毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~ 作:ケ・セラ・セラ
10-01 異世界転生チートというお約束
「もうどうにも止まらない」
――山本リンダ――
「どどど、どういう事だよセレス?! 俺がこっちに引き込まれたのもそのせいだってのか?」
思わず、と言った感じで口を開いたのはサーベージだった。
普段泰然自若・・・と言うよりふてぶてしい態度を崩さない、メットーの城壁よりも分厚い面の皮を持つ男が完全に我を失って動転している。
水晶柱の中の白い魔女からも苦笑の気配。
『落ち着いて、あなた――ええ、そうよ。直接的な証拠のある話ではないけれども、この六千年に起きたことを考えるとおそらくそうだろうと思うの。今聞いた話がそれを更に補強してくれたわ』
「・・・」
どうにか自分を落ち着かせ、サーベージが無言で続きを促す。
『推測と仮説を積み上げた話になるけれども・・・クリスは恐らく"
確認しますがヒョウエ、転生・転移してくる冒険者族は特定の世界の特定の国からしか呼ばれないのですよね?』
頷く。
「少なくとも一時期調べた限りではそうですね。地球の日本・・・民族としての日本人ではない人もいたようですが、少なくとも日本にいた人間以外が呼ばれた例は見つかりませんでした」
水晶の中からも頷く気配。
『最初の召喚が行われた時から四千年近く経っていますが、それ以来途切れることなく百年から数十年ほどのスパンで冒険者族はこの世界にやってきています。恐らくは異世界の一点にアンカーを打ち込み、そこから自動的に召喚しているんでしょう。
全てを把握しているわけではありませんが、特にここ千年ほどは間違いなく頻度が高くなっています。
彼らが得る《
「でしょうね」
ヒョウエとカスミが頷いた。
《加護》はもちろんそれ自体の強弱はある。たとえばヒョウエのそれは超弩級の反則チートであり、モリィ、リアス、カスミのそれも同種のそれの中でほぼ最上位に位置するレベルのものだ。
その一方で冒険者が成長するように《加護》は成長させることができる。
端的な例がライタイムの星の騎士だ。
この世界で一番多く、一番凡庸な《健康の加護》。
病気にかかりにくい、腹を下しづらいという程度のそれを鍛えに鍛え、極めてタフで強靱な肉体、あらゆる毒や病気を跳ね返す生命力、無尽蔵のスタミナ、ほとんど歳を取らない事実上の不老、そうしたものを手に入れたのが彼だ。
つまり強力な《加護》を授かったところで磨かなければ大したレベルにはならないし、強力な《加護》のように見えても本人の努力の成果と言うことも普通にある。
外側からではそれがどちらか判断するのは非常に難しい。
セレスが言っているのはそういうことだ。
「そもそも《加護》ってなんなんです?」
『私も詳しい事は知りません。何せ天に昇った兄弟弟子たちのやったことですので。
ただ、神代のオオヤシマの時代に比べて創造神達のいない新たな世界では環境が厳しくなったので、それに対抗して生き抜くための力を人間に与えるためと言うことのようです。
加えて竜族の大半がこの世界から姿を消しましたから、それを補う意味もあります』
「「???」」
白い魔女の言葉に、後ろで聞いていたモリィ達が首をかしげる。
ヒョウエも余り理解していないようだと見てとると、セレスは言葉を重ねた。
『ああ、学院の授業ではそこまでやっていませんでしたね。
つまりですね、この世界は風船のようなものだと考えて下さい。それを膨らませて世界を維持し続けるには、龍の持つ強い生命の力と人間の持つ強い精神の力が必要だったのです。
《加護》は生命の力を補うもの。数を減らし、亜竜となって衰えた龍達の生命の力を補う手段だったのですよ』
「なるほど・・・だとすると冒険者族が強い《加護》を持つのはそれを補うためなんですか?」
伝わる拒否の気配。
『いいえ。この世界の人間の《加護》は私の兄弟弟子たち〈百神〉が与えるものですが、あなたたちの《加護》はいずれの神が与えたものでもありません――あなたたちの《加護》を与えたのは恐らくクリスです』
「!?」
再び驚愕が走った。
何かに気付いたのか、ヒョウエがハッと目を見張る。
「そうか、世界の外からの召霊、具現化、そして変化!
僕達の《加護》はクリス先生によって付け足された術式であると!」
『その通りです』
頷いて叫んだ後、ヒョウエがふと考え込んだ。
「・・・冒険者族の召喚、そして強力な《加護》がクリス先生の仕業として、その目的はなんなんでしょう?
召喚されたオリジナル冒険者族に洗脳の術式でも仕込んであるならともかくですが」
セレスの方を見ると、否定の意志が戻ってきた。
『実のところ、術師メルボージャとして活動していた目的の一つがオリジナル冒険者族にそうした術式が仕込まれているかどうか確認するためでした。
そうしたオリジナル冒険者族を、そしてあなたやイサミを十年以上にわたって観察して得た結論は――そうしたものは存在しないと言うことです』
「ですよね。そんなものがあったら、あの戦いの時に僕を操れば済むことですし」
世界の外の荒野での戦いを思い返しつつヒョウエ。
師の頷く気配。
『ひょっとしたらこの状態は彼にとっても想定外なのかも知れません。
もしくは意図したとおりに事態が進んでいないのか。
だとしてもあれならこの状況を更に効果的に利用しようとするでしょう』
「でも、具体的にはそれが何かわからないんですね」
『その通りです』
師弟が揃って溜息をつく。
サーベージが髭づらの頬をボリボリとかいた。
「まあ近いうちになんかやりそうな気はするな。本当にただの勘だが――なんだ?」
自分の顔をじっと見る語りの弟子に眉を寄せる。
「いやまあその・・・これまでの話を聞いてサーベージ師匠の正体というか本当の名前というかに心当たりが・・・」
「おい馬鹿やめろ。そんなもんほじくり出しても誰も得しねえぞ」
『いいじゃないあなた。聞いてみましょうよ』
僅かに動揺して早口になるサーベージを、妻がやんわりと止める。
ただし、思念の端々に隠す気もない笑いの気配を込めて。
「おめえなあ・・・!」
『ほら、ヒョウエ。言ってご覧なさい』
「はあ・・・まず先生は"祭壇"の一番弟子ですよね。伝説では白髭の老爺ですが」
『ええそうよ。全く失礼な話ね』
肩をすくめるような気配。
何だかんだ今でも色濃く残る男尊女卑のたまものかなあと思いつつ言葉を続ける。
「四千年前、原初の魔獣たちが〈昼も夜もない谷〉から溢れた時に活躍した、"祭壇"の一番弟子の娘、白き髪の乙女って多分セレス先生ですよね。
となるとそれと恋仲に落ちたって言う『始まりのサムライ』って・・・」
「え」
「あ」
「ファーッ!?」
あんぐりと口を開け、あるいは絶叫する三人娘。
その場の視線を一身に受けたサーベージ、この世界の人間なら誰もが知る英雄にして白い髪の乙女との悲恋の主人公、最初のオリジナル冒険者族「始まりのサムライ」は滅茶苦茶渋い顔で頭をかいた。