毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~ 作:ケ・セラ・セラ
"祭壇"の先導で一同は講堂を出た。運動場を兼ねる広い前庭に神と、百人の真なる魔術師と、千人を超す生徒たちが集まる。
誰かが空を指さした。
「おい、あれ!」
「え・・・!?」
最初空の彼方に現れた点としか思えなかったそれはすぐに数を増やし、大きさを増す。
「・・・!」
「龍・・・!」
金。銀。赤銅。青銅。鋼色。
赤。青。緑。橙。紫。茶。黒。白。灰色。
それらを混ぜたような色も含めて、この世のあらゆる色を持ったような龍たち――無数の真の龍が輪を描いて学院の周囲を舞っていた。
「さ、お互いの新たな旅立ちです。せめて笑顔で別れましょう。それに、永の別れというわけでもないのですから」
副学長が兄弟姉妹たちを一瞥すると、泣いていたものたちも涙をぬぐった。
永の別れではなくとも、今までのように話すことはできなくなる。
せめて最後は、お互いに笑顔のままで覚えていたい、いてほしい。
副学長がにっこりと、最高のほほえみを浮かべた。
"祭壇"もまた、ほほえんで頷く。
「それでは行くぞ、我が息子、我が娘たちよ。さらば、愛するこの世界とこの世界を愛する者達よ」
祭壇の体から白い光の柱が立ち上った。
続いて副学長を除く教師たちの体からも、それぞれ異なる色の光の柱が立ち上る。
「さようなら、我が師、我が兄弟たちよ。あなたたちは天に、私は地に。この魂尽きるまで私はこの世界を見守りましょう」
セレスソレパルの言葉に応じるかのように、神と弟子たちの光の柱が更に輝きを増した。
光の柱が天を貫き、その遥か彼方へと向かっていく。
輪を描いて飛んでいた龍達が、その柱の周囲を巡るように、螺旋状に上昇し始めた。
"祭壇"を中心にそびえ立つ一と九十九の光の柱。
その周囲を駆け上がる万色の龍達。
龍が天の彼方に見えなくなった頃、光の柱がふっと消えた。
光の根元には、もう誰の姿もない。
「・・・」
ヒョウエも、副学長も、モリィたちも、スケイルズやソルをはじめとする生徒たちも。
それでもずっと空の彼方を見上げていた。
どれだけ空を見上げていたろうか。
ぱんぱん、と副学長が手を打った。
「さあ、お別れはこれでおしまい! 今日からエコール魔道学院の運営は大きく変わります!
私一人では回せませんから、上級生の皆さんには授業を手伝って貰いますよ! 下級生は上級生の皆さんが、上級生は取りあえず私が授業を行います!
この学院の卒業生に声をかけて回って教師に来て貰いますから、それまでは授業のカリキュラムも自習が多くなるでしょう!
学生による自治組織も作ります! 先生方がいなくなった以上、あなたたちが自らを律しなくてはなりません! ですが先生たちの目がないからと言ってだれないように! 自らを律せない人間は術師としては三流もいいところですからね!
それから・・・!」
次々と生徒たちにこれからの学院の運営プランを話し、何人かの生徒には直接具体的な指示を出す。
指示を受けた生徒たちは慌てたように校舎の中に駆け込んでいった。
それを見ながらスケイルズがヒョウエに視線を向ける。
「やっぱり副学長先生は大したもんだぜ、なあクロウ・・・えっ?」
「!?」
スケイルズとソルが焦った表情を浮かべる。
「おいクロウ! それに他の三人も! お前達、体が薄れてきてるぞ!」
「ああ」
ヒョウエが頷いてから首を振る。
「多分
僕達の時代とスケイルズ達の時代とを結びつけていたこの舞台が終わり、二つの世界が少しずつ離れていくんです。
僕らから見たらあなたたちとこの世界の方が薄れているように見えますよ」
「・・・!」
理解してしまったのか、ソルの表情が切なそうな物になる。
一方で理解はしたが、理解したくないという顔のスケイルズ。
「おま・・・おまえ、どうしてそんな平気そうな顔してるんだよ!
俺達親友だろ! それがもう会えなくなるんだぞ! 辛くないのかよ!」
「辛いですよ。親友ですから」
あくまで静かに、ヒョウエが友人の目を正面から見返す。
辛そうに顔を歪め、それでもスケイルズは親友の目を正面から見返した。
「・・・」
「ああそうだ」
ヒョウエが取り出したのは、学院から授かった術師の証の杖。
あの後元に戻したそれを、いよいよ消えそうなスケイルズの手に押しつける。
杖はこの世界に属するもの。舞台がはねた以上、元の世界に持ってはいけない。
「預かってて下さい。そのうち取りに行きますから」
ソルとも視線を合わせ、頷き合う。
「・・・取りに来いよ! 絶対だぞ! 絶対・・・」
最後まで言い終えられずに、スケイルズとソルの姿が消えた。
周囲の校舎や木々、空や海も。
「・・・・・・・・・・・」
気がつくと、ヒョウエは手を伸ばしたまま自分の屋敷の大広間に横たわっていた。
モリィ達も一緒だ。涙を浮かべたリーザが抱きついてきて、彼女の体を抱き返すと、頭を撫でてやる。
サナと目が合うと、この男勝りの女執事は笑顔で一礼した。
「やれやれ、どうなることかと思ったがどうにかなったようじゃの。
ようやったぞ馬鹿弟子」
かけられた声に振り向くと滅多に見ない優しい笑顔のメルボージャがいた。
思わず肩をすくめる。
「師匠にそんな顔されると気持ち悪いですね。何か悪い事の前兆ですか・・・あいたっ!」
メルボージャが無言で指を鳴らすと、ヒョウエの額に極小の魔力弾が命中する。
額をさするヒョウエに溜息をつく老婆。
「口の減らん馬鹿弟子め。まあ、万事順調とはいかんかったようではあるがな」
「?」
首をかしげる弟子に、老婆はその傍らを指さす。
「・・・え」
「どうした。わらわの顔に何かついているか、ヒョウエよ」
「何であなたがここに!?」
流れるような金色の髪に虹色の瞳。
真なる龍の化身、アルテナがヒョウエの傍らにちょこんと座っていた。