毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~   作:ケ・セラ・セラ

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10-02 始まりのサムライ乱行録

「待て、待て待て待て! 始まりのサムライつったら四千年前だぞ! いくらオリジナル冒険者族でも生きてるわけねえだろ!」

「星の騎士みたいなパターンならあり得なくもないと思いますけどね・・・ともかく一つ忘れてませんか? セレス先生は神になれた人ですよ? そして神なら人を不老不死にするすべを知っているでしょう」

「あ・・・」

 

 ヒョウエの言葉にモリィが目を見張る。

 使徒。〈百神〉が力を分け与えた、地上での神の代理人。

 彼らは神の力の一部を行使することを許され、また使徒の座にある限り不老不死だと言われる。

 神の座に昇らなかったとは言え、真なる魔術師の中でも最も優秀だったセレスがそれに近いことが出来ても不思議ではない。

 

「で、ではやはり本当に・・・」

 

 がっくりと、リアスが膝をついて崩れ落ちた。

 

「そんな、まさか"最初のサムライ"がこんなろくでなしの飲んだくれの行き当たりばったりの絶対親戚にはいて欲しくないタイプだったなんて・・・」

「お嬢様、お気を確かに!」

 

 orzするリアスを必死に揺さぶるカスミ。

 

「お前そんなこと思ってたのかよ・・・」

 

 一方渋い顔を更に渋くするサーベージ。自覚はあるだろうが、かわいがっていた弟子にそう思われていたのは多少なりともショックだったらしい。

 笑みを含んだ思念で妻が追い打ちをかける。

 

『全部本当の事じゃないですか。普段の行いがそう言う時に跳ね返って来るといつも言っているでしょう』

「まあ言われたくなければ身を慎むべきだと、僕も思いますよ師匠・・・痛い痛い」

 

 大人げなく青筋を立てたサーベージがヒョウエのほっぺたをつねり上げる。

 妻には勝てないので弟子に当たるあたりが実にみみっちい。

 

「なめた口利いてくれんじゃねえかこのクソ弟子が。調子こいてると・・・」

「『芋酒は 芋掘僧に くれもせで つるをたたさぬ 人はなんしょよ』」

 

 ビシィッ、と人間が石になる幻聴が洞窟に響いた。

 ヒョウエが口ずさんだ言葉を聞いて、サーベージが硬直した音である。

 先ほどから一転、恐怖の表情すら浮かべて一歩、二歩と後ずさる。

 

「お、おめえそれをどこで・・・」

「『いも酒を のめばいもせの 中よくて ぬかごをうむと 云うはまことか』」

「ぐおああああああああ!?」

 

 頭を抱えてサーベージが洞窟の床面を転がり回る。

 明らかに精神的致命打撃(クリティカルヒット)だ。

 セレスが興味深げにそれを覗き込んでいる(ような雰囲気を出している)。

 

『どういう事です、ヒョウエ?』

「旦那さんが酒乱なのはご存じで?」

『ええ、嫌と言うほど』

「ある時酔っ払って、知り合いのお坊さんの・・・そうですね、修道院に行ったんですよ。

 で、禁欲を旨とする修道士たちに『おまえら芋掘って暮らしてるんだから芋酒を飲め』と強要しまして。皆さんが弱り果てたところにその知り合いのお坊さんが出て来て今言った和歌、ショートポエム二つをその場で詠んだら旦那さんは大笑いして帰って行ったと」

『うわ最低』

「ぐげっ」

 

 嫁の言葉に、転がっていたろくでなしジジイがビクンビクンと痙攣する。

 

「どうしようもねえじじいだな・・・」

「他人に飲め飲めと強要する方はまあいらっしゃいますけど、修道士に・・・?」

「やっぱり飲んだくれにろくな方はいらっしゃいませんね」

「クズだ」

「ぐががががー?!」

 

 三人娘+アルテナの追い打ちに、悲鳴を上げて転がり回るサーベージ。

 この厚顔無恥を絵に描いたような男でも、若かりし頃の恥をほじくり出されるのは流石に辛かったらしい。

 無駄に隙のない動きでがばりと立ち上がり、涙目でヒョウエに詰め寄る。

 

「畜生バラしやがって! だいたい何でそんなことお前が知ってるんだよ?!」

「いや、そう言われましても当の和尚さまが手紙に残してまして・・・」

「和尚ーっ! 何してくれてんですかーっ!」

 

 天井を仰いで絶叫するサーベージ。

 彼の真の名前は柳生十兵衛光巌。

 江戸時代最強とも言われる伝説の剣豪である。

 

 

 

「ちくしょう、他のオリジナル冒険者に知られないよう四千年間必死で隠してたのに・・・」

 

 リアスの代わりにorzするサーベージ。背中がすすけている。

 

「そこまでショックを受けるとは思いませんでしたよ。

 いやまあ、隠したいことや知られたくないことはそりゃあるでしょうけど、師匠って結構武名も馳せてるじゃないですか? 当時の剣豪でいえば真っ先に名前の上がる・・・」

 

 再びがばりと(隙のない動きで)立ち上がるサーベージ。

 

「お前に何がわかる!?」

「え、いや、そのですね」

 

 慰めようと思ったらもの凄い顔で睨まれて、何も言えなくなるヒョウエ。

 

「若い頃のちょっとした過ちで上様の御勘気をこうむって出仕停止!

 幕閣の出世コースをひた走ってた親父の足も盛大に引っ張って!

 十年間柳生のクソド田舎に押し込められて!

 必死で書き上げた兵法書は親父にゴミ呼ばわりされて!

 沢庵和尚が口添えしてくれなかったら廃嫡も有り得たみじめな境遇で!

 許されて再出仕した後はまじめにお役目務めてたのに、親父が死んだら領地分割されて大名から落とされて!

 ふてくされて柳生に帰りはしたけどそろそろ出てかないとまずいなーってなってたところでこっちに呼ばれて行方不明になって!

 息子もいなかったから家督継がせて貰えなくて断絶して!

 なんか弟が継いだらしくて家自体が取りつぶされなかったのはいいけど滅茶苦茶苦労かけたらしくて申し訳なくて! 

 こんなクソ野郎の人生のどこに誇るべき点があるんだ! ええっ、どこにあるんだよ!?」

「いやその・・・すいません」

 

 最後の方は嗚咽も交じる師の独白に、何も言えずに謝るしかできないヒョウエである。

 

(確かに僕の知ってることは割と創作でのイメージも入ってるからなあ・・・)

 

 まあ生前の行跡の悪さが悪いと言えば悪い。

 その反面死後数十年で既に講談や小説のネタになっているのだから、作家には扱いやすい題材だったのだろう。

 

 とはいえ実際当時の江戸柳生最強の男であり、剣術の理論面においてもいくつかの著書を残し、幕府でのお役も無難にこなしているあたりは決して無能ではない。

 無能ではないが・・・周囲の評価と当人の自己評価は得てして乖離するものである。

 

「ううう・・・」

 

 再び崩れ落ちて嗚咽する老人を、呆れと同情半々くらいの目で周囲が見ていた。

 

 

 

『ほら、気を取り直してちょうだい。あなたがそう言う人だって言うのはわかっているから、今更幻滅したりはしないわよ』

「お、おう。そうか、すまないな・・・今さりげなく俺を貶めなかったか?」

『気のせいじゃない?』

 

 数十分後。妻の励まし?もあって何とかサーベージは立ち直った。

 

「くそ、何でばれたんだよ・・・」

「まあ四千年前ってことはあっちの世界だと僕の時代から四百年くらい前で、新陰流関係者で酒乱の剣豪で隻眼となると・・・」 

「ちくしょう、人のことを好き放題勝手に後の世に残しやがって! 和尚様恨みますぜ・・・よりによってあの話を残さなくてもいいじゃないですか・・・」

 

 頭を抱える師匠に、同情を交えながらも呆れた顔のヒョウエ。

 

「悪いの全面的に師匠じゃないですか」

「そりゃそうだけどよぉ・・・」

「それに直接には知りませんけど、あの和尚様がそんなことをいちいち気にかけると思います?」

「・・・思わん」

 

 沢庵宗彭。江戸時代初期の高僧で十兵衛の父柳生但馬守宗矩の友人。

 紫衣事件で仏教界と幕府が揉めた時に「そもそも幕府の法律が間違ってるんだよ。それとも物を知らないだけか、ええっ?(意訳)」と真っ向正面から言い放って幕閣を激怒させた江戸時代切っての反逆者(トリーズナー)である。

 大名家の嫡子とは言え、たかが友人の息子の問題児の小僧一人に遠慮するわけがない。

 

 なお前述の「芋酒は 芋掘僧に くれもせで つるをたたさぬ 人はなんしよよ」と「いも酒を のめばいもせの 中よくて ぬかごをうむと 云はまことか」の二首の和歌はつまる所「精力剤である山芋から作った芋酒飲んだらエッチなことしたくなるよね!」ということで、それぞれ「勃たせちゃ駄目な僧侶に芋酒やってどうすんだ」「芋酒飲んで女の中に入れたら気持ちよくなって子供が生まれるってホントかよ」のような意味で、十兵衛ではなく僧侶である沢庵和尚が詠んだところが実にロックである。

 閑話休題(それはさておき)




 一話まるまるじいさんの身の上話になってしまった・・・w
 なお今回の十兵衛関連の話は全部史実です。いやマジで。
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