毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~   作:ケ・セラ・セラ

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10-08 期せぬ再会

 

「それでですね。十兵衛師匠の恥ずかしい過去はともかく」

「その名前はやめろ! 俺はサーベージだ! 過去は捨てたんだ!」

「過去は・・・バラバラにしてやっても・・・石の下から・・・ミミズのように這い出てくる・・・」

「どこの誰のセリフか知らんがやめろ! 今まさに這い出てきたばかりだよ!」

『・・・』

 

 漫才を演じる亭主と弟子の姿に水晶の美女が思念で溜息をつく。

 三人娘もそれぞれに呆れ顔だ。

 そうでないのは何をやってるか理解出来ないアルテナぐらいだろう。

 

『はいはい、二人ともそこまで。まじめな話に戻りますよ』

「小僧が悪いんじゃねえか。人の過去をほじくり出しやがって・・・」

「有名税という奴ですね」

 

 しれっとのたまうヒョウエにサーベージが剣呑な眼を向けるが、妻に釘を刺されたせいか実力行使には出ない。

 

「それでセレス先生? 具体的にクリス先生がこれから何をやってくるとか、こちらから何か行動を起こすとかあるんですか?」

 

 首を振るような否定の気配。

 

『残念ながら。ここ数千年滅多に姿を見なかった悪魔が連続して、しかも両方あなたにからんで出現したのは間違いなく何らかの前兆かと思うのですが・・・』

「クリス先生の仕業なのは間違いないと思うんですが、何をしたいのかがよくわかりませんよね。

 僕の具現化術式を持っていって何がしたいんでしょうか?」

『そうですね・・・』

 

 セレスが少し考え込む。

 ヒョウエが青い鎧の術式を具現化させた時、様々なアドバイスをしてそれを今の形にしたのが老婆メルボージャの姿を取っていた彼女である。

 青い鎧について、下手をするとヒョウエ以上に理解している唯一の人物だ。

 

『まず単純に超強力な魔道甲冑としての機能がありますね。加えて保持できる魔力量も出力限界も馬鹿馬鹿しいほどに高いので、一種の魔力蓄積装置(キャパシタ)として運用できなくもないでしょう』

「何か大がかりな魔法装置の一部として運用する・・・? 例えば巨人機(ギガント)みたいな」

 

 ヒョウエとモリィが出会ったころに出くわした、古代の巨大戦闘機械だ。

 柳生十兵衛ことサーベージが召喚された頃に起きた、〈昼も夜もない谷〉の封印が破れて神代の大魔獣たちが暴れ出した事件などでも活躍したと言われている。

 

『まさか。あなた青い鎧であれらを一蹴したじゃないですか。というかあれは当時でも数合わせにしかなりませんでしたからねえ。もちろん数が重要な場合も多々ありましたが』

「歩のない将棋は負け将棋、だな」

 

 サーベージが遠い目で呟く。

 逆に言えば将棋の歩兵、チェスのポーン程度の存在だったと言うことである。

 

「どれだけ強かったんですか原初の魔獣・・・」

「俺がババァの援護を貰って入念な策を用意しないと勝負にもならない程度だよ」

「・・・」

 

 海を断ち割ったと言われる始まりのサムライにそこまで言わせる原初の魔獣。

 当時を知らないヒョウエたちが揃って絶句した。

 

「しかし巨人機でも比較にならないとすると・・・モンソン島にあった大地を操る魔法装置?」

『あれでも青い鎧をキャパシタとして使うにはいささかスケールが小さいでしょうね。

 そもそもあのレベルなら、専門外とは言え真なる魔術師であるクリスに用意できないものでもないでしょう』

「あれでも小さいのか・・・」

「では一体あの方はどれだけとんでもない代物を用意するおつもりで・・・?」

 

 冷や汗をかきながらリアス。

 再び首を振る気配。

 

『見当もつきません。今回の幻夢界の底に穴を開けるたくらみといい、いったい何を考えているのか・・・』

「悪魔の大規模な召喚でも行うつもりでしょうか」

『それをするにはお師匠様たちと真の龍たちの張った結界を破る必要があります。

 いかにクリスとは言えできるかどうか・・・』

「言いたくはありませんが悪魔と結託してこの世界を征服しようとしているとか・・・?」

『残念ながら否定はできません・・・うん?』

「先生?」

 

 セレスの思念が止まった。

 何かに集中しているようだが、困惑した気配だけが伝わってくる。

 

「・・・」

「・・・・」

 

 声をかけようにもそうした雰囲気ではなく、周囲の人間はただ黙ってそれを見守るばかり。

 

『!』

 

 それが突然に乱れた。

 

『・・・』

「おい、セレス。どうした?」

 

 

 僅かな間を置いて、セレスの思念が返ってきた。

 

『・・・霊魂の神(スィーリ)から交信がありました。

 幻夢界が恐ろしく乱れているようです。まるで嵐が吹いているようだと。

 交信も途中で切れてしまいました』

「・・・」

 

(悪天候で携帯の電波状況が悪いみたいな感じだな)

 

 一瞬のんきなことを考えて自分で否定する。

 

「この状況で幻夢界の乱れ? 偶然ではないでしょうね」

「だろぉな。あの紫野郎が噛んでることに全財産賭けてもいいぜ」

 

 ヒョウエたちが頷きあう。

 その瞬間、世界が揺れた。魔力に鋭いセレスとヒョウエとアルテナ、鋭い感覚を持つサーベージとモリィが顔色を変える。そうした能力に乏しいリアスとカスミの主従でさえ本能的に異変を感じとっている。

 

『ヒョウエ! あなた!』

「どうした!? なんだこいつは」

「凄い魔力です師匠! それと・・・来ました!」

「!」

 

 広い洞窟の中、水晶の周囲を取り囲むように出現する青い炎の球体。

 大きさは10mにも達しようかというそれが二十か三十。

 その中に一つだけ3mほどの小さな空間の揺らぎ。

 

 青い炎が実体化する。

 火球の大きさに見合う巨大な、青黒い巨大な角と翼、爪と牙を持つ悪魔が数十体。

 そして。

 

「・・・え?」

「アラ、ヒョウエちゃんじゃナイ、奇遇ネッ! どうしたノ、こんなところデ?」

 

 浮遊する円盤の上に乗った、一トンほどはありそうな肉の塊。

 ゲマイ創世八家クレモント家の当主にして魔道君主の一人、千年を生きる「ゲマイの死なない王様」、ダー・シ・シャディー・クレモントはカバのような笑い声を上げた。

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