毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~ 作:ケ・セラ・セラ
「ああ、そう言えば」
そう言ってモリィが取り出したのはヒョウエの「隠しポケット」付きの肩掛けかばん。
中から出てきたのは、ヒョウエ愛用の
「おお!」
喜色を浮かべ、懐かしそうな表情でクロウがそれを手にする。
「いやあ、やっぱりこれがあると気分が違いますねえ。金属球も?」
「ああ、ホルダーごと中にあるぜ」
「ですか」
いそいそと中からホルダー付きのベルトを取り出すクロウだが、モリィの言葉でその手が止まった。
「それでだな、今思い出したんだけど・・・婆さん『迷う様なら杖で決めろ』ってさ」
「杖で? 倒した方向に進めとでも言う気か?」
「いや何かの術式が付与されてるんじゃないか?」
「・・・あっ」
そんな会話を交わす友人たちをよそに、クロウが何かに気付いた様な顔になる。
「どうした?」
「いや、遠回しですけどヒントはくれてたみたいですね。まあ因業ババァと邪神ババァは取り消しませんけど」
ちょっと悪い顔で少年が笑った。
「どうです?」
「おおおおおおお、すげー!」
「見るからに"
クロウがいつもの魔術師ルックに着替えると友人たちから歓声が上がった。いや、もうクロウではなくヒョウエと言うべきか。
金糸銀糸で複雑な魔術的紋様を刺繍した青い絹のローブに、同様のつば広帽子。
帽子や帯に取り付けられた金の環や宝石。
手にはびっしりとルーンが刻まれた
飾り気のない鋼色の輝きを放っているのが、逆に実用品としての凄みを感じさせる。
「でしょう、でしょう」
「それで? 着替えたのはいいけどどうするつもりだ」
得意げなヒョウエに水をさすモリィの声。相棒をちょっと恨めしげに睨んだ後、呪鍛鋼の杖を両手で持ち上げる。
「こうします」
杖でとん、と地面を突いた瞬間、地震が起きた。
「うおっ!?」
「きゃあっ!」
「うわ!?」
「うわあああああああああああああ!?」
ゲマイの都クリエ・オウンドでも見せた最大出力での
震度3を越える揺れがその場の全員を襲い、口々に悲鳴が上がる。
三人娘は滅多に地震の起こらないメットー出身。スケイルズとソルも同様だ。
しばらく目を閉じて集中していたヒョウエが目を開ける。
「見つけましたよ」
「そうかい」
「あいたっ! 何するんですか!」
モリィの拳骨がヒョウエの頭に落とされる。
少年は当然抗議するが少女は意にも介さない。
「やり過ぎだ、馬鹿! せめてやる前に一言断れ!」
「いやでも・・・」
「でもじゃねえ!」
モリィの剣幕に押されるヒョウエを他の四人が呆れたような、生暖かいような目で見ていた。
ひとしきり文句を吐いてようやくモリィが落ち着いた。
「で、どうすんだよ。悪党のいる所まで直通か?」
「ですね」
「・・・お前のことだから、道を全部暗記したとかそういうんじゃねえよな?」
「わかってるじゃないですか。まあ構造は大体把握しましたけど」
半目で睨むモリィに、にこやかに微笑むヒョウエ。
「・・・あっ」
「ああ・・・」
「「?」」
リアスとカスミが何かを察した顔になる。対照的にスケイルズとソルはハテナマーク。
「どういう事だクロウ?」
「すぐわかりますよ」
「まあなんだ・・・運が悪かったと思って諦めろ」
ソルの肩を気の毒そうにモリィが叩く。
「???」
「それじゃ行きますよ」
スケイルズとソルが首をかしげると同時に、洞窟の床がひび割れ、一瞬にして崩落する。
「うわああああああああああああああ!?」
「ぬおおおおおおお!」
「やっぱりかよ!」
少年二人の絶叫と少女のツッコミと共に、一行は闇の中へと落ちていった。
「ひえええええええええええ!」
「・・・・・・・・・!」
スケイルズの悲鳴が響く中、落下は続く。
ソルは悲鳴こそ上げなくなったが、それでも顔は引きつりっぱなしだ。
砕けた霊的物質の岩のかけらがぶつかったり穴の壁面に激突したりすることもなく、通常の落下と違って重力加速度が付いていない事にも気付いていないが、まあそれが普通の反応だろう。
一方で予測していた面々はそれなりに平静さを保っている。
自分たちを守る念動壁の表面を突き、くるりと空中で一回転してリアスに近づくカスミなどはいい例だ。
「お嬢様、大丈夫ですか?」
「『仔細無し。胸座って進むなり』ですわ。サムライたるもの、常住坐臥心を乱してはなりませんもの」
「はい、お嬢様」
僅かに微笑んで礼をするカスミ。
言葉通りリアスは完全に戦闘モードに入っており、怯えや驚愕と言ったものは全く見られない。
慣れもあるだろうが、彼女の言葉通りサムライの資質であると言えた。
同様に戦闘モードのモリィが、回りをキョロキョロ見回しているアルテナに気付く。
「おめーも動じてねえな」
「わらわは龍ぞ? 落ちるくらいはどうということもない。人の姿で落ちるというのは初めてではあるがな」
「なるほどそりゃそうか」
「あいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!」
少女たちの会話をかき消すスケイルズの悲鳴。
その余韻を後に引き、一行は更に落ちていく。
「ぎゃあああああああああああああああああああああ・・・・・・・・・・・・あれ?」
いつの間にか落下は止まっていた。
ふわりとした感覚と、体を支えられるような感覚。
足が地面につき、ふらふらとよろめく。
呆れた顔のソルがそれを支えてやった。
「おい大丈夫か? 結局落ちている間中ずっと悲鳴を上げやがって」
「いや驚くだろう! って、ここどこだよ!?」
くい、と無言であごをしゃくる。
それに釣られてスケイルズが正面を見たのと、広い空間にその声が響くのが同時。
「舞台裏へようこそ役者と観客の皆様! ですがまだ劇は終わっておりません!
今しばらく、今しばらく舞台にお留まり下さい! 観客の方は座席にお戻りを!」
気取った様子で一礼するのは燕尾服を身につけた小太りの中年男性。
手にはシルクハット、頭頂部は随分と薄くなり、顎には綺麗に刈り整えたヒゲを生やしている。
ただし、人には有り得ざる特徴が一つ。
額の中央から生えた、ねじくれた一本の角。
いじけた枝のようなそれは見苦しいサイの角の如く。
「・・・悪魔?」
「いかにもでございます。我が名は悪魔ヴェヴィス! 本来の名前は長い上に皆様では発音できませんでしょうから、どうぞ気安くヴェヴィスとお呼びください」
そして悪魔ヴェヴィスは再び気取った一礼をした。