毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~   作:ケ・セラ・セラ

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10-22 黄金竜の夢

 アルテナが目覚めた。

 ぶるっと体を震わせた後、そこにうずくまっていたのは髪に色とりどりの飾り紐を編み込んだ金髪の幼女。

 

「ごはん」

 

 その第一声を聞くなり、ヒョウエはサナを厨房に走らせた。

 焼き菓子やすぐ作れるサンドイッチで取りあえずをしのぎ、暖めたシチューの寸胴鍋がそれに続き、それらが胃袋に消えた頃にメインディッシュの肉料理がやってくる。

 

「これだけの料理が一体この体のどこに消えてくんでしょうねえ・・・」

「人ごとみたいに言ってるけど、お前も割と大概だからな?」

 

 モリィの言葉にリーザやリアスがうんうんと頷く。

 結局アルテナは、子牛一頭ほどの肉を喰らい尽くしたところで満足した。

 

 

 

 金色の幼女が満足げに食後の茶をすすっている。

 

「ここの料理は中々うまかったの。サナのに勝るとも劣らぬ」

「ありがとうございます」

 

 給仕していたサナが微笑んだ。

 王宮の料理人というのはつまり、その国で最高の料理人だ。

 サナにとっても最上の称賛だろう。

 

「ま、サナ姉の料理は世界一ですからね」

「なんでヒョウエくんが得意げなのかな? ヒョウエくんのわがままに応えるためにサナ姉さん頑張ったんだよね?」

「い、いやまあそれはそうなんだけど・・・」

 

 冷たい視線(目を閉じているが)をリーザに向けられてあたふたするヒョウエ。

 サナがくすりと笑った。

 

「ま、まあそれはともかく」

「あ、誤魔化しやがった」

「ごまかしたー」

「ええいうるさい。アルテナは体調は大丈夫ですか?」

「仔細ない。少し体が重いくらいじゃ」

 

 (いや、あれだけ食えばそりゃそうだろ)とその場の全員が思ったが口にはしない。

 と、アルテナが長椅子をよじ登り、ヒョウエの膝の上に這い乗る。

 

「ふむ」

「あの、アルテナさん? 何をしてらっしゃるので」

「見ての通りお主の膝に座っておる。何か不満か?」

「いやその・・・」

 

 カーラのように行儀良くちょこんと座るのではなく、あぐらをかいてふんぞり返るアルテナ。

 

(カーラ様に見られたら戦争が起きるな・・・)

 

 と、その場の誰もが思ったのは言うまでもない。

 

 

 

 しばらくしてそろそろ図書館に戻ろうか、となったときにメルボージャとサーベージがやってきた。

 アルテナが覚醒したのを聞きつけて飛んできたらしい。

 

「おお、間に合ったか!」

 

 歓喜の表情になるメルボージャに、ヒョウエの眼が細められた。

 

「間に合ったか、というのはやはり彼女の力がクリス先生の攻略に必要になると言うことですか?」

「うむ」

 

 メルボージャが大きく頷く。

 

「まず絶対に必要なのは、クリスめが黄金竜の心臓を操ろうとしていた場合、その対策としてこの娘と、そなたらが与えた黄金鱗の虹竜の左目を削りだして作った指輪・・・今はアルテナと一体化しておるその指輪が必要になろう」

「そもそも竜脈を制御するために使っていたんですよね、あれ」

「うむ。お師匠様たちが新しく世界を作り直したときに大地は新たに生み出されたが、その底ではやはりオオヤシマとなった始祖の竜の血脈が依然として流れ続けておる。

 わしはそれを利用してあそこに拠点を作ったのじゃ」

「なるほど・・・それで他にもなにかありそうな感じですが」

 

 もう一度メルボージャが頷く。

 

「拠点への侵入のことじゃ。分体であるわしも転移の術は使えるが、やはりオリジナルには及ばん。一方で奴は正真正銘の真なる魔術師。この身で奴の張った結界を破って転移を行うことは恐らく不可能。

 しかも六千年の研鑽と悪魔の力を借りていることを考えれば、どのような奥の手を持っているかは想像もつかぬ」

「六千年間研鑽し続けたことに関しては全く疑ってないんですね?」

 

 笑みを浮かべて問うと、メルボージャもまた笑みを浮かべる。

 

「それは当然。お師匠様の弟子じゃからな」

 

 一瞬懐かしそうに眼を細めた後、表情を元に戻す。

 

「ともかく、奴のところ、わしの本体のいた場所に到達するには離宮の封印を破り、地下通路を通り抜けて行くしかないと思うておった。

 じゃが、お前の迷宮と黄金の迷宮が繋がっているというならば話は別じゃ。

 黄金の迷宮には奴といえども戦力を配置することはできん。

 少なくとも離宮を襲ったような、中級から下級の悪魔では戦力を消耗するばかりじゃし、あの迷宮を突破できるような上級の悪魔が集団でおるならば、こんな回りくどいことはせずにとっととこの国を滅ぼしておるじゃろうよ」

 

 ごくり、とモリィが喉を鳴らした。

 

「どれだけ強いんだよ黄金の迷宮の敵」

「安心しろよ、小娘。原初の魔獣よりゃ弱ぇ」

「それのどこをどう聞いたら安心できるんだよ!?」

 

 肩をすくめるサーベージに、モリィが突っ込む。

 まあ神話の時代の大魔獣よりは弱いと言われても確かに全然安心は出来ない。

 しかも原初の魔獣と渡り合った張本人、史上最強の剣士がそれを言うのだ。

 モリィならずとも突っ込みたくはなる。

 

「続けるぞ。ともかくわしらは"郊外の保養地(サバーブ・リゾート)"と黄金の迷宮を通って水晶の間に到達する。そもそもあそこは黄金の迷宮の一角を切り取って作った空間じゃからな。境界には封印が施してあるが、わしならそこを開ける。

 そこから先はわしの持って来たあれとお前次第じゃ」

 

 先日二人が戻ってきたときに説明を受けていたヒョウエが頷く。

 

「成功率はどれくらいあるでしょうね」

「まあゼロでは無い」

「足りない分は勇気で補えってわけですか、燃える展開ですね」

 

 肩をすくめる弟子に師匠が苦笑する。

 

「そう言うな。わしとしてはこの体で出来ることは全部やったつもりじゃ。

 正真正銘これ以上はお前に賭けるしかないんじゃよ」

「まあそれもわかりますけどね」

 

 ヒョウエも苦笑。

 

「しかし、"郊外の保養地(サバーブ・リゾート)"であれば僕のダンジョンマスター権限で最深部まで転移できますが。そんな真性の怪物のうようよするところを通って行けっていうのは、もしやアルテナに?」

 

 老婆が頷いた。

 

「アルテナは黄金の虹竜の娘で、かつその精髄である指輪を受け継ぐ身。ダンジョンマスター同様に黄金の迷宮を操れる可能性がある」

 

 周囲の視線が一斉に金髪の幼女に集中する。

 

「?」

 

 よくわかっていないアルテナがかわいらしく小首をかしげた。

 

「ダンジョンを操れるというのは断言はしないんですね」

「試してみもせずに断言もできるわきゃなかろうが。まあこれも結局のところはアルテナ次第と言うことになろうかの。正直これがもう少し成熟していれば良かったのだが」

「よくわからんが、やらねばならんのならやってみるしかあるまい。まあ安心せよ。わらわであれば何とかなろうほどにな」

 

 ふんっと胸を張り、断言するアルテナ。

 笑みを浮かべ、ヒョウエがその頭を撫でてやった。

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