毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~   作:ケ・セラ・セラ

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02-03 問題の切り分け

「はい、結構です。それでは隣の部屋に下がっていますので着替えて頂いて結構ですよ」

「はい・・・」

 

 器具を取り付けて軽く歩いてみたり、装甲のある状態で魔力を練ってみたり、色々なテストが一通り終わってヒョウエは退出する。

 しばしの後再入室して、まだ僅かに頬を染めたリアスの向かい側に座る。

 音も立てず、香草茶のカップが彼の前に置かれた。

 

 溜息をついてカップに口をつけ、そのまま熱い香草茶を一息に飲み干す。

 カップをおいて、もう一度溜息をついた。

 驚きつつもよどみなくお代わりを注ぐカスミ。緊張の度合いを高めるリアス。

 

「今見た限りではインナーにも装甲にも機能上の欠陥は見受けられません。魔導鎧の異常である可能性はかなり低いと思われます。

 一方で魔力も十分に練れています。鎧のバッテリー、魔力を溜めるところですね。そこもほぼ満タンで、魔力が足りないから動かないと言うこともありません。ただ・・・」

「ただ・・・なんですの?」

 

 不安をありありと顔に出してリアス。

 

「あなたの生成する魔力がインナーに流れていません。つまり鎧に流れていないんです。

 鎧を動かすにはあなたと鎧が一つになって繋がっている必要がありますが、それが繋がっていないんです。

 人形操りの糸のようなものです。鎧を動かすにはあなたが糸を操る必要がありますが、あなたと鎧の間に糸が繋がってないのではそもそも操る事ができません」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 長い沈黙があった。

 カップに手もつけず、ヒョウエは次の言葉を待つ。

 この世界でも珍しい、機械式時計の音がカチコチと部屋に響く。

 時計の秒針が三回ほど回ったところでリアスが口を開いた。

 

「その、実はあなたの前にも何回か技師の方をお呼びしたのですが・・・そのうちの一人が同じような事をおっしゃっていました。私から鎧に魔力が流れていないと。

 黙っていて申し訳ありません・・・」

「構いませんよ。先入観を持たずに調べるのは大事な事です。

 それで、その方は他に何か?」

「いえ、特には・・・」

 

 ふむ、と考え込む。

 こう言う時はまず条件を絞り込まねばならない。

 身分違いで今までの魔導技師が言い出せなかったようなことも含めてだ。

 

「取りあえず二つ試してみたいことがあります。一つ目ですが、まずこの指輪をはめて頂けますか? どの指でもいいですよ」

「? はい」

 

 ヒョウエが左の小指から指輪を外し、リアスに差し出す。

 太めの金のリングに乳白色のオパールをはめたものだ。

 いぶかりながらもリアスは右の中指に指輪をはめる。

 

「それでは魔力を生成してその指輪に流し込んでみてください」

「わかりました・・・」

 

 次の瞬間、部屋がまぶしい光で満たされた。

 

「きゃあっ!?」

「うおっ!?」

 

 数秒で光が収まる・・・が、光に眩んだ目はすぐには元に戻らない。

 ネガとポジが逆転した視界の中で、リアスの手を小さな影が握っているのがわかった。

 握りこんだ手の隙間からまばゆい光がまだ漏れている。

 

「お嬢様、魔力を止めてください」

「注ぎ込んだ魔力を引き抜く感じでやるとやりやすいですよ」

「は、はい」

 

 試行錯誤していたようだが、数秒して光は止まった。

 

「大丈夫ですか、お嬢様、ヒョウエ様」

「え、ええ。ありがとう、ごめんなさい」

 

 光にくらんでいた目がようやく慣れてくる。

 その時にはカスミは既に元の位置に戻っていた。

 

 ショボショボする目でちらりとその顔をうかがう。リアスやヒョウエと違い、少なくとも見た目には全くあの光の影響を受けていないように見えた。

 

「まあそれはともかく、お嬢様はこの手の魔道具を扱い慣れてないので?」

「はい、そう言うものには余り頼るなと言う家風がありまして」

 

 先ほどとは別の意味で恥ずかしそうに俯くリアス。

 思わずヒョウエが眉を寄せる。

 

「魔導甲冑を操る『白のサムライ』の家系なのにですか?」

「だからこそです。力に頼っても溺れてはいけないと、戒める初代様のお言葉が残っていまして」

「なるほど・・・明治の男、いやサムライらしい物言いですね」

「お言葉は良くわかりませんが、質実剛健な方だったのは聞き及んでおりますわ」

 

 今度は微笑んでリアス。

 ヒョウエもつられて笑みを浮かべつつ頷いた。

 

「それはともかく、やはり普通の魔道具は問題なく扱えますね。あれだけの光を出せるあたり、むしろ魔力はかなり強い。この辺はさすがに冒険者族と言ったところでしょうか。

 それでもう一つ確認なのですが・・・『白の甲冑』は伯爵家の血筋のものでなくても操れるのですか?」

「っ!」

「ヒョウエ様、それはどういう・・・!」

 

 リアスとカスミが血相を変えた。

 

「落ち着いて! ただの確認です! ですが必要なことです!」

「・・・」

 

 両手を広げて強い調子で二人をなだめる。

 黙った二人に言葉を繋げる。

 

「まず問題なのはリアス様が魔力を生成できるがそれを魔道具や術式に注げない場合。

 これは今光の指輪を使ったことでないと証明されました。

 もうひとつは鎧の方に何らかの特殊なセキュリティ・・・つまり特定の条件を満たした人間しか使えないような仕掛けがある場合。

 この場合は認証を何とかごまかすなり条件を整えるなりすれば使えるようになります」

「・・・えーと、その」

「お話はわかりましたヒョウエ様。しかし白甲冑は初代様が真なる魔法の時代の遺跡から見つけ出したもの。使うための条件があるなど、ありえるのでしょうか?」

 

 説明に追いつかないのか口ごもる主の代わりにカスミが口を開く。

 やはり理解が早いと舌を巻きつつ、ヒョウエが頷いた。

 

「非常に珍しいことですがないとは言えません。

 肉体的特徴であったり、同じ組織に属しているという証であったり。

 血の契約を交わしている場合もあります」

「血の契約?」

「親と子は大概似ているし、犬から猫は生まれません。血の中にはそれを決める目印のようなものがあるんです。真なる魔法の時代にはそれを判別する方法があったんですよ。

 これを交わした魔道具は以降その契約者と同じ血を引くものにしか扱えなくなります。

 まだ契約していない甲冑と初代様が血の契約を交わしたのか、もしくはいにしえの時代に甲冑と契約した人が初代様と同じ血を持っていたのか、それはわかりませんけどね」

 

 ここで「?」とリアスが首をかしげた。

 

「初代様はオリジナル冒険者族ですわよ? この世界にご先祖はいらっしゃいませんわ」

「ええまあ。ほぼあり得ないことではありますが、ただ冒険者族自体は四千年前からいるわけですし、そのうちの一人が血を残してたまたまそれが初代様と血縁関係にある方だったら、ということです」

「ああなるほど」

 

 考えても余り意味はないですけどね、と肩をすくめる。

 

「それでですね。一度他の方、ニシカワの血を引かない方にこれを装着してもらうことは可能でしょうか。もちろん秘密裏に」

「っ・・・!」

 

 リアスが絶句した。

 ただし今度は言葉の意味を理解した上での絶句だ。

 

「それ、は・・・」

 

 白の甲冑を装着するための条件があるのか、あるとしたらそれは何なのか。

 それを探り出さないといけないと言うヒョウエの言葉は理解出来る。

 しかしそのために門外不出、一子相伝の家宝を他人の手に委ねてもいいのか。

 白甲冑を操る血筋、白のサムライを受け継ぐ血筋に誇りを持つべしと育てられた彼女にとって、大げさではなくこれはアイデンティティの危機であった。

 

「・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 かっち、こっち、と時計の音。

 ややあって、リアスが顔を上げた。

 

「カスミ。頼めるかしら」

 

 びくり、とカスミが震える。

 

「お、お許し下さい! そればかりは! そればかりは!」

「カスミ・・・?」

 

 思ってもいなかった強い拒否反応にリアスがあっけにとられた。

 黒髪の童女はぶるぶると震えながら頭を下げたまま動かない。

 ヒョウエとリアスが顔を見合わせた。




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