毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~ 作:ケ・セラ・セラ
紫色のアイシャドウ、紫の口紅、紫の服と靴。加えてオネエ言葉。
いきなり現れた男(?)に戸惑いつつも、三人娘は既に戦闘態勢に入っている。
「どなたか、よろしければこの方を紹介して下さいませんこと?」
「ミスター・クリス。魔導学院の教師の一人です。何やら危険な実験をしそうな感じはしたんですが・・・あなた、本当にクリス先生ですか?」
ヒョウエが睨むと、オネエ言葉で喋るこの奇人はいきなりケタケタと笑い出した。
「まっ、失礼ねっ! 私は本物のクリス・モンテヴィオラよ!
まあもっとも? あなたたちが知っている時点のクリスそのままでないのは事実だけど」
「・・・?」
沈黙が落ちる。目の前の人物が何を言っているのかわからない。
"
「クロウ、どういう事かわかるか?」
「・・・クリス先生がやっぱり一連の事件の黒幕だったってことでしょう。ただし、僕達の知っている魔導学院のクリス先生ではない。恐らくは数千年、あるいはそれ以上を生きて現代まで存在し続けた、『今のクリス先生』が犯人なんです」
「アラ、興味深い考察ね。どうしてそう言う結論に至ったのかしら?」
面白そうにクスクス笑うクリスを見やって、ヒョウエが再度口を開く。
「『時点の』と言うからには僕達の知っているクリス先生とあなたの差は時間でしょう。
ヴェヴィスの言った通り幻魔界に作られた
「うんうん、いいわいいわぁ。続けて続けて」
何が嬉しいのか、本当に楽しそうに続きを促すクリスはそこだけ見ればいい先生のようで、彼に教えを受けていたかもしれないクロウ達に複雑なものを呼び起こす。
そうしたものを振り払って、ヒョウエが言葉を続けた。
「もちろんただの人間は数千年も生きられません。ですが魔導で長命を得る事はできますし、《加護》や神の《使徒》になることによって不老不死になることもあります。
あるいは有限生命である人の肉体を脱ぎ捨てて
「!?」
「どういう事だよクロウ!? 先生たちが神って!」
「簡単に言えば、さっきソルが言ったようにこの後世界がいっぺん壊れかけて、創世の八神がそれを修理するためにこの世界を去りました。その後この世界を見守る立場になったのが〈百神〉――神になった学院の先生たちなんですよ」
教師の数が百一人だとか、魔術師の長兄は白ひげの老爺だったはずだとか色々引っかかるところはあるが、取りあえずそれはおいておいて話を続ける。
「続けますよ。『大崩落』では世界の底に穴が開いて、世界の外と繋がってしまいました。
これを幻夢界で再現するとどうなるか?」
「そうか、世界の外の代わりに、『下』にある私たちの世界と穴が繋がる!」
「カスミ正解。師匠が危惧していた世界の亀裂、幻夢界が物質界になだれ込んでくるという現象になります。
そして恐らく――本来の時間軸で世界が崩壊しかけた原因はクリス先生です」
「えっ」
「何?!」
絶句するスケイルズとソル。理解が追いつかないのか、明らかに混乱の表情。
一方でクリスは楽しそうにうんうんと頷いている。
「アノソクレス・・・例のクモ怪人や僕の召霊などで大きく開いた世界の割れ目が塞がりきらないうちに、クリス先生は召霊の実験を行った。
それが致命傷になったんでしょう。世界は崩壊しかけ、創世の八神が何とかそれを食い止めた。そして僕達の知る世界が改めて形成され、学院の先生方が神となって世界の管理を引き継いだ。
これは多分に僕の想像が入っていますが・・・ここに『クリス先生』がいるというのは今のクリス先生が昔の姿に変身している可能性もありますが、あなたは『過去のクリスそのままではない』と言った。
そのままではないと言うことはつまりクリス先生そのものではないにしろ、全く違う存在ではない。過去のクリス先生が実際に『ここ』にいたから、同一存在として『クリス先生』の皮をかぶることが出来たんじゃないですか?
つまりクリス先生は実験の結果世界の外に落ちた。だから神になれずに地上に取り残された――もっとも、懲罰としてそうなったのかもしれませんけどね」
視線をクリスに向ける。
くすくすと笑いつつ、「彼」はぱちぱちと手を叩いた。
「ブラーヴォ! ブラヴィッシモ! やっぱりあなた素敵よ! ああもう、あなたが当時の学院にいたら、手取り足取り何から何まで教えて上げたのに!」
「それはどうも。・・・僕も、あなたの授業を受けてみたかったですよ」
肩をすくめるでも、皮肉げに口を歪めるでもなく発せられたヒョウエ・・・いや、「クロウ」の言葉。
クリスは一瞬虚を突かれたように目を丸くして、少し寂しげに微笑んだ。
「うまくいかないものよねえ、世の中って」
「恐らく現在までの情報で察せられることはこのあたりが限界でしょう。それとも何か見落としがありますか?」
「そうね・・・」
クリスは少し考え込んでから首を横に振った。
「まあ教師としては百点満点を上げるべきでしょうね。あなたが予言者か読心術師か、さもなくば神託を受けられるのでない限り。これ以上を求めるならまず設問をいじらないとね」
ヒョウエが頷く。
「論理は極めて有効な手段ですが、自ずから限界がありますからね。
それで、もう二つ質問よろしいでしょうか?」
「どうぞ」
「まず過去のクリス先生は何のために世界の外に通じるような召霊の実験を行ったのかと言うこと。
そして今のクリス先生は何を目的にこのような再現をしたのかと言うことです」
頷いてからクリスは口を開いた。いつの間にか教師の顔になっている。
「まず最初の質問からだけど、それは単純に召霊術の進歩のためよ。
霊界も物質界もこの世界の一部、一つの家の中のいくつかの小部屋の一つ。
召霊というのは別の部屋にいる人に声をかけてこっちに来て貰う魔術なわけね。
でも私は思ったのよ。家の外にいる誰かにこっちに来てもらう事はできないか、そもそも家の外には誰が、あるいは何がいるのか? ってね」
そこで溜息を一つ。
「今にして思えばお師匠様に直接聞いておけば良かったのよ。スィーリの忠告も聞いておけば良かった。でもだめね。私は自分の好奇心に勝てなかったし、実験を禁止されるのが怖くて相談も出来なかったのね」
「確認しますが、あなたの――学院の先生方のお師匠というのは」
「ええ、"祭壇"よ。創世の八神の長兄にして知恵と魔術の神、創世のプランナー」
さすがに周囲がざわめいた。
スケイルズは目を丸くして、ソルは汗を流しながら納得したように頷いている。
ヒョウエが手を振って、ギャラリー達を静かにさせた。
「そしてその実験の結果、世界は崩壊しかけたわけですね」
「ええ。付け加えて言うなら私自身もね。本当にタイミングが悪かったわ。
お師匠様に相談した上で時期を見て行っていれば安全に行えたかもしれないのに。
まあでもそのおかげで貴重なデータも取れたのだけど。
ああん、ステキ! 本当に素晴らしかったワ! あんなデータが取れるなら、何度死にかけてもいいわネッ!」
「・・・」
恍惚の表情で肩を抱いてくねくねするクリス。
やはりこの人も学者馬鹿だなとヒョウエが半目になった。
Mr.Chris(ミスタークリス)はこち亀の秋本治先生のスパイアクション漫画。
007みたいなプレイボーイスパイが脳みそを20歳の女性の体に移植されて、大暴れする話。
お気に入りはキャリコM100を二丁乱射する殺し屋ナポレオン。スラップスティックコメディみたいな初期が一番好きだったw