毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~ 作:ケ・セラ・セラ
歩き始めてすぐ、クロウが思い出したように三人の方を振り向いた。
「そうそう、今僕はいつもの半分以下の力しか使えませんからそのつもりで」
「えっ」
「そうか、例の青い鎧だな」
「ええ。大丈夫だとは思うんですが解除してまた島が裂け始めたら責任取れませんし」
「あー」
もう一度溜息。
現在《使命》の島の裂け目は全魔力の半分以上をつぎ込んだクロウの念動によって閉じられた状態だ。これを解除した時どうなるのか、まだわからない。それに口には出さないが《使命》の島はソルの故郷でもある。そういう意味でも青い鎧は解除できなかった。
「これ以上何も出てきませんよーに・・・」
もちろんスケイルズの願いは叶わなかった。
先ほどの黒い獣のような怪物、トカゲのような何か、プルプル震える巨大なゼリーのような何かと、次々にモンスターと遭遇する。
魔力を込めた矢や念動の釘を打ち込み(もちろん矢や釘は可能な限り回収する)、場合によってはヒョウエが最近覚えた"
「"
"
対して"
クロウとしても出来れば覚えておきたかったのだが・・・。
「どうもね、何かを撃ち出す系統の術は苦手なんですよね。覚えられればそれは覚えたいんですが・・・弓や投げナイフもあんまり才能はないって言われたんだよなあ」
「その釘を撃ち出すのはうまく行ってるし、そうでなくても念動の術はかなり使いこなしてるように見えるが」
「あれは腕の延長なんですよ。矢を撃ってるんじゃなくて銛で突いてる感じに近いんです、僕の感覚としては」
「ふーむ」
実際下の世界でモリィに雷光銃を借りて試射させて貰った事があるのだが、「微妙」の一言で切り捨てられている。
「誰かに当たるような状況で撃つなよ?」ともだ。
まあ的には当たるが中心に当たらない程度の腕なので、彼女の評価は概ね正しい。
「お主らそのへんにしておけ。おかわりじゃぞ」
「!」
アルテナの声が雑談を終了させた。
「くそ、またかよ!」
前衛を務めるスケイルズが悪態をついて銛を構え直す。その視線の先には、洞窟の分かれ道から出てくる、手足の生えた魚のような怪物の群れがいた。
戦いは長く続いた。
途切れずに襲いかかってくる魚の怪物、加えて後方からの怪物の足音に気がついてクロウは突破転進を選択する。
「前の敵を突破して左側の分かれ道に逃げ込みます! アルテナ、ブレスを!」
「わかった」
一瞬だけ黄金の龍に変じたアルテナが虹色の吐息を叩き付けると、魚の怪物達は悲鳴も上げずに塵へ還り洞窟の壁も大きくえぐられる。
「今です!」
右の分岐路の奥に光る魚怪物どもの目を視界の奥に捉えながら、クロウ達は左への分岐路に走り込んだ。
「はあ、はあ、はあ・・・!」
走る、走る、走る。
後ろからの足音やうなり声、殺意や悪意と言ったものを感じながら必死に走る。
常人離れした身体能力を持つアルテナや魔力で肉体を強化できるクロウはともかく、ソルとスケイルズは既に限界が近い。
「・・・しめた!」
急に視界が開けた。
魔法の明かりに照らされたのは差し渡し50から60メートル、ちょっとした運動場くらいはあろうかという広い空間。彼らが入って来た物を含めて二つの開口部がある。
「あそこの端に!」
「おい、逃げ場がねえぞ!」
「挟み撃ちよりはまだしもです!」
「ちっ!」
ソルが舌打ちしつつも、一行は壁を背にして陣形を整える。
それとほぼ同時に怪物達がなだれ込んできた。
「!」
アルテナが黄金の龍に変じる。頭から尾の先まで10m、尻尾を抜いても5mほどの巨体であるが、この広い空間であれば暴れるのに不都合はない。
「アルテナ! 無理はしないで!」
『
真なる竜の咆哮が洞窟に響いた。
人と龍と怪物の悲鳴と怒号が響く。
怪物の半分ほどはアルテナが抑えてくれているが、残りはクロウ達三人で相手にせねばならない。
「くそっ! 魚は釣られて大人しく晩飯になっとけ!」
「飢え死にしそうになってもこいつは喰いたくないな!」
体中傷だらけのスケイルズが銛で魚怪物を突き伏せる。
その隣では矢を撃ち尽くしたソルが魔力を込めたナイフで奮戦していた。
念動で矢を回収しようにも、クロウでさえその余裕がない。
思いっきり振り回せばいい普段の金属球と違い、今使っている釘は方向を定めて、しかもある程度正確に狙いをつけなければ有効打を与えられない。
次から次へとお代わりが来るこの状況では、仲間のフォローに精一杯だった。
それから更にしばらく経ち彼らから見て左奥、入って来た開口部からまた新たに怪物の群れが現れる。今度は2mはあろうかという巨大なクワガタの群れ。
それらがおおばさみをガチガチと鳴らして次々飛び上がる。
『
「ブレスはダメです! ここでアルテナに倒れられたらもたない!」
『
口を開いたアルテナを制止するが、それでどうにかなるものでもない。
あれらに空中から襲いかかってこられたらクロウが対応するしかなく、そうすればスケイルズ達への圧力が倍加する。
どうすべきかと一瞬考えたクロウを、ソルの叫びが叩いた。
「クロウ! あの鎧を解除して全力を出せ! 裂け目のことは気にするな!」
「ソル!?」
「おいでも解除しちまったらお前の故郷が・・・!」
「すぐに裂けるものでもない! もう大丈夫な可能性だってある!」
「ですが・・・」
「やれ! クロウ! やってくれ! 頼む!」
血を吐くようなソルの叫び。彼とて言いたくてこんな事を言っているわけがない。
(だが・・・それでも・・・!)
それでも、一つの島が滅ぶかどうかと言う決断は重い。
どうにかならないかと思案を巡らせて、その瞬間。
「!?」
彼らから見て右側、もう一つの開口部のほうから極太の魔力光がほとばしった。
それは洞窟を横断し、半数近い怪物どもを一挙に焼き尽くす。
「これは・・・!」
そしてクロウは、否、ヒョウエはそれに見覚えがあった。
「騎兵隊だぁ!」
耳慣れた声と共になだれ込んでくるのは三人の冒険者。
「チェェェェェェェイッ!」
右手の刀を「∞」の形に振るい、怪物どもを次々と斬り伏せる白い鎧の騎士・・・いや、サムライ。
「はっ!」
虹の七色に光る七つの分身となって怪物どもを牽制し切り裂くメイドの童女。
そして右手の雷光銃を乱射し、そのことごとくが正確に怪物どもの急所を貫くガンマン。
「毎日戦隊エブリンガー、参上だっ!」
鬱憤を晴らすようなモリィの快哉が洞窟に響き渡った。
「RUNNER」。
ただし高橋名人のほうの(ぉ