毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~   作:ケ・セラ・セラ

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09-40 黒瑪瑙、炎の水晶、月長石、劇場

「ぐ・・・GAAAAAAAAAAAAAA!」

「!」

 

 魔力を念動に回し、自分とリアスカスミを守ると同時に後方に退避させる。

 次の瞬間、今までとは比較にならないエーテルの波動が爆発的に襲いかかって来た。

 

「かぁっ!」

 

 再び杖の対霊術式に魔力をスイッチ。

 現在出しうる全力の光の刃。

 それでも波動を一撃で切り裂くには至らない。

 

「カスミ! 私に掴まって! モリィさんも!」

「は、はい!」

「わぁった!」

 

 白の甲冑の力で踏ん張り、モリィとカスミはそれに掴まって吹き飛ばされるのを免れる。

 

「ぐっ!?」

「うお!」

 

 それとほぼ同時に光の剣がエーテルの波動を焼き切る。

 だがその余波ですら先ほどの波動に匹敵する威力。

 集中していたソル達が吹き飛ばされてゴロゴロと転がった。

 

「スケイルズ! ソル!」

「だ、大丈夫!」

「こっちも・・・だ!」

 

 ほっとして再び前に視線を戻す。そこにいたのは身長4mほどの毛むくじゃらの巨体。牛の角、豚の鼻、コウモリの翼、ゴリラの様な大雑把な人型、足には山羊のひづめ。

 

「テンプレートな悪魔ですねえ。それとも悪魔ってみんなこんな姿なので?」

「ダマレ! 大人シク逃ゲレバ良カッタモノヲ!

 ダガマアイイ。既ニ目的ハ達シテイル。今頃貴様ノ具現術式ハ我ラノ仲間ノ手ニ落チテイル。

 貴様ガココデ死ンデモ支障ハナイ! ココカラハ全力ダ!」

「なんだと!?」

「青い鎧を・・・!?」

 

 三人娘とスケイルズたちがざわめく。

 だがその中でヒョウエだけは冷静だった。

 

「なるほど、地面の中に置いてきた奴とリンクが切れてますね。

 だけど忘れてません?」

「何ガダ? 命乞イノヤリ方カ?」

 

 余裕を見せてこちらを見下すヴェヴィスに大仰に肩をすくめて見せる。

 

「いえ、僕が今まで全力を出せなかったのは青い鎧に魔力を注ぎ込み続けていたからですし。

 それがなくなったと言うことは今100%の力を発揮できるというか、何なら青い鎧を呼び出すことも出来るんですが」

「アッ・・・」

「・・・」

「・・・」

「・・・」

 

 沈黙が降りる。

 フランス語ではこう言うのを「天使が通り過ぎた」というが、だとしたらよほどインパクトのある天使だったのだろう。

 

「エート、ソノ、ヤッパ今ノ無シデ・・・」

「通るかンなもんっ!」

 

 モリィの渾身のツッコミと共に、悪魔ヴェヴィスはヒョウエ全力の対霊術式で叩き伏せられた。

 

 

 

「あがががが」

 

 人間の姿に戻ったヴェヴィスがガクガクと震えている。

 その体を上から下まで何重にも締め付けているのは光の輪。

 杖の対霊術式が形を変えた、間に合わせの拘束術式だ。

 

「さて」

 

 ヒョウエが一歩歩み寄ると、転がったヴェヴィスがびくりと震えた。

 

「色々気になる事を言っていましたね。ここが作られた大劇場(アリーナ)であるとか、青い鎧を持っていったとか。

 古く新しい戯曲というのも少し気になりますね」

「・・・」

 

 悪魔は無言。

 とん、とヒョウエが杖を突くと再びその体がびくりと震えた。

 

「話す気はないと考えても?」

「・・・あがっ! あががががが!?」

 

 無言を貫こうとしたヴェヴィスが突然悲鳴を上げ、びくんびくんと体がはねた。

 よくよく観察すれば、彼をいましめる光の輪から微細な雷のようなものがほとばしっているのがわかっただろう。

 モリィがニヤニヤしながらヒョウエの顔を覗き込む。

 

「おー、活きが良いな。釣りたてのマナス魚みてぇに良く跳ねてら。

 何やったんだ?」

「・・・」

 

 同じく笑顔でとん、とヒョウエが杖を突くと雷が収まり、ヴェヴィスがぐったりとする。

 

「拘束術式からちょっと霊体破壊のエネルギーを流し込んで上げたんですよ。

 ごく弱いものですけど、尋問には最適です」

「今の威力はどれくらいなのですか、ヒョウエ様?」

「最弱です」

 

 ヴェヴィスに聞かせる意図もあったのだろう、ヒョウエがそれを口にすると、果たしてぐったりしていたヴェヴィスの体がびくりと震えた。

 

「さて、どうしますヴェヴィス氏? どのみち先生方に助けに来て貰えるまではここでカンヅメなので、時間は一杯ありますが」

「カンヅメ?」

「あれだろ、冒険者族が作ってる魔法の携帯食品」

「ああいえ、この場合は閉じ込められて出られないと言うことです」

 

 この使い方の場合、本来は「旅館」に「詰めこむ」ので「館詰め」、転じて「カンヅメ」であるらしい。

 閑話休題(それはさておき)

 

「・・・」

 

 脂汗を流しながらも無言を貫くヴェヴィスに、ヒョウエが笑顔で頷く。

 

「中々強情ですね。では続き行きましょうか。3、2、1・・・」

「待って! 待って下さい! 喋りますから!」

「けっこう」

 

 あの時のクロウは怖かった、にこやかな笑顔があれほど恐ろしく感じたのは初めてだ、とソルは後に語ったという。

 

 

 

「まず世界に穴を開けようとしていたのがあなたたちの計画だったのかどうかお尋ねしたいのですが」

「え、ええ。そこから計画通りですとも。

 まずですね、幻夢界のあなた方がいた世界はですね、物質界の過去なんですよ。まだ神代の、世界が小さかった時代のものですね」

「やはり」

 

 何となく察してはいた。

 創世の八神の名を冠した島々。古代神話に語られる、原初の龍が変じた最初の大地。

 学院の教師たちの名前。101人という数。

 学院で教えていた、系統魔法ではない魔術。

 姿を現さない学長の存在。

 真の龍という単語が存在しないスケイルズとソルの反応。

 

(101人というのは一人多いですけど、そう言う事も有り得ますか)

 

 そこでぽん、とスケイルズが手の平を打った。

 

「あ・・・ひょっとしてあれか、魔術的再現ってやつか?」

「は、はいそうです。幻夢界は過去も現在も未来も、あるいは現実も不安定な世界なので、それなりの力を持っていれば過去の世界を、そしてそこで起きたことを丸ごと再現するのも不可能ではありません。

 炎の水晶(ファイヤークリスタル)の妖魔、黒瑪瑙(ブラックオニキス)の妖魔、月長石(ムーンストーン)の妖魔も多少手は加えましたが、過去の世界に実在していました。

 あなたがたが経験した出来事も、基本的には同じ流れで事件が起こっていました」

「ふーむ。他はともかくそれで、月長石の妖魔を使って世界に穴を開けようとしていたわけですか。何故です?」

「あー・・・そこはちょっと違うんです。月長石の妖魔は過去の世界でも実際に世界を割ろうとしていましたが、学院の教師スィーリたちによって阻止されました。

 実際に世界に穴が開いたのはその後のことです。今のこれも過去の再現なんですよ」

「あ・・・神代の『大崩落(グレートフォール)』ですか!?」

「あ、はい、人間たちはそう呼んでるようですね」

 

 三人娘が顔色を変えた。対称的にスケイルズとソルは首をかしげている。

 

「大崩落ってあれか、世界が壊れかけたやつか!」

「ええ。悪魔によって世界に穴が開き、創世の神々はそれを修復するため、そして悪魔を近づけないために世界の外に旅立ちました。

 その後を継いだのが八神の長兄"祭壇"の弟子である"真なる魔術師(トゥルー・ウィザード)"たち。100人の弟子たちのうち99人は神となって天に昇り、弟子たちの長兄である一人は地上界に残って人間たちを見守っていると」

「マジか!? んじゃ世界壊れるの!?」

「いや、クロウ達が未来の人間だというなら、世界は続いていくんだろう。だが百人の弟子というのはまさか・・・」

「それでですね、『大崩落』も実は悪魔によるものではなくてですね――が、がががががが!?」

「!? ヴェヴィス!」

 

 突然痙攣し始めたヴェヴィスが苦悶の悲鳴を上げる。

 

「お、お許し下さい! 裏切ってなどおりません! 重要な事は何も・・・ががががが!」

 

 バンッ、と音がしてヴェヴィスが破裂する。

 血しぶきも肉片もまき散らされることはなく、僅かな霊的物質の煙だけを残して、あっけなく悪魔は消失した。

 

「!」

 

 険しい表情でヒョウエが振り向く。

 

「馬鹿ねえ。それだけ喋れば十分よ。この役立たず」

「え・・・」

「クリス・・・先生?」

 

 スケイルズとソルが呆然と声を上げる。

 

「ええそうよ。クロウ、スケイルズ、ソル。こんなところで会うなんて奇遇ねえ?」

 

 紫の紅をつけた唇でにっこりと笑ったのは、エコール魔道学院の召霊術副主任、クリスだった。

 




タイトルは章ごとのボス?の名前ですが、国産最初のコンピューターRPG「ブラックオニキス」のシリーズから。
ブラックオニキス、ファイヤークリスタル、ムーンストーン、アリーナです。
まあムーンストーン以降は出ませんでしたけどね!(ぉ

この世界缶詰は存在しますが、コストが洒落にならない高さ、かつ高位の魔法使いの職人芸がないと作れないので手作りで極々少量作られているだけです。
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