毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~   作:ケ・セラ・セラ

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09-46 サムライの剣技

「GWOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!」

 

 翡翠の暴君龍ネフリティスが吼える。

 振り回される尻尾を避けて黄金の龍が飛ぶ。

 喉元に食らいつこうとしたアルテナを、だが恐竜の悪魔は右前足で叩き落とした。

 

『おのれっ!』

「GY?!」

 

 背中をしたたかに打たれながらも、アルテナがその前足にしがみつき、鋭い牙で噛みつく。

 不愉快そうに顔を歪め、ティラノサウルスは噛みつくアルテナを地面に叩き付けようと右前足を振り上げた。

 

「このっ!」

 

 モリィが目を狙って雷光銃を連射する。

 痛みに顔を歪め、左の前足で顔面をかばうネフリティス。

 ただし、その反応は目にほこりが入った程度のものだ。

 

『ぎゃんッ!』

 

 アルテナが地面に叩き付けられる。

 悲鳴を上げ、たまらず離れたアルテナに追撃の踏みつけ。

 そこに再度援護の雷光。ネフリティスの足が降ってくるより一瞬早く、金の龍は転がって難を逃れた。

 

■■■■■■(鏡の世界の午前零時、真夜中の出帆よ)・・・」

 

 笑みを浮かべてそれを見下ろしながら、紫の魔術師は矢継ぎ早に術を発動し続けている。

 真の言葉の詠唱、素早く複雑な魔法印。普段なら省略するような動作や詠唱だが、詠唱にしろ印にしろ省略すれば僅かながらに術の効力は落ちる。

 それをすれば、今はかろうじて封じられている青い鎧、あの世界を越えた召喚術と《加護》が生んだ怪物が復活してしまう。

 

 黒い球体、最初は双頭の狼巨人の姿をしていたそれは本来不定形の特殊な悪魔だ。

 「アルケー」と呼ばれるそれは悪魔と言うよりある種のエネルギーといった方が近い。

 一定量を召喚して生物のように操ることも出来るが、術者の用意した鋳型から溢れたり、あるいは鋳型が壊れたりしてしまった場合は周囲を焼き尽くして消滅する。

 ましてや中に膨大なエネルギーを発生させる何かが入っていた場合は、制御を保つのに全力を投じなければならない。

 

(・・・本当、我ながらとんでもないバケモノを生み出してしまったものね)

 

 「中」にいるそれが強大な魔力に物を言わせて、球体を突き破ろうとしているのが否応なしにわかる。

 黒い球体の補強と修復、中で青い鎧に消滅させられたアルケーの再召喚、青い鎧への直接の攻撃と拘束。真なる魔術師であるクリスをもってして、全く余裕はない。

 

 恐らく三十秒も放置すれば、黒い球体は中から破裂して再びあの忌まわしい青が姿を現すだろう。

 この時点で、翡翠の暴君龍と戦っている金の龍と雷光銃使いはさすがに視界に入れていたものの、それ以外の後ろに下がった人間はクリスの意識の外にあった。

 

 

 

「・・・」

「・・・お嬢様?」

 

 リアスが剣を鞘に収め、盾を背負って目を閉じた。

 カスミの言葉にも反応せず、呼吸を整える。

 直感的に邪魔しない方がいいと感じて一歩下がった。

 

 ちらりと後ろに視線。

 ソルは自分への二つの呪文の維持に集中しており、クリスの注意を逸らした値千金の一撃で魔力と体力を使い果たしたスケイルズはぐったりと地べたに座り込んでいる。

 必要になったらいつでも飛び込めるよう、手持ちのあれこれを素早く確認して、カスミは油断なく周囲に気を配った。

 

 

 

 呼吸を整える。

 気が満ちる。

 

 ヒョウエが霊体となり上の世界に旅だった後、リアスはヒョウエのことをカスミに任せて家に戻っていた。

 探していた剣の師匠・・・サーベージが見つかったからだ。

 嫌がる老人に無理を言って説き伏せ、高い酒で釣って剣技を教授させる。

 ここのところ実力不足を感じていたこともあってその打ち込みようは鬼気迫るもので、この飲んだくれの達人もしばらくすると真剣に稽古をつけてくれるようになった。

 

『まあなんだ、お前は間違いなく才能はある。俺が見て来た中では一等だな。

 ただ、まだ殻を破れてねえ。それができりゃお前は最強だろうよ』

『どうすれば殻を破れるのでしょう』

 

 リアスの質問に老剣士は溜息をついてこういったものだ。

 

『それがわかりゃ苦労はしねえよ――まあ一つ言えることがあるなら、集中。ただ集中だ』

 

 脳裏に甦る師の声。

 集中。集中。集中。

 集中すればするほど周囲の音が大きく聞こえる気がする。

 翡翠の竜とアルテナの咆哮。黄金の翼の羽ばたき。モリィの怒声。龍の足が大地を踏み砕く音。ソルとスケイルズの呼吸音。紫の魔術師が詠唱する真の言葉。

 

(集中。集中。集中――)

 

 だがそれがいつの間にか、一つずつ意識から消えていく。

 やがては師の教えも集中しようとする考えさえ意識から消えて、自分という存在すら消失する。

 

 気がつくと剣を抜いて振り下ろしていた。

 大上段から振り下ろした剣。その軌跡に沿って見えない何かが走った。

 

「・・・・・・GA? GAAAAAAAAAAAA?!?!?」

「!?」

 

 ネフリティスの困惑と怒りの混じった雄叫び。

 その他のほとんど全てのものが、驚愕で一瞬動きを止める。

 ネフリティス、黒い球体、クリス。

 一直線に並んだそれを、見えない刃が同時に切り裂く。

 

「馬鹿な・・・飛ぶ斬撃ですって!? あの片目野郎じゃあるまいし! しかも・・・しかもこんなひよっこサムライが!?」

 

 ネフリティスは右前足を肩から落とされた。

 空中のクリスまで届いたそれは彼の多重防御結界さえ半ばまで断ち切り、この神代の魔術師を戦慄させた。

 そして。

 

 黒い球体の正中線にぴしり、と一直線に亀裂が走る。

 次の瞬間、それは跡形もなく破裂した。

 

「ぐっ!」

 

 力づくで術を破られた反動がクリスに襲いかかる。

 

「こうなればせめて一人二人は――ぐぶ!」

 

 新たな詠唱を発しようとしたその瞬間、防御結界を突き破って呪鍛鋼(スペルスティール)の籠手が彼の喉をわしづかみにする。

 手の平から溢れるのは黒い力場。九曜星の金属球の一つ、"暗黒の星(Rahu)"の魔力吸収能力。真の言葉も魔術も封じられては、さすがにクリスと言えど最早打つ手は無い。

 

「・・・」

「・・・」

 

 刹那、二人の視線が絡み合う。

 クリスがニイと笑みを浮かべた。

 

(こ・れ・に・て・しゅ・う・ま・く)

 

 声の出せないクリスが、口の動きだけで言葉を形作る。

 兜の下でヒョウエが眉を寄せた。

 

(ま・た・ね)

 

 パチリとウィンクをした瞬間、彼の体は崩れてぼやけた紫色の鱗粉になった。

 きらきら輝くそれは空中に溶けて消えていく。

 

「・・・」

 

 一瞬それを見やった後、地面に降りて青い鎧を解除する。

 既にネフリティスはアルテナに喉笛を食いちぎられ、塵になるところだった。

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