毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~   作:ケ・セラ・セラ

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10-12 地球のへそ

 

「・・・黄金鱗の虹の竜かあ」

 

 視線がバスケットの中で寝ているチビ龍に集中する。

 

「実際、心臓をどうにかすると何が起きるんだ?」

「そうじゃな、最悪この大陸が吹っ飛ぶかの」

 

 全員が吹き出した。

 

「超大ごとじゃねえか!?」

「地殻が崩壊してマントルが・・・師匠、それこの星ごとぐっちゃぐちゃになりません?」

 

 前世知識を引っ張り出したイサミが、引きつった顔で師に問うと、老婆は作業を続けながら頷いた。

 

「ありうるじゃろうな。そのへんは山神(ボルドゥ)が研究しておったが、奴の残した資料を借りて一時期地中を探ってみた事がある。

 わしらのいるこの地上はゆで卵のカラのようなもので、下には極めて熱された硬い溶岩のような層がある。カラが一部でも剥がれたら海の水が流れ落ちて大爆発を起こし、更に広範囲のカラが剥がれるじゃろう。

 連鎖反応で更にカラが大量に剥がれ、もし無事に残ったカラがあったとしても海は干上がり、空気は海水が蒸発した高温の水蒸気で満たされる。

 それこそ竜でもなくば生き延びられまいよ」

「・・・」

「・・・」

 

 今度は全員が絶句する。

 ヒョウエやイサミなどは恐竜が絶滅した時の隕石の衝突、それより遥かに昔のカンブリア紀の生命大量絶滅などを連想していたかもしれない。

 

「・・・それが、クリス先生の目的だと?」

 

 弟子の言葉に首を振る。

 

「さすがにそれはなかろう。やったところであやつに何の得があるんだという話じゃ。

 悪魔どもにしたところで、この世界を手に入れたいのであって破壊したいのではない」

「・・・では、心臓を介して地脈から魔力を吸い上げる?」

 

 今度発言したのはアンドロメダだった。

 話についていこうと必死に頭を回転させていたマデレイラが首をかしげる。

 

「でもアンドロメダお姉様。そこまでの魔力を吸い上げる必要のある儀式なり魔道具なりってなんなんでしょう?

 悪魔を大規模に召喚するとか?」

「そのあたりじゃろうな。

 あの一瞬出て来た悪魔王かなんだかをこちらの世界に呼び込むつもりやもしれぬ」

「どっちにしろ大ごとですね・・・」

 

 溜息をついてがっくりと肩を落とすマデレイラを、アンドロメダが撫でてやる。

 普段は狂喜乱舞する姉のスキンシップにも、今の少女は僅かに身じろぎするだけだった。

 

「ほれ、そろそろ休憩はおしまいじゃ。もう少しなんじゃから手伝え」

「うーっす」

 

 のそりと立ち上がったイサミが伸びをした瞬間、屋内に通じる扉が勢いよく開かれた。

 

「うおっ?」

 

 入って来たのは"片隅の垂れ幕(コーナー・ヴェール)"のエージェント、ディグ。

 以前の地震発生装置事件でエブリンガーと共闘した男だ。

 

「失礼します、皆様。たった今知らせが入りまして・・・アイズナー離宮が襲撃されました」

「!」

 

 全員が一斉に立ち上がった。

 

「襲撃したのは誰だ?」

「ひょっとして悪魔でしょうか?」

 

 雷光銃や刀など、武装を確認しながらモリィとリアス。

 カスミは素早くアルテナの入ったバスケットをかかえ上げている。

 

「確認は出来ていませんが、その様な存在だという情報もあります。

 幸いなことに王族の方々は滞在しておられませんでしたが、宮殿付きの者達が多く残っていると・・・」

「・・・くそっ」

 

 モリィがヒョウエに目を移して舌打ちする。

 ディグが僅かに目を伏せた。

 

「離宮もそうですが、問題は」

 

 と、アンドロメダが言おうとしたところで建物が揺れた。

 

「!?」

 

 僅かに間を置いてディグの部下が駆け込んでくる。

 

「悪魔か!」

「は、はい!」

 

 モリィの問いに、僅かに動揺しながらも答えるエージェント。

 優秀な人材であるはずだが、こうしたとんでもない経験にはモリィ達ほど慣れていないのだろう。

 間を置かず、作業室――ガレージのように、外に直通する作りになっている――の表通りに通じる扉が強い衝撃を受けて軋んだ。

 

「やべぇ、こっちにも来たぞ!」

「や、やっぱり目的はヒョウエなの・・・!?」

「マデレイラ、ドルフィンを起動しておきなさい!」

「は、はいお姉様!」

 

 マデレイラが作業室の隅のドルフィンに取り付くのを見てからヒョウエに視線を移す。

 応急処置をするにもまだ時間がかかりそうだと見てとり、夫の方を見上げてぎょっとする。

 

「くっくっく・・・くははははは!」

 

 笑っていた。

 このような時にもかかわらず歓喜の笑みを浮かべて。

 

「あ、あなた?」

 

 まさか狂ったのかと恐る恐る夫に触れようとすると、振り向いたイサミがばっ、と大きく両手を広げた。

 

「こんなこともあろうかと・・・こんなこともあろうかと! ははははは、このセリフを口に出来るとはなあ!」

 

 笑うイサミの右手に握られているのは、妙に無機質な金属製の小箱。

 中央に突き出した丸く赤い突起を親指が押し込んだ。

 

「ポチットナ」

「!」

 

 家が再び揺れた。

 アンドロメダやマデレイラ、ヒョウエと言った魔力を感知できる面々が目を見張る。

 

「起動せよ! 万能移動型要塞店舗、『ハーキュリーズ』!」

 

 

 

 魔法道具店が面する表通り。

 周囲にたかっていた、緑色のトンボとトカゲを掛け合わせたような、3mほどの人型悪魔達が驚いて空中に飛びすさった。

 店の周囲を強力な魔法の力場が覆い、店の入り口で応戦していた"片隅の垂れ幕(コーナー・ヴェール)"のエージェントたちも強制的に店の中に押し込まれる。

 揺れる店舗が地面から数メートルほどせり上がり、続けて通りの方にせり出す。

 

 一歩。

 巨大な金属の足が通りの敷石を踏み割る。

 

「な・・・」

「なんだありゃ!?!??」

『GIGIGIGIGI?!』

 

 逃げ散って様子を見ていた市民たち、店の周りにたかっていたトンボの悪魔達の心が一つになる。

 かなり大きめの三階建て店舗、それに金属の足と腕の生えた奇妙奇天烈な構造体。

 万能移動型要塞店舗『ハーキュリーズ』の勇姿・・・?がそこにあった。

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