毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~ 作:ケ・セラ・セラ
10-11 竜の心臓
「どうしてうつむいて歩くの?」
「自分には心が無いから、小さな虫をうっかり踏み潰してしまうかもしれない。
温かい心を持つ人が自然にできることが、自分にはできないんだ」
――オズの魔法使い、ブリキの木こり――
モリィが気がつくと、アキリーズ&パーシューズ魔法道具店の作業室だった。
メルボージャとイサミ、アンドロメダ、必死そうな顔のマデレイラが台座に横たわったヒョウエの周りで忙しそうに立ち働いている。
「おう、起きたか」
声に振り向くと、疲れた顔のサーベージとリアスが部屋の隅の長椅子に座っていた。
「みなさま、お茶が・・・モリィ様、目がさめたのですね。良かった・・・」
扉が開いて現れたのは、香草茶と茶菓を持ってきたカスミ。
モリィの顔を見て安堵の息をつく。
横たわるヒョウエをちらりと見て、視線をサーベージ達の方に動かした。
「なあ、何がいったいどうなったんだ? 悪いけど説明してくんねえか?」
「そうだな、茶菓子代わりに話してやるか」
サーベージが取りだした水袋から、蒸留酒をがぶりと飲んだ。
作業を続けるメルボージャを残し、イサミ達もそれぞれ適当に腰掛けて一息つくとサーベージは語り出した。
「俺も確かに見てとったわけじゃねえ。ババァから聞いた話が大半だ」
メルボージャをちらりと見ながら老剣士。
「あの時紫野郎が呼び出したのが、悪魔の王――最低でも上位貴族に相当するような高位の悪魔だった。その力を借りて小僧を行動不能にし、心臓をえぐり取った」
「あー・・・水晶の心臓ってやつをか?」
「"
補足説明をしてイサミが茶をすする。
「それって・・・なんで生きてんだよ、あいつ?」
ヒョウエに視線を飛ばしながらモリィ。彼女の《目の加護》は、ヒョウエが呼吸もしていれば心臓があるかのように脈もあることを見て取っている。
アンドロメダが頷いた。
その前髪は一筋ほつれていて、彼女も不眠不休で動いている事を窺わせる。
「お師匠様の処置のおかげですね。こちらに運び込まれてからは、『生命の祭壇』・・・怪我人を癒すため、生命を引き延ばす魔道具を使って呼吸と鼓動を維持しています。
今やっているのは祭壇から離れても行動できるように、擬似的な心臓と術式を埋め込む作業ですね」
「取りあえず命は無事ってことか」
アンドロメダが頷くのを見て、モリィが深く安堵の息をついた。
代わってリアスが口を開く。
「そこまではわたくしも聞きましたが、あの場からどうやって脱出して来れましたの? どう考えてもまともに逃げられる状況ではありませんでしょう?」
「そこもババァから聞いた話だが、悪魔の王だかなんだかは一瞬で消えて、あの黒い鎧の野郎も力を消耗したのか動きが鈍ったらしいんだ。
そんであの金龍のチビの力も借りて、あの洞窟から瞬間転移で脱出したんだと。
同時に
と、再度メルボージャの方を指す。
「恐らくはクリスの手に落ちたんじゃろうな。直前までの記憶はあるが、それ以降の記憶や思念の同期がない。あそこから移動させられたか、封印されたかのどちらかじゃろう。
もちろん殺害された可能性もあるが、それは低いとわしは見ておる。本体には使い道が色々あるでの」
と、背中を向けながら老術師。
「そうかい・・・そう言えばアルテナはどうしたんだ?」
「そこで寝てるよ」
イサミが指したのは部屋の隅のバスケット。
最初に物質界に来た時同様、小さな金色の竜が布を敷き詰めたその中で丸くなって眠っていた。
「こいつも力を使い果たしたみたいでな。取りあえず寝かせておくしかないとさ」
「そっか」
しばし沈黙が落ちる。
響くのは茶をすする音と菓子を口にする音、そして老術師、真なる魔術師セレスソレパルの分身が作業をする音だけ。
ややあってカスミが口を開いた。
「そう言えばサーベージ様、セレス様。あの洞窟はどこにあったのですか?
行く時も瞬間転移でしたからわかりませんでしたが・・・」
「ありゃあこの都の地下深くだ。メットーが出来るより遥か前の話だが、何回か地下通路下って行ったことがある」
「マジか」
「・・・・・・・・・・・・師匠」
「ヒョウエ!?」
驚愕の声があちこちで上がった。
台座の上で微動だにしなかった少年の口から漏れた言葉。
「これ、しゃべるでない。まだ施術は完了しておらんぞ」
「これだけですから・・・サーベージ師匠、ひょっとしてその地下通路の入り口・・・今アイズナー離宮のある場所にありませんでしたか」
「!」
「そうか、レスタラがアイズナー離宮の破壊を目的にしてた節があるのは!」
「気付いたか。あの離宮はな、蓋よ。地下へと通じる通路、地下の施設を封印するための蓋じゃ。鉄仮面の奴めどこで聞きつけたか、それを狙ってきたんじゃろ。
あの洞窟は世界最大の竜脈の上に築かれた一種の要塞じゃ。わしの本体を保存するために色々手は加えておるがの。やつめ、わしの本体と共にあの施設を利用するつもりに違いないわ」
「・・・ちょっと待って下さい。以前の地震発生装置の時に聞きましたが、その竜脈は今は枯れてしまっていると。まさか、メルボージャ師匠がそれを作ったせいですか?」
「まあの」
「・・・」
少し考えてからヒョウエが再び口を開く。
「あそこには何があるんですか?」
「・・・」
「師匠がただエネルギーを利用するためだけにそうした施設を作って竜脈を枯らすとは思いません。何かそうせざるを得ない訳があったのでは」
しばしメルボージャの沈黙。
「あそこには・・・あそこにはお前もよく知る施設があった」
「? それは・・・」
「エコール魔道学院じゃよ」
「!」
ヒョウエの目が大きく見開かれる。
普段だったら大声で叫んでいたかもしれない。
「これ、動くなと言うておろうが。
そもそも魔道学院があの場所に作られたのもそれが理由での。
わしを含めて数人にしか知らされておらなんだが、我らのお師匠様である"祭壇"はそれを封じる・・・少なくとも不穏のやからに利用されないために魔道学院を作り、それを守るための砦としたのじゃ」
「・・・いったい何があるんです」
「世界のへそじゃ」
「オオヤシマの時代から存在する世界のへそ・・・まさか?」
ヒョウエの表情が変わる。
施術する手を止めず、メルボージャが大きく頷いた。
「神代の大地となった黄金鱗の虹の竜。その心臓がメットーの地下にはあるのじゃ」