毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~   作:ケ・セラ・セラ

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10-10 黒い鎧

「嘘・・・」

「なんだと・・・」

 

 葬送曲と共に現れたのは黒と紫の甲冑の騎士。

 青い鎧のネガ。

 体格や体のバランスもほぼ同じで、恐らくは奪われた青い鎧を改造したもの。

 感じる威圧感、魔力量は本家と比べても遜色ない。

 直径2m近くありそうな肉達磨を中に押し込めているにしては小さいが、そこは魔法ということなのだろう。

 

「・・・」

 

 それが始まりのサムライ、恐らく世界最強の剣士の一撃を苦もなく弾き返した。

 

『ヒョウエ!』

「はいっ!」

 

 セレスの声と共にヒョウエの姿が消えた。

 誰もがその後に来る事を知っている。

 

 そして奏でられるのはファンファーレ。

 それはヒーローが降臨したあかし。

 

「・・・」

「ヒョウエ!」

「青い鎧か・・・!」

 

 瑠璃の如き透き通る群青。

 びろうどの如き鮮やかな紅。

 いつもならば絶対的な安堵と共に迎えられるそれが、今はどこか頼りない。

 

「・・・」

「・・・」

 

 対峙する青い鎧と黒い鎧。

 先ほどのサーベージの時のように、緊張の糸が張り詰めていく。

 いや、先ほどの時のようにではない。

 

 青い鎧。

 黒い鎧。

 セレス。

 サーベージ。

 モリィ。リアス。カスミ。

 そして青黒い巨大悪魔(ジャイアントデーモン)たち。

 

 今は全員がこの空気に染まっている。

 どんどん濃厚になる緊迫感。

 火に掛けた鍋の中のスープが煮詰まっていくように。

 

 火花が散った。

 凄まじい金属音。

 その寸前、青い鎧と黒い鎧の姿が消えている。

 

 全員が同時に動いた。

 

『あなた!』

「おう!」

 

 セレスが何かを念じるとサーベージの目前に一振りの日本刀が現れる。

 老剣士がそれを掴んですっぱ抜いた瞬間、見えない斬撃が走った。

 洞窟の壁と天井に斜めに走る線。

 僅かに遅れて巨魔三匹の体に同様の線が走る。次の瞬間、その三匹の上半身と下半身が生き別れした。

 

「オラァッ!」

 

 その背中で、三人娘の戦いが始まっている。

 初手を打ったのはやはりモリィ。

 雷光銃の連射を巨魔の目に正確に叩き込み、10メートルの巨人を怯ませる。

 その鋭い視覚は雷光が命中しながらも僅かにその着弾点の周囲が波打って歪んでいたのを見逃さなかった。

 

「こいつらあの悪魔と同じだ! 半分霊体って奴だぞ!」

「で、ございましょうね!」

 

 リアスの一刀。

 2メートル程度ではあるが、斬撃が飛んだ。

 

『GYEEEEEEEEEE!?』

 

 巨魔のすねに線が走り、緑色の体液をまき散らしてずれ落ちる。

 悪魔が悲鳴を上げて後ろに倒れ込んだ。

 

「幻舞陣!」

 

 カスミが七色七体の光の分身に分かれる。

 それらが猿のように巨魔の体を飛び登りはじめた。

 巨魔はハエを払うように体中のカスミを払い落とそうとするが、手の平はむなしく体を叩くのみ。

 

『GYEEEAAAAAAAAAAAAAA!』

 

 巨魔の手の平にはたき落とされて全ての分身が消えたと思った瞬間、巨魔は両手で目を押さえる。

 

「・・・やはり手応えが心許ないですね」

 

 その一瞬前、何もない空間から出現したカスミの忍者刀が巨魔の双眸を一直線に切り裂いていた。

 

『小賢しい悪魔どもめが! 死ぬがよい!』

 

 魔力の濃密な空間なせいか、小竜ではない、黄金の龍に変じたアルテナが巨魔達に襲いかかる。

 巨魔との体格差は人間と大型犬くらい。

 人間と犬とは違い、スピードにさほど差はないが、低い姿勢から繰り出される攻撃に巨魔達は対処しあぐねて、次々に傷を増やしている。

 

『ふん』

 

 噛みついた傷口からしたたった緑色の体液を、アルテナがまずそうに吐き出した。

 

 

 

 そして、それら全ての戦いを圧して、鉄塊を鉄塊に叩き付けるような重低音が響き続けている。

 しかしそれらを奏でる奏者たちの姿は見えない。

 見えないほどの速度で動き続けている。

 その姿を視界の端にでも捉えられるのは、強力な《目の加護》を持つモリィと真なる魔術師であるセレス、そして達人中の達人であるサーベージくらいのものだ。

 

 そしてその中でも、モリィにだけはわかる。

 セレスの入った水晶柱から強大な魔力が放出されていること、それらがこの空間全体、特に巨魔達とクリスの変じた黒い鎧に向かって投射されていること。

 そして黒い鎧に投射される魔力はその体の周辺で黒い鎧の発する魔力と打ち消しあっていること。

 

(つまり、真なる魔術師である姐さんでも、あの黒い鎧に魔術で対抗は出来ねえってわけかい)

 

 モリィの背に冷や汗が流れた。

 

 

 

 鳴り響き続ける重低音がふと途切れた。

 悪魔は早くもその数を半分ほどに減らしている。

 大半はサーベージが斬り捨てたものだ。

 それぞれ目の前の相手と戦いながらも、モリィ達の目が空中の一点に集中した。

 

「・・・」

「・・・」

 

 中空に静止して、10mほどの距離を置いて対峙する青い鎧と黒い鎧。

 いずれにも目立った損傷はない。

 不審そうに、だが油断なく相手から目を離さない青い鎧。

 黒い鎧の肩が僅かに震える。

 

「くっ・・・」

「?」

「くくくくく。くはははははは! アーッハハハハハハハ!」

 

 ダー・シではなく元のクリスに近い、甲高い笑い声が黒い鎧から漏れる。

 

「なるほど、わかった! わかったわ! これならあたしの勝ちねっ!」

「言ってくれるではないか。試してみるか?」

 

 青い鎧になったときの癖になっているのか、低い作り声でヒョウエ。

 それでも甲高い笑い声はやまない。

 青い鎧が身構えた。

 黒い鎧が笑い声を消して両手を広げる。

 それはあたかも群衆を導く聖者のようで。

 

『ヒョウエッ! 避けなさいっ!』

 

 その瞬間起こったことはモリィの《目の加護》をしてもはっきりとは捉えられなかった。

 ただわかったのは、真なる魔術師であるセレスたちや青い鎧と比べてすら遥かに巨大な存在、人間とはスケールの違う何かがその場に出現したこと。

 そして黒い鎧が突き込んだ手刀が青い鎧の胸を貫通し、水晶の心臓をえぐり出す光景だった。

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