毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~ 作:ケ・セラ・セラ
ヒョウエの、巨大光剣による横薙ぎの斬撃。
白の甲冑を身につけたリアスとまでは言わないものの予想外の速度での踏み込みがヴェヴィスの目を見張らせる。
「ぬっ!」
後ろにかわせず、咄嗟にヴェヴィスが宙に飛ぶ。
その足元を、空気中のエーテルとエクトプラズムの壁を切り裂いて光の刃が通過する。
霊質破壊の術式がエーテルを焼く、表現しがたい臭い。
天井に張り付いた瞬間、今度は地面に向けて全力でダイブ。
直後、切り返しの光剣が天井のエクトプラズムをえぐった。
着地したところに襲いかかったのが雷光銃の三連射。
空間に広がる波紋と共にまたしても無効化されるが、今度はヴェヴィスの肉体にごく近いところまで届いている。
整えられた顎髭の先が僅かに焦げた。
三度目の斬撃。
流石に慣れたか、今度はやや余裕を持ってかわしつつ波動を放つ。
四回目の斬撃を放とうとしていたヒョウエが光の剣でそれを迎撃し、エーテルの波動は霧散して空気中に散った。
その隙に後退して間合いをとるヴェヴィス。
雷光銃の三連射がまたしてもそれを襲うが、今度は余裕を持って防御する。
ヒョウエも追わず、状況は一時停止した。
「ちっ」
モリィの舌打ち。
ヒョウエが魔力の節約だろうか、光の剣を縮めて杖を構え直した。
規格外サイズの斬馬刀が今は薙刀くらいのバランスになっている。
今の攻防に絡めなかったリアスとカスミに視線。
「ヒョウエ様?」
「少なくともあいつに有効なのはわかりましたが、あれだとリアスとカスミが動けませんからね。
術式はこのくらいのサイズにして、あいつの波動の妨害に徹した方がよさそうです」
「次は私どもにも出番を頂けると言うことですわね」
笑みを浮かべるリアスとカスミに、こちらも微笑んで頷く。
「期待してますよ」
「応えてご覧に入れましょう」
僅かに頬を染め、それでも頼もしげに頷くリアス。
カスミもまた頷いたのを確認したところで後ろから声がかかった。
「クロウ、"
「助かります。カスミにかけてやってください」
頷いてソルが詠唱を始める。
「あ、あの、俺は・・・」
「スケイルズは後方警戒を。それと魔法の明かりを絶やさないでください」
「わ、わかった」
遠回しに戦力外通告されて、落ち込みつつも頷くスケイルズ。
本来彼らは学院に入学して一年程度の初級者である。
空気や水を綺麗にする術とか、着火とか光とか弱い霊を呼び出すとか、その程度の術を習得するのがせいぜいなのだ。
"
「・・・くそっ!」
だがそれでもこの場でただ一人、何の役にも立たないというのは悔しい。
手に握る銛、クロウの杖が形を変えたそれを、スケイルズは強く握りしめた。
「せやっ!」
「かあっ!」
戦闘はクロウの踏み込みと、ヴェヴィスの放つ波動から再開した。
光の刃の大薙刀を振りかぶったヒョウエが迫り来る波動にそれを振り下ろす。
エーテルを伝わる波が真っ二つに裂け、津波のように押し寄せていた波動が乱れて霧散した。
(やはり)
"
ヴェヴィスの波動は球形のバリア・・・風船のようなものだ。
全身を包む波動は敵を薙ぎ払う鎚であり、受ける攻撃を止める盾。
攻防一体の能力だが逆に言えばバリアを破壊された場合、攻撃手段と防御手段を同時に失うと言うことでもある。
光の刃で切り裂かれ、エーテルの波動が破れた風船のように力を失う。
間髪入れず斬り込んでいくリアス・カスミと、右側に回り込んだモリィによる雷光銃連射。
「ちっ!」
舌打ちしたヴェヴィスが新たな波動を生み出し、目の前のリアスとカスミに向けて叩き付ける。その顔に先ほどまでの余裕はない。
雷光銃の連射が波動の盾に阻まれて波紋を残して消失。
波動はそのままリアスとカスミを吹き飛ばし・・・とはならなかった。リアスとカスミに続いて踏み込んだヒョウエの突きが、再び風船に穴を開け、破裂させる。
すかさず踏み込むリアスとカスミ。
「ひっ!」
最後にギリギリで放った波動がリアスの刀を弾いた。僅かに遅れてカスミの忍者刀を弾き、二人の体に届く寸前にまたしてもヒョウエの薙刀に波動が切り裂かれる。
それを見ることもなく、波動を放った瞬間にヴェヴィスは後ろ上方に跳んでいた。
「こしゃくな!」
「悪あがきですね」
それを追ってリアスとカスミも跳ぶ。
元よりカスミは忍び、跳んだり跳ねたりは得意中の得意で、しかも今はソルの"
リアスも伝説の魔導甲冑"白の甲冑"を装着している身だ。5m程度の跳躍は何でもない。
そしてヒョウエもだ。術式ではないが、黒瑪瑙の城で見せたように体に魔力を巡らせることによって身体能力を大幅に強化することが出来る。
「ちっ、跳ね回りやがって」
舌打ちするのはモリィ。
今や戦いは空中戦に移行していた。
跳びながら有利な位置をとり波動を放って攻撃しようとするヴェヴィス。
矢面に立つヒョウエがエーテルの波動を切り裂いた瞬間、すぐに斬り込めるように待機するリアスと、ヴェヴィスを牽制して軌道を限定しようとするカスミ。
モリィもまた波動のバリアがなくなった瞬間に雷光を叩き込むべく、機会を窺っている。
放たれる波動。光の軌跡を描く光剣。閃く鋼の刃。空を裂く雷光。
めまぐるしく跳んでは跳ねて、体を入れ替え交差して攻防が繰り返される。
激しい動きにダンスのステップを完璧に踏み続けることは出来ず、ヴェヴィスの体にもヒョウエやカスミの体にも、いくつものかすり傷が出来ていく。
例外は重装甲に身を包んだリアスだけだ。
「この・・・っ!?」
じれてきたのか、大技を放とうとしたヴェヴィスが愕然とする。
後ろに跳ぼうとした自身の体が何かにぶつかり、動きが止まった。
背中に感じたのは小さく固く丸い何かの感触。
(・・・!)
脳裏によぎったのは目の前に迫る術師が先ほども旋回させていた金属球。
身をよじると同時に、無理を押して波動を連打するがもう遅い。
波動を突き破り、光の刃がみぞおちに吸い込まれる。
ほとんど同時にリアスの刀が右腕を切り飛ばし、右目にカスミの棒手裏剣が、左脇腹にモリィの雷光が三連射、撃ち込まれたその瞬間、
ヒョウエの背筋に悪寒が走った。