毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~   作:ケ・セラ・セラ

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十の巻「ヒーローズ・リボーン」
プロローグ「時には昔の話をしようか」


「昨日? そんな昔のことは忘れてしまったな。明日? そんな先のことはわからない」

 

     ――映画「カサブランカ」――

 

 

 

 どことも知れぬ洞窟の中、ヒョウエが杖を握りしめて涙をこぼしている。

 六千年の時を経て戻ってきた杖。

 友との約束の証。

 その場にいる誰もが――ひねくれ者のサーベージでさえ――優しげな目でそれを見ていた。

 やがてヒョウエが乱暴に目元を袖でぬぐうと、水晶の中の白い女性――『白き月とフクロウの魔女』セレスソレパルに向き直った。

 

「ありがとうございます、師匠――それとも副学長とお呼びすべきでしょうか」

『好きに呼びなさい。どちらも私です』

 

 笑いを含んだ心話に、ヒョウエも笑みを浮かべる。

 サーベージがその肩を肘で突っついた。

 

「おいおいボウズ、だまされてんじゃねえぞ? ツラはいいが、中身はお前の知ってる性悪の因業ババァなんだからな?

 今も腹ん中じゃお前をどうやっていいようにこき使ってやろうか考えてやがるに違いないぜ。そうやっていいように使われたのが俺なんだから間違いない・・・ぐべっ!?」

 

 見えない衝撃に側頭部を強打され、サーベージが錐もみして回転した。

 

「おー。さすが師匠。無駄に無駄のない術式ですね」

『これでも"真なる魔術師(トゥルー・ウィザード)"ですからね』

「ところで、サーベージ師匠をいいように使ったというのはどのように?」

『・・・』

 

 沈黙が降りた。

 白い魔女が生身であれば、恐らく無言で目をそらしていただろう。

 

『さて、ここへあなたを呼んだ二番目の用件ですが』

「はい師匠(ごまかしたな)」

 

 そう思いつつも、ツッコミはしない。

 ここで踏み込んだら理不尽な逆襲が来るのはわかっている。

 

『他ならぬクリスのことです』

「・・・」

 

 自然と居住まいを正す。

 モリィたちとアルミナもだ。

 

「どこにいるかわかっているんですか?」

『いいえ。"大崩落(グレートフォール)"以来、私の力をもってしてもあれの居所はつかめません』

「ファルタル先生に頼んだりは出来ないんですか?」

 

 昇神(アセンション)したかつての魔道学院探知術主任、今は"占術神(ファルタル)"と呼ばれる人物の名前を上げると、苦笑の気配が伝わって来た。

 

『今では彼らも天界の住人ですからね。そう軽々しくは交信できません。それでも何度か頼んではみたのですが、答えは常に否定的でした』

「神の力をもってしても、ですか。この地上にはいないんでしょうか?」

『可能性としては有り得ます。流石に世界の外となると私たちの手にも余りますからね。正直、あなたから話を聞くまではあれは世界の外に消えてしまったのかも知れないと思っていました。

 もちろん、何らかの方法で姿を変えて、あるいは強固な結界の中に籠もってこの地上にいる可能性もあります。あれも状況が違えば神になり得た術師ですから』

「・・・」

 

 二人が同時に溜息をついた。

 

『ともかくあれ以降のクリスに接触したのはあなた方が初めてです。

 まずはそれを教えて下さい』

「移動中のあれこれとかもですか?」

『あれこれもです』

 

 いつぞやのようなやりとりに、互いにくすりと笑う。

 ヒョウエは唇で、セレスは心話で。

 

「それでは可能な限り正確にお話ししましょうか、と言ってもそんなに長くはないですけどね。まずクリス先生が出て来たのは・・・」

 

 

 

 問答などを一言一句正確に再現するよう望まれたため、思っていたよりは長くなった。

 とは言っても二十分ほどにしかなるまい。

 ともかくやりとりを語り終えるとセレスが溜息をついた。

 

『あの子は・・・まったく変わりませんね』

「当時のクリス先生に引っ張られていたところはあるでしょうね。後、僕の記憶する限りでは師匠の弟弟子妹弟子は大体あんな感じだったと思いますが」

 

 肩をすくめると、ちょっと目をそらす気配がした。

 溜息をついて、疑問に思っていた事を口にする。

 

「そう言えばクリス先生の専門は何だったんです? 召霊術の、この世界の外からの召喚を実験していたのは知っていますが」

『学院で教えて貰っていたのは召喚した霊の実体化、制御、変化、そのあたりですね。個人的な研究まではわかりませんが、異界からの召喚に興味を持っていたようです』

「実体化と制御はわかりますが変化というのは?」

『霊とかりそめの肉体に様々な術式を組み込むことです。そうですね、たとえば人間の霊魂に肉体を与える時に翼を生やすとか角を生やすとか。

 もう一歩進めて人間の霊魂に龍の肉体を与えるとか、肉体自体を魔道具のようにして術式を仕込むとか』

「なるほど」

 

 人間の霊魂はやはり人間の姿をしているため、かりそめの肉体を与えても人間のそれでなければ機能不全を起こす。

 そうした部分を補い、更にはあり得ない能力をも付加すると言うことなのだろう。

 

「実現できれば確かに便利ですね」

 

 何もないところから霊魂を召喚して実体を与えて使役する。それに様々な術式を組み込めるなら万能の使い魔がその場に応じて作り上げられる。

 召喚と実体化までは使える人間がいなくはないが、そこに更なる力を与えるとなると現代の術師の及ぶところでは到底ない。

 

 今にして思えば青い鎧を封じ込めた黒い悪魔などもそれだったのだろう。

 悪魔という霊体、もしくはエネルギー体に様々な術式を組み込んで青い鎧を封じる牢獄としたのだ。

 それを話すと水晶柱から頷く気配があった。

 

『でしょうね。元から"霊魂の神(スィーリ)"に匹敵する優秀な召霊術師でしたが、ますます腕を上げているようです。しかも過去の自分という、言わば操り人形を介しているような状態でそれらをやってのけたのですから』

「問題はその力をもって何をしようとしているかですね」

『それはわかりません。ただ・・・』

「ただ?」

『あなた方冒険者族がこの世界に現れたのは、恐らく彼が原因です』

「えっ?」

 

 その言葉にヒョウエや三人娘はおろか、サーベージまでが目を丸くした。




取りあえず今回の話で最終回です。
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