毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~ 作:ケ・セラ・セラ
「どういうことでしょう、カスミ? 青い鎧は無敵ではありませんの?」
「技の出かかりを潰した、ということでは。どれだけの力を持つ一撃でも、放つ直前を打たれては力を出せません!」
リアスの疑問に、地面を転がって黒怪の足を切り裂きながらカスミ。
狼のような喉から豚のような悲鳴を上げて黒い悪魔が倒れる。
「なるほど」
言いつつ、黒怪を袈裟切りに切り倒す。
リアスはまだ余裕がある。カスミはそろそろ余裕が無くなりつつある。
話しかけてしまったことを反省し、リアスは水平に振るった剣でもう一匹の黒怪の首をはねた。
攻防は一進一退が続いている。
リアスとカスミ、アルテナは前線で獅子奮迅の活躍。
ヒョウエの金属球がそれと並んで黒怪達を押しとどめる壁となっている。
モリィもクリスを狙うのを諦め、黒怪を撃ち減らしていた。
時折ヒョウエが金属球の術式を起動して黒怪達を大きく減らしたり、クリスを直接狙ったりするが、前者の場合はすぐに前以上の黒怪達が召喚され、後者は例外なく防御されるか打ち消される。
にやりと嫌な笑みを浮かべるクリスに舌打ち。
(・・・けど、おかしい。こちらへの攻め手が厳しくない。
クリス先生ならもっと上位の悪魔種を呼ぶなり、数を増やしてこちらを消耗させるなり、術で直接攻撃するなり色々できるはず。
それをしないのはこちらの出方を見ているか、時間稼ぎか、それが出来ない事情があるのか)
金属球を操って黒怪の頭を砕きつつ、ヒョウエはクリスの姿を睨みつけた。
「カスミさん! "
「わかりました!」
「?!」
いつの間にか前に出てきていたソルが、前衛のカスミに呼びかけた。
ヒョウエが驚いて振り返る。
「大丈夫ですか? "
「これくらいなら何とかなる」
術は起動する時ほどではないが、維持するのにも相応の術式処理能力を要求する。
常駐のアプリケーションのようなものだ。
一般的なレベルの「腕利き」でも、同時に維持できる術は三つ程度だと言われている。
それで言うならば、ソルは既に凡庸な術師の域は超えているということになる。魔道学院入学一年ほどの見習いがだ。
「あなたホント才能ありますね?」
「お前に言われると皮肉にしか聞こえないぞ」
ソルが親友の言葉に苦笑を漏らした。
肩をすくめると、今度はもう一人の親友の方にちらりと視線をやる。
「・・・!」
そのまま何も言わず、ヒョウエは前に向き直った。
「!?」
クリスが目を見開いた。
彼でさえほとんど見たことがないレベルの、莫大な魔力が少年の体からあふれ出す。
「"
「"
「"
「"
「"
「"
「"
「"
「"
円を描いて頭上を回転する九つの金属球がそれぞれ直視できないほど強い光、やわらかな光、炎、水、雷、白い宝石のような鉱物質、岩の塊、反魔力の暗黒、
「チッ!
クリスの口から紡ぎ出される真の言葉。
「行け、九曜の珠よ!」
「
振り下ろされるヒョウエの杖。
力を秘めた九つの巨大な球体が、黒怪とその後ろのクリスを目指して飛ぶ。
そしてクリスの真なる言葉の詠唱が完成するのも同時。
「!」
「これは!」
「うおっ!」
まばゆい光と世界を砕くような破砕音が、この狭間の世界に響いた。
「・・・っふう」
クリスは安堵の息をついた。
"
召喚した黒怪達は残らず消し飛ばされ、咄嗟に放ったカウンターの術式と防御術式も大半が打ち破られ、荒涼とした大地には巨大なクレーターが出来ている。
だがそれでも彼を守る防御結界は健在で、彼の身には傷一つついてはいない。
「全く大したものよね。あの時代の人間なら魔法能力自体は遥かに衰えているはず・・・っ!?」
その瞬間、驚愕が彼を襲った。
意識の隙間から襲ってきた一撃。飛来物が正確に、山なりの軌道を描いて彼を目がけて飛んでくる。
新たに術を発動して身を守るには真なる魔術師たる彼でさえ間に合わないタイミング。
「それ」が彼の防御術式に命中し、軽い音を立てて弾かれた。
一瞬視界に入ったそれは魔力を込めた銛のようで、どこか魔道学院の術師の杖に似ていた。
それだけ。
ただそれだけの、何の意味もない攻撃。
相応の魔力は籠もっていたようだが、彼本人は愚か防御術式にすら毛ほどの傷も付いていない。
だが、それだけで十分だった。
「・・・しまった!?」
スケイルズはずっと銛を握りしめていた。
掴んだ手の指が白くなるくらい強く。
自分が役に立てない悔しさ、友を手助けできない無念。
クロウは超人だ。
クロウの仲間らしい三人もそれぞれ百戦錬磨の戦士なのだろう。
ソルはクロウには及ばないとしても天才だ。
だからこの戦いでも意味のある位置を占めている。
自分は違う。
術は初歩のものしか修めてないし、そもそも魔力自体が弱い。
村の呪い師としてならともかく、こんな凄まじい戦いに参加できるような術師では間違ってもない。
銛を握る指にさらに力が入る。
「・・・?」
手の平から魔力が出て行く感覚。
戸惑いながらも更に手から魔力を放出すると、それらはすうっと銛の中に吸い込まれていく。
この銛は学院の卒業証であり一人前の術師の証である杖を変性したもの。
元の杖は魔力に極めて親和性の高い材質で出来ており、術師の術を補助してくれる。
(これしかない)
そんなことを理解したわけではないが、一転してスケイルズは猛然と手の中の銛に魔力を注ぎ込み始めた。
貧弱な彼の魔力生成能力でも、時間をかければそれなりの量が蓄積される。
足りない分を補うのは浜育ちの体力と根性。
効率は悪くとも、魔力を練るための体力には事欠かない。
周囲のことなど目もくれず、彼はひたすらに魔力を蓄積し続ける。
ほんの僅かでも友を助けるために。
魔力が溢れ、銛に最大限まで魔力が溜まったのがわかる。
体が自然に投擲の姿勢をとっていた。
村一番の銛打ち名人に手ほどきを受けた、銛投げの技。
スケイルズが大きくのけぞり全身のバネを解放するのと、ヒョウエがタイミングを合わせて九つの魔球体を投擲するのがほぼ同時。
炸裂する光と闇と魔力と轟音を貫き、回転を与えられた銛はジャイロ効果で軌道を安定させつつ、50m先の標的に見事に命中する。
その攻撃は、だがしかし何のダメージも与えなかった。
凡庸な術師見習いがたとえ全力を込めようが、真なる魔術師の防御術式を貫くなど夢のまた夢。
一瞬注意を逸らさせただけ。
だがそれで十分だった。
「!」
「!?」
「来た! 来た来た来た来たぁ!」
ファンファーレが鳴った。
少なくとも彼らは確かにそれを聞いた。
奏でるものなどいなくとも。
そこがたとえ荒野のただ中であっても。
ヒーローは、ファンファーレと共に現れるのだ。