毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~ 作:ケ・セラ・セラ
この物語も佳境、もう少しお付き合いのほどを。
結論から言えば、ダンジョン・コアの操作は滞りなく完了した。
必死の努力でダンジョンの入り口をせき止めていた首都防衛隊、そしてあふれ出た怪物達に対処していた冒険者たちとシロウ達金剛眼の一族のおかげである。
「ダンジョンの中なら深部からでも操作できただろ、あれ?」
「逆にダンジョンの中だから出来るんですよ。外にいたら繋がらないんです」
「そんなもんか」
半壊したギルドハウスに侵入し、モリィが手早く金庫を開錠・・・するまでもなく金庫の外からダンジョン・コアに接続し、ダンジョンの内部に障壁を下ろし、取り残されていた冒険者たちを転移で脱出させる。
「後はモンスターどもを大人しくさせりゃ終わりか」
「・・・いえ。このダンジョン・コアであれらにアクセス出来ません」
「どういう事ですの?」
「あのモンスターは、このダンジョンが生み出したものではないってことです」
崩壊した壁の裂け目から外を眺める。
ダンジョンの閉鎖とシロウ達の参戦により形勢は明らかに有利になっていたが、ダンジョンから脱出してきた冒険者たちのフォローもせねばならず、楽観できる状況ではない。
「手を出すなよ?」
「お願いですから外に出ないで下さいまし」
「あれだけ注意されたのですからおわかりになっていますよね?」
「殿下。飛び出された場合、全力でお止めせねばなりません。ご自愛を」
「わかってますって」
異口同音に静止されてヒョウエがくさる。
(何もしてないのに)
と、本人は思っているが、まあ大体自業自得であろう。
「モリィたちはまだしもディグさんはそこまでまじめにやらなくてもいいでしょうに」
溜息と共にせめてものイヤミを口にすると、ディグが恐ろしくまじめな顔をしていた。
「・・・どうしたんです?」
「世の中には死ぬより辛いことも沢山あるのです」
それだけを答えて口を閉ざしたディグと部下たちの額に汗が浮かんでいるのを見て、ヒョウエはそれ以上考えないことにした。
「しかし僕が出ないにしても、このままでは被害が大きくなります。
僕は大人しくしていますからディグさんたちが援護に行って頂けませんか?」
「・・・」
数瞬考えた後、ディグが首を縦に振った。
「ありがとうございます。それでは・・・"
「おお・・・!」
立て続けに発動されるヒョウエの呪文。しかも無音発動だ。"心臓"があったときのように瞬時に同時発動しているわけではないが、それでもこの速度と数は尋常ではない。
ディグと部下たちが自分の体を見下ろして驚愕の声を上げる。
「なんと・・・これだけの人数に、こんな短時間で」
「言ったでしょう、緑等級クラスの力はあると。さ、早く」
「はっ!」
ヒョウエに敬礼をすると、ディグ達エージェントが飛び出していく。
獅子の顔を持つ巨大なカニに集団で襲いかかり、あっという間に傷だらけにしていくのを見て後ろを振り向く。
「さすがですね。モリィもお願いできますか」
「こっちに来るとまずいだろ・・・まあこの分ならだいじょうぶか。わぁったよ」
顔をしかめはしたものの、割れ目から身を乗り出して雷光銃を構える。次の瞬間、正確無比な雷光が次々とモンスターに降り注ぎはじめた。
通常出力の連射は大型モンスター相手に痛打を与えるには至っていないが、目や急所を狙った一撃は牽制として非常に有効で、動きが止まったところに周囲からの攻撃が集中している。
「・・・」
「お嬢様、わたくしどもはヒョウエ様の護衛ですので」
「わ、わかってますわそんなことは!」
何か羨ましそうな顔をしていたリアスが、慌ててカスミの言を否定する。
ディグ達の参戦とモリィの援護射撃で完全に趨勢は人間側に傾き、十分ほどしてダンジョン前広場は静かになった。
「逃げたのが何匹かいるな! 追うか、大兄?」
「落ち着け、こわっぱ。それだからお前は階位が上がらんのじゃ」
「ちぇーっ」
シロウの仲間である坊主頭の大男が、僧衣の老婆にたしなめられてふてくされている。
軍人、冒険者、ディグ達。周囲から笑いが起き、シロウやたしなめた老婆が苦笑していた。
ヒョウエやシロウ達の術で応急処置を施した後、軍人や冒険者、ギルド職員の感謝の声に見送られてダンジョンを後にした。
途中の道で軍の部隊とすれ違う。
指揮官は事態が沈静化したことを聞いて心底ほっとしたようだった。
強化具現化術式などが配備されている魔導化部隊ではない、通常の歩兵部隊だったのでまあ当然の反応だろう。
そのままヒョウエたちは王宮へ帰還。
馬を返し、シロウやディグ達と共にあてがわれた部屋へ向かった。
「・・・?」
自室へ戻る途中、すれ違う廷臣、侍女たちの視線に違和感を感じて首をひねる。
「なんでしょう? 怖がられてる?」
「召使いを手荒に扱う主人がああした視線で見られることもありますが、それともまた別のような・・・」
リアスも首をひねっている。
一方でモリィは何かに気付いた顔だった。
「あー・・・わかっちまったかもしんねえ」
「奇遇でございますね、わたくしもですモリィ様」
二人して溜息をつく。
「ひょーうーえー・・・? おとなしくしていなさいと言わなかったかしらぁ・・・?」
「ぎゃああああああ、出たぁぁぁぁ?!」
部屋で待ち構えていたのはこの世の外より来たりし悪魔王、ではなく。
ディテク王国第二王女カレン・スー・ボッツ・ドネであった。
もっとも、恐ろしさで言えば悪魔王と大差ない。
愛しの
ヒョウエの顔が盛大に引きつり、三人娘たちも思わず一歩退かせる恐怖の具現。
そしてディグたちの顔には達観、むしろ仏の如き悟りの表情が浮かんでいた。
合掌。