毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~ 作:ケ・セラ・セラ
「それで、その貴重なデータというのは?」
「それは流石に教えて上げられないわね。私の弟子になるなら別だけど」
「遠慮しておきますよ。そんなことをしたら今のお師匠に殺されかねない」
「あらまあ、愛情の深いお師匠様ね」
肩をすくめるヒョウエにくすくすと笑うクリス。
「それに大体の想像は付きますよ――世界の外にいるものというなら。今までそこにいたような連中のことでしょう」
消失したヴェヴィスの跡を指したヒョウエの言葉に、クリスは無言で微笑む。
「それで二つめの質問だけど・・・それはあなたのお師匠様に尋ねなさい」
「理由をおうかがいしても?」
「そのほうが面白いからよ」
またしてもくすくす笑い。
お手上げというように肩をすくめて天を仰ぐヒョウエを見て、クリスの笑いが一層大きくなった。
「まあいいわ。他に質問はあるかしら、みなさん?」
笑みを収めたクリスが周囲を見渡すと、ソルが手を上げた。
「はい、ソルくん。何かしら?」
「ここにいる俺達は本当に俺達なんですか? つまり過去の俺をコピーしただけの影法師なのかと言うことですが」
「それは難しい問題ね。イエスとも言えるしノーであるとも言えるわ。
確かに過去に存在したソルはクロウという少年とは出会わなかった。
でもここにいるあなたも本物のソルだし、この魔術的再現によってあなたがクロウと出会った事は事実になったのよ――これでわかるかしら?」
「わかった、と思います。ありがとうございました」
「あなたも優秀ねえ。本当、教えられなかったのが残念だわぁ」
うーん、とくねくねした後、ぱん、と手を打つ。
「さて、座学の講義はこのへんにしておきましょうか。ここからは実地って事で。
正直この実験も八割方成功しているから、ここで終わらせちゃってもいいんだけど・・・得られる利益は最大化しないと、ネ?」
そしてクリスは先ほどまでとはまるで違う、耳元まで口が裂けたような邪悪な笑みを浮かべた。
「
笑みを浮かべるクリスの口から漏れた音に、ヒョウエとアルテナを除くその場の全員が目を見張る。
「
「クリス先生はそれこそ正真正銘の"
地中にあった青い鎧への魔力送信をカットして得た魔力の余裕で九個、全力の金属球をクリスに叩き付ける。
モリィは雷光銃を、リアスは全力の踏み込みを、カスミは閃光の術を、ソルは筋力強化の術を。
だがそれらがクリスの体に届く直前、洞窟が崩壊した。
「!?」
物理的に崩落したのかと一瞬思ったが違った。
周囲の霊的物質で構成された洞窟の壁面や天井に一面のヒビが走り、パラパラと崩れ去る。
洞窟が崩れて生き埋めになるのではない。
さながら舞台背景の書き割りが切り刻まれて舞台に落ちるような。
崩落してくるはずだった洞窟の岩は薄板一枚のように薄く、それも空中でかき消える。
書き割りの壁が崩れたその向こうは、一面荒涼とした岩の大地。
草木も動物も、それどころか土もない、岩と砂礫だけの風景。
地平線の彼方には暗黒の闇と瞬かない無数の星。
そして。
「なんだ・・・ありゃ!?」
モリィの声が響く。
ほとんど全員が反射的に上を見上げていた。
「なんですの・・・天井・・・?」
彼らの目に映るのは、赤茶けた天井。緩やかに凹凸を描くそれは彼らの頭上ほとんど全てを占め、不可思議な圧迫感を与えている。
「いや、天井じゃないぞ! 見ろ、周囲に何もない! 柱も、壁もだ! あれは宙に浮いている!」
ソルの声。
目の前のクリスは動かず、笑みを浮かべるだけ。
そのクリスから注意は逸らさず素早く周囲を見渡すが、見えるのは地平線と黒い空、星々だけ。
もう一度空を見上げるが、岩の天井は小揺るぎもせずにそこにある。
「それだけじゃねーぜ。あの天井、どのくらい上にあると思う?」
モリィの言葉に戸惑う一同。リアスが困惑しながら口を開く。
「それは・・・数百メートルくらいでしょうか?」
「いいや」
首を振る。
「多分だが・・・・数千キロだ」
一瞬沈黙が落ちた。
困惑、驚愕、余りに突飛なことを言われた時の思考の停止。
アルテナ以外の全員が目をしばたたかせて頭上とモリィの間で視線をせわしなく動かす。
ヒョウエがくすくすと、悪意を含んで笑うクリスに目をやった。
「まさか、あれは・・・」
「そ。世界の裏側・・・もっと言えば世界の底ね。
六千年前、ワタシはあそこから落ちてきたの」
「!??」
混乱が広がる。
「どういう事です・・・? 世界というのは丸いのでは?」
「えっ!? そうなんですの!?」
「おい」
「お嬢様ぁ・・・」
モリィのジト目とカスミの心底情け無さそうな表情に、リアスが思わず後ずさる。
対称的にスケイルズとソルの二人は、この状況をすんなり受け入れているようだった。
「マァ確かに世界は丸いわネ。『今』の物質界では。でもこの時はそうじゃなかった。ワタシは世界の底に穴を開けて、そこからここに落ちてきたわけ。これはその時の再現みたいなものね」
「つまり・・・この"
ヒョウエの言葉にクリスが満足そうに頷く。
「そのとおり。それまで世界は平たい板みたいな形だったのよ。ただこの件で"祭壇"、私たちのお師匠様がそれでは問題があると考えたんでしょうね。
そちらのあなたたちが知るような丸い世界になったわけ」
「"世界平らかなりしころ"というわけですか」
この世界では通じないだろう言い回しを口にして、感慨深げに首を振る。
実際このような状況でなければ素直に目を輝かせていただろう事実である。
目の前の人物が敵であることが残念でならなかった。
「それで、お優しいクリス先生はこの場に私たちを連れて来てどうなさるおつもりで?」
「別に? ただワタシの見た景色をアナタたちにも見せてあげたかったダケ。
ここで死にゆくあなたたちへの、せめてもの手向けと思いなさイ」
そしてクリスは再び、口を大きく裂いて邪悪な笑みを浮かべた。