毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~   作:ケ・セラ・セラ

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10-15 それはドラマもへったくれもなく

「あれっ?」

「おっ!?」

「なんだ、知り合いか?」

「ええ、知り合いと言いますか何と言いますか・・・」

 

 特殊監獄"納骨堂(ヴォルト)"が破られたのを受けて、生き残りの看守と残っていた囚人を聴取することになった。

 ヒョウエたちも特別に同席させて貰ったのだが・・・意外な顔がそこにいた。

 

「やっぱてめえか! 何だよ、やっぱり女だったんじゃねえか!」

「しつこいですね。僕は男ですよ!」

「どこがだ!」

 

 手かせを着けて床に座らされているのは、立てば2メートルを超えるだろう筋骨隆々の大男。

 カスミがぽんと手を打つ。

 

「ああ、アキレスとか言う荒くれ集団を率いていた方ですか。ヒョウエ様とサナさんが退治した」

「おや、よく知ってますね。『インヴィジブル・マローダー』の時に持ち出した強化具現化術式も、元は彼が見つけて来たもののようで」

 

 今はヒョウエの住んでいる屋敷に住み着き、我が物顔に暴れ回っていたが、ヒョウエの術と機知にやぶれた。

 かなり強力な《剛力の加護》を持っていたため、"納骨堂(ヴォルト)"に送られていたらしい。

 当時12歳だったヒョウエを女の子だと思い込んでかなり執着していたが・・・。

 閑話休題(それはさておき)

 

「控えろ! この方は大公家のご長男、ヒョウエ・カレル・ジュリス・ドネ殿下にあらせられるぞ!」

「マジか!? マジで男なのか!?」

 

 愕然とする大男。

 その反応にヒョウエが呆れる。

 

「驚くところそこですか? 普通王族だったほうに驚きませんか?」

「いや、だって・・・なあ?」

 

 周りを見渡す大男。

 否定的な反応は誰からも出ない。

 最後に叱咤したエージェントを見上げると、彼は一瞬ヒョウエを見た後視線を逸らした。

 ヒョウエは周囲を睨みつけるが、皆肩をすくめるか苦笑するか意味ありげに微笑むだけ。

 

「くそっ、なんて世界だ!」

「別に理不尽ではないから諦めなさい。強いて言うならあなたの御母様が美人すぎたのが悪いわね」

 

 ちょっと楽しそうな顔の姉にとどめを刺されて、少年はがっくりとうなだれた。

 

 

 

「最初から最後まで話して貰おう。何があったんだ?」

「いつも通りのクソッタレな一日だったよ。クソッタレな部屋のせいで何もする気力が起きなくて、ごろ寝してたんだ。

 うとうとしてたのがぐらっと来て目が覚めた。

 なんだろうと思ったが起き上がる気力もなくて――知ってるか、あそこに入ると風邪で熱出して動けないような感じになる――そのまま転がってたら、牢獄の覗き窓が開いた。

 『こいつはどうします?』って声がして、しばらく間を置いて『この程度ならいらぬ』って声がして覗き窓が閉じた」

「それで?」

 

 先を促した"狩人"に大男が首を振る。

 

「いや、それでしまいさ。その後しばらくして外が騒ぎになって、あれこれ聞かれた後ここに連れてこられた、それだけだ」

「ふむ。そうか」

 

 "狩人"が視線を飛ばすとカレンが頷いた。嘘はついていないと言うことらしい。

 考え込む"狩人"に代わって口を開いたのはヒョウエだった。

 大男の顔を覗き込んで怪訝な表情。

 

「しかし・・・随分と険が取れましたね? 前に会ったときはもっと、何と言うかどうしようもない顔をしてましたけど」

 

 これ以上ないほどストレートな言葉をぶつけられて、大男が苦笑する。

 

「ひでえやつだな。いやまあ、そのとおりだけどよ」

 

 確かにその様子には乱暴者の犯罪者ではなく「いかつい顔だが気の良い大男」のような雰囲気が窺えた。

 大男が床に座り込んだまま天井を仰ぎ見る。

 

「まあなんつうか、つええ《加護》を貰って調子に乗ってたわけだよ。

 おまけにあの昔の・・・」

「アーティファクト?」

「そうそう、それそれ。それも見つけてよ、もうこりゃ俺に勝てるやつぁいねえ、天下無敵だってな。

 それがおめぇに苦もなくひねられて、アーティファクトもあっさりガラクタになって、おまけにあそこに放り込まれたら、周りは一目でわかるほどのバケモノ揃いでよ、ブルっちまったわけよ」

「井戸の中のカエルが海の広さを知ったわけですね」

 

 日本のことわざを引き合いに出したヒョウエに、大男が破顔する。

 

「うまいことを言うな、おめえ! そんな感じだな、まさに!

 だからまあ、そういう風に見えるならそれが理由だろうってな」

 

 ヒョウエが微笑んで頷いた。

 

 

 

 結局他の看守や囚人も含めて、大して意味のある話は聞けなかった。

 カレンの部屋に戻って会議が再開される。

 

「単刀直入に聞くが、カレン殿下、"狩人"殿。今のディテク軍の戦力で離宮の悪魔どもを追い払えるかの?」

 

 メルボージャの視線が二人の間を動く。

 カレンが難しい顔で沈黙し、"狩人"はゆっくりと首を横に振った。

 

「難しいだろうな。さっきも言った通り王国の精鋭である魔道部隊はかなりの割合が先だってのレスタラ戦役で消耗している。冒険者たちも同様だ。

 ヒョウエ殿下が昇進して数の上では黒等級も補填されたが、現状の殿下ではな・・・」

「多分現状でも緑等級くらいの戦力にはなると思いますが、今までに比べたらまあ誤差程度の物ですね」

「そうね。それに今は青い鎧も来てはくれないし」

「ソ、ソウナンデスカ?」

 

 思わずうわずる声、引きつる表情。

 もっとも表情に関しては三人娘やイサミ、アンドロメダも似たようなものだ。

 カレンが獲物をいたぶる蛇のような笑みを浮かべる。

 

「そうなのよねえ。まさか青い鎧の正体が弟だったなんて、夢にも思わなかったわ。ああ、こんな秘密を話してくれなかったなんて、私愛されていないのかしら」

「ハテ、ナニカ、カンチガイ、サレテルノ、デハ」

「それじゃ自分でばらしてるようなもんだ馬鹿。・・・姫さん、どうやって気付いたんだ?」

 

 もはや棒読みを通り越して、宇宙人か昭和の人工音声のようになるヒョウエ。

 あきらめ顔のモリィがその肩を叩き、カレンが笑顔のまま指を鳴らした。

 

「入って来なさい、二人とも」

「は、はい、失礼します・・・あはは・・・」

「・・・」

「サフィア!? QBさんも!」

 

 思わず声を上げたのはサナだった。

 メットーに知らぬものとてないこのクライムファイターが冷や汗を垂らしつつ、盛大にごまかし笑いを浮かべている。

 

「お二方には"狩人"との縁もあって、ここのところ色々仕事をお願いしておりましたの。

 それでお茶をしていたときに何やら悩み顔でしたので色々お聞きしたら、まあびっくり、ヒョウエが青い鎧だって言うじゃありませんの。わたくし驚いてしまいましたわ」

「サフィアーッ?!」

「サフィアさんーっ!」

 

 サナとヒョウエの絶叫。

 

「ごめん! ボクの"探偵(ショルメス)"がふと気付いてしまったんだよ、論理的に考えるとヒョウエくんが青い鎧だとすれば色々つじつまが合うって事に! それで・・・」

「だからってカレン様に告げ口することはないでしょう、サフィア!」

「だからごめんって! でもこの人尋問人としてはとんでもないんだよ! "読心(リードマインド)"が使えるのかって思うくらい!」

「まーなんだ二人とも。気持ちはわかるけど相手が悪いや。この姫さんそっち方面はガチですげえから」

「・・・」

「・・・」

 

 身近で接してきて、実際にその眼力を知っている二人が黙り込む。

 にんまり顔のカレン、仏頂面のヒョウエ。

 そしてサナは親友が青い鎧に熱愛宣言をしていたことを思い出し、盛大に頭を抱えた。

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