毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~ 作:ケ・セラ・セラ
「ああ、待っている、友よ。いつまでも」
――『不死王』 ファールヴァルトのアドリアン――
「え・・・何でこいつがここにいるんだ?」
ヒョウエの屋敷の大広間。
起き上がったヒョウエの横にちょこんと座る金色の髪の少女にその場の視線が集中した。
「なんじゃ。わらわがここにいたら何か悪いのか?」
「いや悪いというか・・・」
首をかしげる少女に、その場を代表してヒョウエ。
「真の龍達はほとんどが創世の八神と百神に従ってこの世界を去ったんでしょう?
てっきりあなたも一緒に行ったのかと思ったんですけど」
「そんな気もするが、
「それはどうも」
周囲が一斉に苦笑を漏らす。名指しされたサナは余計にだ。
ちらりと師匠の顔を見ると、この歳ふりた術師は溜息と共に答えた。
「こやつは二つの世界に属するもの・・・というか世界を渡る能力を元から持っておるのが真の龍じゃからな。
幻夢界に作られた
「本来のアルテナは世界を支えてるわけですよね? 大丈夫でしょうか?」
「もう一人の私が世界を支えてるんだから別に構うまい」
「あ、そういうことなんですか?」
「たぶんな」
無造作に頷く少女に、ヒョウエがやや呆れ顔になる。
「大丈夫ですかねえ・・・」
「大丈夫だ。それに・・・もう一人の私も、お前の傍にいる私を見ることで心慰められるのではないか。世界の外は寂しいところだからな」
「・・・」
溜息をついてヒョウエがアルテナの頭を撫でる。
黄金の龍の化身たる少女は気持ちよさそうに目をつぶってそれに身を任せた。
しばらくの間苦笑と沈黙が漂っていた広間だったが、ふとリーザが顔を上げた。
「・・・ん。サナ姉さん、お客さん」
「わかりました」
サナが一礼して出て行くと、しばらくして一人の男を連れて戻ってきた。
「え、師匠?」
「サーベージのじいさん!?」
「よう、オマエらとは久しぶりだな。達者だったか」
呵々と笑うのは杖を突いた小汚い片目の老爺。
ヒョウエの語りの師匠、サーベージだった。リーザやカスミ、アルテナと言った嗅覚の鋭い面々が顔をしかめる。
「飲んでますね、師匠?」
「そりゃな。おめえがここで高いびきかいてる間にその嬢ちゃんに稽古つけてやってたのよ。その報酬ってとこだ」
がははと笑うサーベージに、納得したようにヒョウエが頷く。
「なるほどそれで」
思い出すのは、エクトプラズムの洞窟で見た逆風の太刀と、直接には見ていないが黒い球体を切り裂いた飛ぶ斬撃。
「酒蔵の酒を三分の一ほど飲み干されてしまいましたわ。それだけの価値はありましたけど」
肩をすくめるリアス。
さもありなんとヒョウエが苦笑する。
「それで今度は僕の屋敷の酒蔵を飲み干すつもりですか?」
「時間がありゃあそうしたいところだが、今回はまた別口でな。ほれ、さっさと移動しろよ白髪ババァ」
「こっちにはこっちで都合があるんじゃ。大人しく黙って座っておれ、飲んだくれのもうろくジジイめ」
「「!?」」
気安くメルボージャに話しかけるサーベージと、それに答える老婆の気安さに、三人娘が目を白黒させる。
「え、どういうことですの?」
「あー、言ってませんでしたか。このお二人、ご夫婦ですよ」
「ご夫婦?!」
「た、確かに言われてみりゃぴったりの・・・」
「クソジジイとクソババァだ」という言葉を飲み込むモリィ。
「「・・・」」
直後、二人に揃って睨まれて身をすくめる。
「まあええわい、これで大方のところは済んだ。後は向こうでもやれる」
ヒョウエを寝かせていた魔法陣をいくらかいじると、メルボージャが荷物をまとめて立ち上がる。老爺が肩をすくめた。
「おめえ、近頃とみに動きが鈍くなってねえか? そろそろお迎えが来る時分じゃねえかね」
「やかましいわい」
「あいたっ! このクソババァ!」
妻の杖ですねを痛打され、老語り部が悶絶する。
それに構わずメルボージャはサナの方に向き直った。
「それでは申し訳ありませぬが、しばらくそちらの若様をお借りしますぞ。
重要な用事がありますのでな」
「はい。お早いお帰りを」
それだけを口にしてサナが一礼する。
ヒョウエに抱きついたままだったリーザが名残惜しそうに離れると、ヒョウエが立ち上がってリーザを立たせる。その頬にキス。
「なるべく早く戻りますから」
「うん・・・待ってる」
絡ませていた指が離れ、リーザが一歩後ろに下がる。
周囲から突き刺さる、嫉妬と呆れとその他の何とも言いがたい視線。
「おめえらさあ・・・何でそれで男女の仲になってねえんだ?」
誰も口にしないことを無遠慮に口にしたのはやはりサーベージだった。
「だから黙っておれクソジジイ!」
「ぐおっ!?」
今度は眉間を痛打され、ゴロゴロと転がるサーベージ。
リーザが真っ赤になってうつむき、サナを含む半目の視線が集中してヒョウエが一歩後ずさる。
「?」
よくわかってないアルテナが首をかしげた。
毎日戦隊は毎日が毎日日和。
雨の日も風の日も、それはそれで毎日日和。
かたつむり枝に這い、神空にしろしめす。
全て世はこともなし。
「まだですか?」
「もうすぐそこじゃ」
洞窟の中を歩く一行。
メルボージャとサーベージを先頭に、ヒョウエ、三人娘、アルテナ。
老婆の言葉通り、数分もすると洞窟は開け、大きな空間が広がっていた。
その中央に立つ、巨大な水晶の結晶が一つ。
「・・・えっ?」
「なっ?!」
その中にある「もの」を視認した瞬間、ヒョウエたちが絶句する。
「ほっほっほ。驚くのはそれだけではないぞ」
笑いながらメルボージャの姿がゆらりと揺らぎ、霧のように薄くなって空気中に溶けて消えた。
「!?」
「
思わず水晶に駆け寄るヒョウエに、三人娘とアルテナ、ニヤニヤ笑いのサーベージが続く。
「・・・やはり。では」
水晶の前に立つ。
『この姿では久しぶりですね、ヒョウエ。いえ、クロウ』
「・・・・・・・・!」
心の声が語りかけてくる。
人がすっぽり入って余りある、4m近い水晶の柱の中にいるのは白い髪、白い肌、白いローブの目を閉じた美女。
真なる魔術師にしてエコール魔道学院副学長、セレスソレパルだった。
「やはり、副学長の方ですの!?」
「というかまさか、真なる魔術師と言うことは・・・」
『ええ。百人の真なる魔術師のうち、地上に残った長兄。それが私です。何故か伝承の中で白髭の老人男性と言うことになってしまいましたけど』
念話から伝わる苦笑の気配。
ヒョウエたちはただ驚くしかない。
それでも深呼吸して心を落ち着けると、表情を改める。
「それで・・・ここに連れて来たのは何か重要な話が?」
『ええ。でもその前に、一番大事なことを済ませてしまいましょう。あなた、例のあれを』
「おう」
頷いたサーベージが広間の奥に歩いて行く。
壁のくぼみにはベッドやタンスなど人が生活する環境が適当に整えられ、
そのうちの一つから細長い包みを取り出し、ヒョウエに手渡す。
「これは・・・まさか」
『伝言です。「確かに返したぞ」と』
「・・・・・・・・・・・・・・!」
包みの中身を強く握りしめ、ヒョウエが俯いた。
古ぼけた木の杖――エコール魔道学院を卒業したものに与えられる術師の杖に、ぽとりと水滴が落ちる。
水晶の美女から、無言の優しい気配が放たれていた。