毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~ 作:ケ・セラ・セラ
「それでカレン姉上にも聞きましたが、軍備の方はどうなってるんです」
ヒョウエの問いに父と伯父、長兄が顔を見合わせた。
僅かに間を置いてジョエリーが口を開く。
「・・・見通しが立たないというのが正直なところだな。
お前の兄弟子の作ったゴーレム・・・ゲテモノ・・・いやまあ何と言うか変態じみたアレと、ビシク嬢のアーティファクトがあってもかなり心許ない。
お前は実際にあの緑の悪魔を見ていたな。我が軍で使っている魔道甲冑と比べてどうだ?」
少し沈黙が降りた。
いつの間にか、部屋の全員が耳を傾けている。
「単純な戦力比較で言えば三対一。僕の見ていない何らかの特殊能力があれば五対一まではありうるでしょう。正直レスタラ戦役で残った戦力だけでは五分に持ち込むのも辛いのでは」
「お前の兄弟子の作ったアレは?」
「アレはかなりのものですが恐らくは燃費がめちゃくちゃ悪いですからね・・・魔力結晶が無限にあるなら百か二百は相手取れるでしょうが。
マデレイラのドルフィンも本来戦闘用ではありませんので、魔道甲冑・・・せいぜい10人分というところですか」
「そうか・・・」
ジョエリーとマイアの兄弟二人が揃って溜息をつく。
代わって口を開くのはアレックス。
「そう言えばお前の体はどうなんだ? 見た限りでは特に異常もないようだが」
「実際異常はないよ。ただ戦闘になったらどれだけ魔力を練ることができるか、激しい運動にどれだけ耐えられるかはわからない。何せ師匠の作品とは言え人造のものだしね」
「無理はするな。絶対にだぞ」
「わかってますよ」
これ以上となく真剣な兄の表情に肩をすくめて答える。
父や伯父伯母、他何人かのいとこたちも真剣な表情で頷いていた。
(実際師匠の作品だからかなりのところまで大丈夫だとは思うんですけどね)
むしろ心配なのは"
もちろん頭ではわかっているのだが、感覚でわかっているかというとこれはもう疑問符をつけざるを得ない。
リハビリを繰り返して魔力を練る練習もしているが、どこまで出来るかという限界もあるし、その限界を実戦で試すのも怖い物はある。
(それを含めても緑等級レベルの戦力にはなると思うんですが・・・まあしょうがありませんか)
そんなことを考える息子の顔を「こいつ本当にわかってんのか」という顔で見ていた
(あ、嫌な予感)
果たしてその予感は的中する。
「そう言えばヒョウエ。お前の借金だがな」
「はい? ・・・・・・・・あ!」
「え? あっ!」
ヒョウエが愕然とした表情になり、一瞬遅れてリーザとモリィ、後ろで控えていたサナも同様の表情になる。
「???」
何が起きてるのかわかっていないカーラが、兄と叔父の顔を見比べていた。
にんまりとした顔のまま、ジョエリーが言葉を続ける。
「お前の借金は胸の"
ヒョウエの顔が盛大に引きつる。
周囲の面々にも理解の色が広がりつつあった。
その大半がにやにやしているのはヒョウエの人徳という物であろう。
「み、緑等級の冒険者としてならまだそれなりに・・・」
言い訳を並べる息子を無視し、外行き用の爽やかな笑顔をモリィ達に向けるジョエリー。
「さて、そちらのお三方。私は冒険者の世界には詳しくないが、緑等級冒険者の実力でこいつの借金を返せると思うかね。あるいはダーシャ伯爵家の財産をなげうって肩代わりをできると?」
「あー・・・まあ、無理じゃないっすかね」
苦笑するモリィ。
「叶うならばそうしたいところではありますが・・・」
「伯爵家の財布を逆さまにしても無理でございましょうね」
リアスとカスミも大体同じ反応だ。
三人の反応に満面の笑みを浮かべるジョエリー。同様の表情になる王族が十人ほど。
「これは困ったなあ、兄者。ヒョウエが借りた金を返す当てがなくなってしまったぞ?」
「全く困ったものだな、弟よ。いくら王族と言えども、国庫を私するわけにはいかん」
「・・・」
そっくりの悪い笑みを浮かべる兄弟、更に引きつるヒョウエの顔。
ここにフィル宰相がいれば、深く溜息をついていたことだろう。
「これはあれだな、兄者」
「そうだな、弟よ。婚姻をもって借金を相殺するのが妥当なところだろうなあ」
「ファッ!?」
「ええっ!?」
「やっぱりそうくるかー!」
驚いているのはモリィとカスミだけだ。
この場にいる人間の大半はニヤニヤ笑いを浮かべているし、リーザ、サナ、リアスは頭を抱えている。
ヒョウエは言うまでもない。
よくわかっていない顔のカーラが姉に視線を向けた。
「カレンお姉様、こんいんってなに?」
「つまり、お父様の娘の中から誰かヒョウエのお嫁さんにしようって事よ」
「! わたし! じゃあわたしがお兄様のお嫁さんになる!」
はいはいはい!とアピールする幼女の姿に、約一名を除いて微笑ましげな表情になる一同。
その約一名の表情を楽しみながら、カレンが愛しい妹に顔を近づける。
「ねえカーラ。そのことなのだけれど、姉様もヒョウエのお嫁さんになっていいかしら?」
「・・・」
兄の首にしがみつきつつ、用心深そうな目で姉を見る幼女。
基本的には優しいが、人を引っかけることも大好きな姉だ。
特にこう言う猫なで声を出すときには。
「・・・お兄様をとったりしない?」
「しないわ」
「独り占めしたりもしない?」
「しません」
「私のいないところでこっそり二人きりになったりとか」
「しないわ・・・まあたまには許して欲しいけど」
「・・・」
疑わしげな顔の妹。
天使のような笑顔を浮かべる姉。
もっとも、モリィや(ここにはいないが)"狩人"が見れば、詐欺師のそれでしかないが。
「・・・・・・・わかった」
長い沈黙の後、カーラが不承不承首を縦に振る。
「ああ、ありがとうカーラ! 愛してるわ!」
満面の笑顔でカーラ(とヒョウエ)に抱きつき妹の頬に口づけする。
その後顔を上げて、妹からは見えない角度で浮かべるのは邪悪な笑み。
「・・・」
引きつった笑みで返した後、視線を二人の不良中年に向ける。
「まさか本気じゃないでしょうね、伯父上?」
「さあ、どうだろうなあ? 少なくともカーラは本気のようだが」
周囲から送られるニヤニヤ笑い、微笑ましげな視線、何とも言いがたい表情。
だがそのどれ一つとしてヒョウエを助けてくれるものはない。
(誰か助けて)
天を仰ぎ、生まれて初めてヒョウエは心から神に祈った。
このタイミングで割と無駄な話だけど、気付いたからには書かずにはいられなかったんや・・・!