巣状の魔力に囚われて四人の足は貼り付いたように動かない。
にやにやと笑いながら立ち上がってくるアノソクレス。魔力を込めた腕でブロックしたらしく、少なくとも見た目に外傷はない。
「"
素早く足元に解呪の術を叩き付けるが、解除できたのはクロウ周辺の2mほど。
アルテナ達の方も解除しようとするが、今度はクロウに向けて魔力を放ってくる。
「ちっ!」
術式を構成する暇もなく、生の魔力をそのまま叩き付ける。
ヒョウエの青い魔力とアノソクレスの黒い魔力が空中でぶつかり、魔力が弾けて四散した。
爆発がクロウを包む。
「クロウっ!」
「くくっ! ・・・いや、まだか。さすがだぁ」
ちっ、と舌打ちする黒の怪人。
ふうぅ、と息を吐いて爆炎の中からクロウが現れる。ところどころ服も破れて頬から血が垂れてはいるが、大きな怪我は見あたらない。
「クロウ!」
今度は安堵の声。振り返らず、片手を上げてそれに返す。
それと同時に二撃目が来た。
「かはっ!」
「かあっ!」
放たれる蜘蛛の黒い魔力。
迎撃するクロウの青い魔力。
「・・・こうかっ!」
「!」
魔力の帯がねじれた。クロウが術式とも言えないような変化を魔力に与えた結果、力が拮抗する。一方的に押されて吹き飛ばされた前回と違い、両者の中間点で二つの魔力が停止した。
「かっ!」
「はっ!」
「うおっ!?」
クロウとアノソクレス、二人の気合がぶつかり合い、魔力が破裂する。
中間点での爆発。魔力の残滓の衝撃波が二人のみならず、黒い丸岩やアルテナ達をも包み込む。
「くくっ! これは!」
「くっ! 三人とも大丈夫か!」
「気にするな! 前に集中しろ!」
ソルの声と共に、魔力を帯びた矢が怪人に飛んだ。
狩猟に使っていた弓だろう。
難無く払われたが、それでも牽制の役には立つ。
そして今の攻防でわかったこともあった。
(この世界では魔力の働き方が物質界と違う)
思えばずっと違和感はあったのだ。
地上と同じ術式は使えるが、魔力の働き方が大雑把というか、ファジーなのだ。
適当な術式でも強いイメージを作って魔力を流し込めば魔法は発動してしまう。
そのあたりのギャップが魔力のコントロールに齟齬をきたす要因になっていたのだが、こちらの世界で一年以上を過ごしたこと、水晶の妖魔や自分の影、黒瑪瑙の妖魔やプラマーたちとの戦いを経て、ここで開眼したようだった。
(チューニング完了、ってところか)
スペック自体が変わったわけではないが、環境に今一つうまく適応できていなかった。
その適応が完了した。この世界で魔力を扱う感覚を会得した。
それゆえの拮抗。
「くくっ。これくらい歯ごたえがないとなあ」
うそぶく
「!」
その言葉が嘘ではないことを証明するかのように、黒い魔力が更に吹き上がる。
純粋な魔力量で言えば、あるいはゲマイの首都全ての人々の魔力を集めたサヌバヌールにも勝ろうか。
「くくっ! なんと!」
だがそのサヌバヌールと一騎打ちして勝利したのがクロウであるヒョウエだ。
クロウの吹き上げる魔力もまた、黒い蜘蛛の怪人に劣るものではない。
ヒョウエの体の中にある"
「・・・」
「・・・」
僅かな時間、二人の動きが止まった。
「かっ!」
「しゃあっ!」
二つの膨大な魔力が解き放たれた。
クロウとアノソクレス、二人の魔力が、地の底で荒れ狂う。
ぶつかり合う魔力が現実を犯し、物理法則をねじ曲げる。
高度に魔法的であるこの空間に溢れる大量の魔力が、双方の意図しないランダムな魔法効果を引き起こす。
雷鳴が鳴り、稲妻が走る。
炎の爆発が起きたかと思えば、凍えるような吹雪が吹き荒れる。
どこともしれぬ情景が不意に浮かんで消え、幻影の妖精たちが周囲を飛び回る。
海の底と繋がったのか、大量の海水が降ってきた時はソル達も死を覚悟した。
「ぬっ!」
「わぷっ!?」
一際大きい爆発が起こり、黒い砂を巻き上げる。
「ぺっぺ!」
「クロウ達は・・・どこだ?!」
砂まみれになって、それでも弓を手放さないソルが周囲を見渡す。
「あそこだ」
「!?」
この期に及んで微塵も動揺していないアルテナ。その彼女が指さしたのは空中だった。
「おおおお!」
「あああああああ!」
魔力をぶつけ合うだけでは埒があかないと見たか、二人は拳に魔力を集中させて殴り合っていた。
強い魔力がただそれだけで現実を変容させるこの世界。
敵を倒すのであれば、下手な術式よりも密度の高い魔力を的確に叩き込む方が効率がよい。
それを今、二人は実践していた。
「ら、ららららららら!」
「くくかかかかか!」
クロウはヒョウエとして鍛えた格闘術で、アノソクレスは素人のようだが左右二対の余計な腕がそれを補う。
込められる魔力も互角なら、手数も互角。
攻撃の魔力と防御の魔力がぶつかり合うたびに弾ける閃光。
そのたびに爆風のような衝撃波がスケイルズたちを襲う。
「うお・・・」
その、当人たち同士にとってはほんのカケラほどの余波が、自分の全力を投じた術に匹敵、あるいは凌駕するほどの魔力を発していることにソルが戦慄する。
後ろで魔法の明かりを掲げ続けるスケイルズも、また一言もない。
何を考えているのか、アルテナだけがいつもの無表情な顔でそれを見上げている。
「しゃあっ!」
アノソクレスが六本の腕で連続パンチを繰り出す。
一本目を首を振ってかわし、二本目を体を斜めにしてかわす。それと同時にカウンターの右拳。クロウとアノソクレス、二人の拳が交差して唸りを上げる。
「ぐっ!」
腕の一本を使ってガードするアノソクレスだが、連続攻撃の流れが止まった。
その隙を縫って繰り出されるクロウの左拳を、また別の腕でガード。
残る二本の腕で攻撃を繰り出すが、そちらはクロウの肘で一本がそらされ、もう一本は脇腹をかすめるに留まった。
そしてまた最初から攻防が始まる。
巻き起こる颶風、引き裂かれる空間。
天地を揺るがす戦いは終わらない。