毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~   作:ケ・セラ・セラ

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02-04 邪気()が来る!

 更に幾ばくかの葛藤の後、リアスはヒョウエが白甲冑を装着することを許可した。

 他に選択肢がなかったのもある。

 

「では」

 

 ヒョウエが白甲冑を念動で浮かせ、一礼してから居間から寝室の方に移動する。

 寝室に入りドアを閉めた瞬間、その顔がでれっとゆるんだ。

 頬は紅潮し、眼はきらきらと輝いている。

 

(「白のサムライ」! 伝説の魔導甲冑! まさかそれをこの手でいじるどころか自分で身につけられるとは! ふおおおおおお!)

 

 もはやテンションは天井無しであった。

 

「よろしくお願いします!」

 

 ぱんぱん、と手を叩いて安置した白甲冑を拝むと、ヒョウエはうきうきと服を脱ぎ始めた。

 

 

 

 一方、居間の方では黒髪の童女が渋い顔をしていた。

 

「・・・」

「どうしたの、カスミ?」

「いえ、何やら邪気・・・というか淫らな気を感じまして」

「?」

 

 リアスがかわいらしく首をかしげた。

 

 

 

 しばらくの後、ドアが開く。

 

「・・・!」

 

 リアスとカスミが息を呑んだ。

 歩み出て来たのは紛れもない「白のサムライ」。

 その歩き方で二人には「鎧が起動している」とわかってしまう。

 そのままヒョウエはスペースの開いた部屋の中央で少し動いてみせた。

 

 左右の拳を突き出す。

 手刀を振る。

 バク転。

 

 空中に跳んでの宙返り。

 軽くジャンプして天井に逆さまに着地。

 そのままもう一回転して自然落下、床に降りる。

 

 そこで演武もどきを終え、ヒョウエは兜を脱いで一つ息をついた。

 その頬が僅かに上気している。

 

「ご覧の通りです。いや素晴らしいですね! さすがは伝説に名高き『白甲冑』!」

「・・・」

 

 テンションを抑えきれないヒョウエにカスミがジト目を向ける。

 おほんと咳払いしてヒョウエが誤魔化した。

 

「失礼しました。つい」

「いえ、大丈夫ですわ」

 

 無邪気に喜ぶヒョウエの様子には苦悩より微笑ましさが勝ったようで、リアスは苦笑しながら謝罪を受け入れた。

 

「おほん、まあともかくそうした特殊な仕掛けがされてないのはこれでわかりました。

 となると・・・」

「ヒョウエ様。お考えになるのは結構ですが、まず白甲冑を脱がれてからにされては?」

「あ、はい」

 

 ジト目のカスミに指摘され、ヒョウエがおとなしく頷いた。

 

 

 

 再度着替えをして居間。「白のサムライ」は再び部屋の中央に座している。

 カスミが入れてくれたお茶を今度はゆっくりと口にする。

 

「さて。取りあえず一通り楽しませて、おほん、調べさせて頂きましたが、先ほども申し上げましたようにお嬢様の魔力生成も魔力の伝達も、鎧の方の動作も問題ありません。

 つまり原因は他にあります――例えばお嬢様の心的要因とか」

「心的要因?」

「つまり無意識のうちに・・・例えば戦いたくないとか、家を継ぎたくないとか思っている場合です。ご自身で自覚していなくても、そう言った無意識の拒絶が鎧との接続を邪魔していると」

 

 机を叩いてリアスが立ち上がった。

 

「そんな! ありえません! 絶対に!」

「落ち着いてください。人の心は深く広いんです。自分ですらわからない深淵、闇が必ずあります。どんな聖人であっても、英雄であっても、それは必ずあるんです」

「・・・」

 

 言葉を尽くしてリアスを説き伏せる。

 それでも納得のいかないような顔をして、だが一応リアスは席に着く。

 

 それに安堵しつつ、ヒョウエはむしろカスミの方が気になっていた。

 心的要因の一言を口にした瞬間、明らかに表情が変わった。

 一瞬だけだったが確信があった。

 

 

 

 その後、さほど進展はなく調査は終了した。

 リアスも次期当主であるから、ずっとこればかりやっているわけにはいかない。

 カスミを残して部屋を出た。

 

「・・・」

「・・・」

 

 ヒョウエは白甲冑の調査。

 カスミは部屋の隅に控えている。

 

 無言のまま時が流れる。

 かっち、こっちと時計の音。

 ふと、ヒョウエが手を止めてカスミを見た。

 

「カスミさん」

「なんでしょうかヒョウエ様」

 

 カスミの顔が僅かにこわばっている。

 これからヒョウエが何を言おうとしているのか、薄々とでも察したのだろうか。

 本当に鋭い子だと思いつつヒョウエがずばりと切り込んだ。

 

「リアス様が甲冑を動かせない理由。知ってるんじゃありませんか」

「・・・」

 

 再びこわばるカスミの顔。

 ポーカーフェイスを貫こうとしているが隠し切れていない。

 

「残念ですが、わたくしは存じません。存じていてもお話しするわけにはいきません」

「それがリアス様の運命に関わるとしても?」

 

 ぐっ、とカスミが歯を食いしばる。

 じっとヒョウエがカスミの目を見る。

 

「・・・」

「・・・・・・」

 

 かっち、こっち。

 時計の音だけが響く。

 

 カスミが何度も口を開こうとしてやめる。

 その間、ヒョウエは一度も視線を外さない。

 

 話すべきか、話さざるべきか。

 かっち、こっちと時計の音が響く。

 

「多分、この件ではカスミさんの知っている情報が核心的な手掛かりなんです。少なくとも僕にとってはそうですし、リアス様にとってもそうです。

 よほどのことだとは思いますが、リアス様のためにお願いできないでしょうか」

「・・・・・」

 

 カスミが俯いて唇を噛む。

 

「・・・」

「・・・」

 

 また沈黙。

 かっち、こっちと時計が音を刻む。

 だが、既にカスミの心は決まっていた。

 顔を上げ、ヒョウエと視線を合わせる。

 

「わかりました、お話しします」

「ありがとうございます!」

 

 深く頭を下げるヒョウエ。

 カスミは反応を示さない。

 顔を上げたヒョウエを、カスミの視線が射貫いた。

 

「・・・!」

 

 恐ろしく冷たい目。

 黒だと思っていた瞳が、今は氷のような冷たい青に変わっている。

 

「礼は結構です。全てはリアスお嬢様のため・・・ヒョウエ様であれば無いかとは存じますが、もし今からお話しする事を漏らしたり悪用するようであれば、ヒョウエ様を殺して私も死にます。どうかお含み置きください」

「・・・・・・・・・・・・」

 

 十歳の子供とは思えない凄み。感情のうかがえない声色。

 冷徹で、冷酷で、やると言えばためらいなく実行する殺人機械の目。

 

 冷たい青い眼がヒョウエを射貫く。

 先ほどとは逆に、ヒョウエが詰め寄られる側。

 僅かに気圧されつつも、ヒョウエは自然に頷いた。

 

「わかっています。僕の両親と姉と友にかけて、この話を漏らさないことを誓います」

 

 ややあって、カスミがふうっと溜息をついた。

 深く一礼する。

 既にその目は先ほどまでの黒いそれに戻っていた。

 

「大変失礼いたしました、ヒョウエ様。重ね重ねのご無礼お許し下さい」

「いえ。お家に仕えるとはそういうことでしょう。カスミさんが忠義に厚い方であればなおさらです」

 

 少し意外そうに目をしばたたかせて。

 

「ありがとうございます」

 

 微笑んで、カスミが再度一礼した。




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