毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~ 作:ケ・セラ・セラ
天地が一回転するような感覚。
ジェットコースターで宙返りと言うか、鉄棒で逆上がりした時のようなというべきか。とにかく三半規管の異常をこらえながらも、三人はアルテナにしがみついて「落下」の衝撃に耐えた。
アルテナも僅かにふらついているところを見ると、彼女もそうした現象の影響を受けているのだろう。
それでも何とか体勢を立て直し、翼を羽ばたかせて着地する。
「ぐええええええっぷ!」
スケイルズが飛び降りて朝食の中身をぶちまける。
ソルもその寸前といった状態で、クロウも結構なむかつきを覚えている。
人間に戻ったアルテナも不快そうな顔をして胸の辺りを抑えていた。
「・・・で、ここどこだよ?」
しばらくして、落ち着いたのかスケイルズが立ち上がってあたりを見回した。
周囲は龍モードのアルテナが動き回れるほどの、かなり広い岩の洞窟である――様に見える。
ただしクロウの魔法の明かりに照らされた壁も天井も床も半透明であり、強く押すと指がずぶりとめり込んだ。
見た目に反して岩や水晶のように固くはない。むしろ固いゼラチンのような感じと言うべきか。
不思議な事に同じく半透明な地面を踏みしめる足裏からは、しっかりした感触が伝わってくるのだが。
スケイルズがキョロキョロと周囲を見渡した後、最後に上を見上げた。
「俺達、地面の裂け目から落ちてきたよな? どこから落ちてきたんだ? それとも裂け目はもう閉じちまったのか?」
「閉じたのは正解だが、落下したんじゃなくて多分転移だと思う。地面の裂け目じゃなくて空間の裂け目だったんだ」
「あ・・・するとこの吐き気は、ひょっとして転移酔いという奴か?」
「多分」
ソルの疑問に頷いて肯定の意を返す。
瞬間転移では前後左右や上下、気圧の変化、あるいは単純に転移そのものによって感覚や三半規管の混乱が起こることがあり、これを俗に転移酔いという。
「でもマリーチ先生の転移じゃそんなことなかったぜ?」
「あの人は転移の術のエキスパートですからね。運び方が丁寧なんでしょう。
僕達は箱に入れられたヒヨコみたいなものです。丁寧に運ばれるのと乱暴に運ばれるのでは、それは違いも出るでしょう」
「どうせなら丁寧に運ばれるヒヨコになりたかったぜ・・・」
口元をぬぐうスケイルズに苦笑。
「どうでしょうね。僕達をここへ呼びつけた何者かが、丁重におもてなしするために呼んだとは思えませんし」
「害するために呼んだ可能性の方が遥かに高いだろうな――まさか、お前が言っていた『まだ何かある』というのはこれか? 一連の事件に更なる黒幕がいたと?」
首を振る。
「わかりません。可能性はあると思いますが、予断は持たない方がいいと思います」
「そうか」
頷いて考え込むソルに代わり、またスケイルズ。
「で、これからどうするんだよ? 遭難した時には変に船を漕がずに体力を温存するってのが基本だけど・・・この場合はどうなんのかな」
漁師の村出身らしい心得を口にするスケイルズ。
少し考えてクロウが口を開く。
「今回も基本的には間違ってないと思います。先生方が、特に瞬間転移のエキスパートであるマリーチ先生と、探査魔法の権威であるファルタル先生がいるわけですし、救助に来てくれる可能性は高いでしょう。
ここが霊界だとしても、それはそれで召霊術のエキスパートであるスィーリ先生がいます。
だからここを下手に動かずに救助を待つのが上策・・・のはずなんですが」
言葉を区切って洞窟の奥の闇に視線を飛ばす。
冒険者としての懐かしい感覚。
闇の奥に潜むモンスターの気配。
「だよなあ! こう言う事する奴が、送り込むだけで済ませるわけがないよなあ!」
「くそっ、弓を持って来れば良かった!」
頭を抱えるスケイルズに、舌打ちしてナイフを抜くソル。
「スケイルズ、銛は使えます?」
「え? ああ、多少は」
「オーケイ!」
クロウが地面に両手をついて術式を発動する。
「"
「なんだ、どうした?」
術式に従い、クロウが望んだ物質に変性されるはずの地面が変化しない。
その間に、闇の中の気配は黒い熊とも犬ともつかないような獣の姿をとって闇の中から這い出してきていた。
その数は見えるだけで三十体を越している。
「くっ」
『のけい』
首を突き出したのは、再び龍に変じたアルテナ。
大きく開かれた口から、次の瞬間めくるめく虹色の光が飛び出した。
「!?」
悲鳴を上げる間もなく、獣たちが七色の光芒に飲み込まれる。
黄金の龍が吐き出す虹色のドラゴンブレス。
一瞬のことだったが、光の吐息が途切れた時、黒い獣たちの姿も気配も完全に消滅していた。
「すっげ・・・」
「これが・・・龍の吐息か・・・」
呆然とするのはソルとスケイルズ。
一方クロウは何かに気付いた様にアルテナを見上げていた。
『ん、なんだ?』
「すいません、ちょっとそのまま」
一声かけるとクロウはふわりと浮き上がって、アルテナの背中に手を当てた。
そこには先の探索以来つけたままの(人間態の時にどこに行っていたかは知らない)鞍と馬具。
「"
「"
「"
呪文を連続して発動すると鞍が形を失い、弓と矢筒、数十本の矢になる。
続けて手の中の杖に同じように発動すると、学院から支給された術師の杖は頑丈そうな三つ叉の銛に変わった。
「はい、ソルは弓を、スケイルズはこれを使ってください」
「ちょ、おまっ・・・! それ学院の・・・術師の証の・・・!」
銛を渡されてパニックに陥るスケイルズ。ソルも手渡された弓に気付かないかのように呆然としている。
「しょうがないでしょう、後で戻しますよ。ここを生きて出られたらの話ですけど」
「・・・そうだな」
苦悩の表情でソルが矢筒を肩にかける。
納得は行かないながらも、スケイルズも銛を握り直した。
それを興味深げに見ていたアルテナが人間の姿に戻る。
「なるほど、便利な物だな」
「アルテナはどれくらい今のブレスを吹けますか?」
「二回か三回かな。それ以上吹いたら疲れて寝てしまうだろう」
「多用は出来ませんか。なるべくあなたのブレスは温存で」
「よかろう」
溜息をつくヒョウエの手の中には、頭のない五寸釘のような、尖った鉄の棒が数本。
ソルの弓を変性するついでに、普段使っている金属球の代わりとして作ったもの。
しかし鍛え方次第で硬度も剛性も青天井の
「ともかくスケイルズと僕が先頭、アルテナと弓のソルは後ろで、注意しながら進んで行きましょう」
「わかった」