毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~   作:ケ・セラ・セラ

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09-47 さよならだけが人生さ

 降りてきたヒョウエの周囲に人が集まる。

 アルテナは満身創痍ながら得意そうに鼻息荒く、モリィが苦笑しながら頭を撫でて労をねぎらってやっている。

 リアスは先ほどの飛ぶ斬撃がかなりの消耗を強いたらしくふらついているが、ヒョウエと目が合うと実にいい笑顔で笑った。

 ヒョウエがサムズアップサインを送ると、はにかみながらもその笑顔が大きくなる。

 それを見てカスミが嬉しそうに笑っていた。

 疲労困憊したスケイルズにはソルが肩を貸してこちらに歩いてくる。

 いい笑顔で親指を立てる二人に、ヒョウエも再び親指を立てて笑顔で応えた。

 

「凄かったですね、リアス。まさか飛ぶ斬撃をものにするとは」

「マジでな。あのジジイはともかく、まさかお前がやれるとは思わなかったよ」

 

 伝説や吟遊詩人の叙事詩にはそれなりによく出てくる技だが、実際に目にしたものは極めて少ない。

 ヒョウエですらサーベージ老のそれが初めてで、英雄譚好きのモリィもかなりはしゃいでいる。

 頬を染めてはにかみながらリアスが頷いた。

 

「思う所ありまして。ヒョウエ様が上の世界で探索をしてらっしゃる間、サーベージ師匠に稽古をつけて頂いたのですわ。

 わたくしも成功すると思ったのは今が初めて・・・いえ、違いますわね。成功するか、しないか、それも脳裏から消えておりました」

「無念無想という奴ですね」

 

 頷き返す。

 術と剣という違いはあるが、ヒョウエも若くして一流の域に達した求道者である。

 リアスの至った境地が多少なりとも理解出来た。

 

「すげえな、お前本当にすげえわ」

 

 笑顔でリアスの肩をバシバシ叩くモリィ。リアスも笑顔でされるがまま。

 普段角突き合っている雰囲気はそこにはなかった。

 

 

 

 にこやかな雰囲気が漂う中、それに気付いたのはやはり《目の加護》持ちのモリィだった。

 

「・・・あれ。なあヒョウエ、地面の、回りがなんか崩れ始めてねぇか・・・?」

「「「「!?」」」」

 

 一転して冷や汗を浮かべるモリィの言葉に、ヒョウエを除く全員が顔を青ざめさせる。

 

「おいヒョウエ、どうすんだよ!?」

「まあ大丈夫じゃないですか?」

「何を根拠に!?」

 

 パニックを起こしたスケイルズに苦笑しつつも、まあまあと両手を上げて仲間をなだめる。

 

「『上』には霊界の権威であるスィーリ先生と探知魔術の権威であるファルタル先生、転移の権威であるマリーチ先生がいるんですよ?

 何時間も経ってるのに彼らが僕達を捜し出せない理由があるならただ一つ、クリス先生が対探知の結界か何かを張ってたからでしょう。それがなくなった今、助けが来るのは時間の問題ですよ。

 その前にこの狭間の狭間の大地が崩壊したとしても、一日二日なら空気と水は僕の魔術で・・・」

「お前達、大丈夫か!」

 

 ヒョウエが言い終わるか終わらないかのうちに、マリーチとスィーリが瞬間移動で現れた。

 

 

 

 一分も経たず、一行の姿は"神の峰"のふもとにあった。スィーリが施した術により、モリィ達三人も同行している。

 あれこれを話すと全員が信じがたいという顔をしていたが、それでも信じては貰えた。

 簡易な調査で地中の青い鎧が消失しはしたものの、しばらくは世界の裂け目がこれ以上広がらないという事を確認すると、一行はマリーチの瞬間転移で学院に戻った。

 

「お前達・・・疲れているところを悪いが、講堂だ。学長から重大な発表がある」

 

 周囲を見ると確かに人が移動しているのがわかった。

 ソルが小声でヒョウエにささやく。

 

「これは・・・あれか。お前達の言っていた・・・」

「だろうね」

「・・・」

 

 ヒョウエが頷くとソルはそのまま押し黙った。

 

 

 

 講堂。

 不思議な事にここはどれだけ人が入っても入りきらないと言うことがない。

 学院の生徒全員が詰めかけているのにまだ余裕があった。

 

 広い演壇の上には調査隊の面々を除く教師全員。

 その中央にある人影を見て、生徒たちがざわめいていた。

 

 長く白い髪と白い髭、知性と優しさを感じさせる顔立ち。簡素な白いローブに飾り気のない杖。生徒たちを見下ろす目は紫水晶(アメジスト)のような透き通った紫。

 そしてその身にまとう雰囲気。威圧的でも巨大でもないが、はっきり人とは違うとわかるそれ。

 たとえ赤ん坊でも彼が神であるとわかっただろう。

 創世の八神の一人、"祭壇"。

 エコール魔道学院学長がそこにいた。

 

 ヒョウエたちが生徒たちの最後尾に並びスィーリたちが壇上に上がると、"祭壇"は前に歩み出た。

 ざわついていた講堂が自然と静まりかえる。

 

「諸君らの大半には初めて見る顔だろうと思う。

 私は"祭壇(アルター)"、創世の八神の一人にしてこの学院の学長だ。

 細かい経緯は省くが、今世界が壊れかけている。

 それを修復し、世界をもっと安全な場所に作り直すため我々八人はこの世界を離れることにした。

 今後、この世界は私に代わり学院の先生たちが"昇神(アセンション)"し、神として見守っていくことになるだろう。

 残念だがこの学院は閉鎖し――」

「お待ち下さい、お師匠様」

 

 "祭壇"の声と生徒たちのざわめきを制して声を上げたのは副学長だった。

 

「セレスソレパル?」

 

 彼にとっても予想外だったのか、戸惑ったように弟子の名前を呼ぶ"祭壇"。

 副学長は胸に手を当て、頭を下げる。

 

「わたくしは地上に残ります。どうぞお許しを」

「「「!?」」」

 

 その瞬間、表情を変えたのは学長よりもむしろ副学長の後ろに並ぶ教師たちだった。

 

「姉弟子!?」

「どうして!」

「どうか考え直して下さい!」

 

 悲鳴のような声を上げる弟弟子、妹弟子たちを困ったような笑みで振り返る副学長。

 

「一緒に天に昇りましょう!」

「お姉様が地上に残るなら私も残ります!」

 

 あれこれを口走る年下の兄弟姉妹に、ゆっくりと首を振ってみせる。

 

「魔道学院はまだまだこの世界に必要です。真なる魔術師も、一人くらいは地上に残っていた方がいいでしょう」

「ですが!」

「それにあなたたちも、いいかげん姉離れしていいころですよ」

「・・・」

 

 にっこりと言われて、叫んでいた教師たちは何も言えなくなる。中には人目をはばからず泣き出してしまうものも男女問わずいた。

 "祭壇"が口を開く。

 

「考えは変わらないのだな」

「わたくしなりによくよく考えて決めたことです」

「・・・よいだろう、娘よ。お前の選択に祝福を」

 

 "祭壇"が一番弟子の肩に両手を置く。

 教師たちのすすり泣きだけが講堂に響いていた。

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