毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~   作:ケ・セラ・セラ

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第三章「最も深き迷宮」
10-23 集う力


「深い闇の中にいるときにこそ、光を見つけることに集中しなければならない」

 

     ――アリストテレス――

 

 

 

 

 閑散とした市内。

 市民の姿は全く見えず、兵士と魔道兵器や攻城兵器だけが街路にひしめいている。

 兵士に比べれば数は少ないが緑以上の上級冒険者たちもだ。

 そうした冒険者たちの待機場所で溜息をつく男がいる。

 

「やれやれ、レスタラの時も世界がひっくり返るかと思ってたら、今度は悪魔か。冒険者としては腕が鳴るぜと言いたいところなんだけどよ」

 

 愚痴をこぼすのは大剣を背負った快活そうな角刈りの大男。

 レスタラ事変の時に三人娘やサフィアと共闘した黒等級冒険者だ。

 

「ヒッサーの奴もくたばっちまいやがったし、"六虎亭の大魔術師(ウィザード)"も"翼の騎士"もいねえと来てる。

 ・・・あんたらは実際に戦ったんだろう? 奴らの強さはどんなもんだ?」

 

 大男が眼を向けるのは屈強の荒くれが揃うこの場でも一際目を引く大男と眼鏡の麗人、ゴーグルをかけた小柄な少女。

 便宜上同じ場所で待機しているイサミとアンドロメダ、マデレイラだ。

 水を向けられ、少女は怯えたように麗人の後ろに隠れてしまった。

 

「ああすまねえ。別にどうこうするつもりはないから安心してくれよ、お嬢ちゃん」

 

 苦笑する大男にアンドロメダも苦笑で返す。

 

「申し訳ありません。この子は箱入りなので・・・」

「らしいな。ゲマイの魔道君主家のお嬢様だったか」

 

 こわごわと顔を出したマデレイラに、にっこりと(本人主観)笑いかける大男。

 

「ひっ!」

 

 怯えた顔になって、少女が再びアンドロメダの影に引っ込む。

 大男がちょっと傷ついた顔になり、仲間の小人族(バグシー)がにやにやしながら肩を叩いた。

 

「ガラにもねえことするからだよ。テメェのツラがまずいのはわかってるだろう?」

「汝自身を知れ、でござるな」

「うるせえよ! 黙ってろ!」

 

 仲間に噛みつく大男を見て、イサミとアンドロメダが苦笑した。

 

「話を元に戻すぞ。俺達は戦ったと言っても魔導巨人(ハーキュリーズ)でだからはっきりしたことは言えんが、生身で戦うとなるときついだろうな。

 緑(パーティ)なら同時には二匹か三匹相手にするのが限度だろう。あんたらでも十匹越えたらかなりきついんじゃないかね」

「ふーむ」

 

 大男が顎に手をやって考え込む。いつの間にか周囲の人間も聞き耳を立てていた。

 イサミもアンドロメダも、緑等級の証である翡翠の板を首に下げている。金等級冒険者である師匠についてあちこち引きずり回された結果だが、それが彼らの言に説得力を与えている。

 別のところから声が飛んだ。緑等級の中でも腕利きと目される(パーティ)の人間だ。

 

「何か特殊能力のたぐいはないのか? 飛行速度は?」

「飛行速度はそこまで速くない。鷲獅子(グリフォン)くらいだな。特殊能力については俺の見た範囲では使ってこなかったし、離宮を襲ったときもそれらしきものは特になかったらしい。

 (ヒョウエ)が色々調べてたが、今まで目撃例がないらしくてマジでわからんのだとさ」

「悪魔だからなあ」

「正直おとぎ話の中の代物だとばかり思ってたぜ」

 

 この世界でモンスターと言えば、ダンジョンで生まれたそれと、地上の生物と交わって生まれたその子孫が主、後はせいぜい真なる龍の子孫である亜竜くらいで、文字通り世界の外からやって来た悪魔などは真の龍と同レベルで伝説の中の代物だ。

 むしろ歴史上に何度か出現している真の龍の方が確認された例は多いかも知れない。

 

「手の内がわからないってのはやりにくいな」

「腕のいい霊術師がいればいいんだがな。もしくは召喚師か、強力な解呪の術が使えるやつか」

「そんなのがゴロゴロしてたら苦労はしねえよ」

「"白の翼"の箱仲間(パーティメンバー)じゃあるまいにな」

 

 霊術師というのはつまりクリスやスィーリのような召霊の術の使い手である。

 霊魂の専門家でもあるので、人によっては幽体離脱などの術が使えるものもいる。

 五十年前にレスタラを撃退した"白の翼(ヴァイスフリューゲル)"の仲間だった霊術師アラタズなどが有名だが、素質を持つものが治療術師と同じくらい稀少な上、使いどころが余りない術なので人気がない。当然なり手も少なかった。

 

 一方で召喚師は呼び出した霊魂にかりそめの肉体を与える更に高度な術の使い手だ。

 それ自体が極めて高度な上、下手をすると転移の術以上に使い手が少ない。

 事実、現在有名どころの冒険者で召喚師と言える人間をこの場の誰も知らなかった。

 

「まあいいや。ぶった切れば死ぬんだろ? それでどうにかなるならそうするしかねえやな」

「まあそうだな。だが魔導甲冑でも一対一じゃ勝てないだろう相手だ。一対一で相手取れるのはそれこそあんたか、もう一人二人くらいだろうさ」

 

 サーベージは別枠として、ディテクでは最高の剣士の一人であろう男が溜息をつく。

 

「六虎亭の大魔術師・・・あれ王子様だったんだっけ? あいつがいりゃあ、頼もしいんだけどよ」

「あいつはあいつでやる事があるらしいからなあ」

 

 イサミ達も離宮からの地下通路を迂回して敵の本丸に向かうバイパス作戦のことは知らされているが、口にするわけにはいかない。

 溜息をついてごまかすしかなかった。

 奥の方でざわめきが起こる。

 

「失礼」

 

 そちらを向くと、人の群れをかき分けて現れたのは身長190を越える長身の女性だった。

 ベリーショートのくすんだ金髪、筋肉質のスマートな体を真なる魔法文明時代のものらしい材質不詳の、光沢のあるつなぎに包んでいる。

 

「わ、モニカ!?」

「久しぶりだな、マデレイラ・・・というほどには時は経っていないか」

 

 マデレイラに笑いかける女性はモニカ・シルヴェストル。ライタイムの黒等級冒険者で、先だっての大陸横断レースでヒョウエたちと競い合い、共闘した仲だ。

 後ろには仲間らしい冒険者たちが並んでいる。全員が女性で、いずれも黒に黄金の雷の紋章を体のどこかにつけていた。

 

「そうか、ライタイムからの援軍ってあんたたちのことか。こいつは心強いな」

「貴公は?」

「ああ、俺はイサミ・ハーキュリーズ。表にあるデカブツの作者で、ヒョウエの兄弟子だ。

 そっちは嫁さんで同じく兄弟弟子のアンドロメダ。マデレイラの姉貴分でもある」

「それはそれは。初めまして、モニカ・シルヴェストルです。お見知りおきを」

 

 マデレイラの姉貴分というところで察したのか、モニカが貴人に対する礼をする。

 同じく丁寧に礼を返してアンドロメダが微笑んだ。

 

「お気遣いなく。今は一介の魔道具職人ですので」

「ではそのように。ああ、こちらはキャロル、シャロン、カーラ、カマラ。私の仲間だ」

「よろしく」

 

 周囲からの安堵と期待の視線を受けつつ、モニカが仲間を紹介した。

 

「これはこれは、美人揃いで結構なことですな。もうやる気が出ちゃいますよ」

「おや」

 

 後ろからかかったどこか軽薄な声。

 振り向いたモニカの顔に笑みがこぼれる。

 こちらも大陸横断レースで競い共闘した冒険者、"音速の騎士"ゴード・ソニック。

 誇張でも何でもなく音の壁を越えて走れる緑等級の冒険者だ。

 

「まあ俺は伝令役を仰せつかってるんで、同じ場所で共闘するかどうかはわかんないけどね。ともかくがんばろうぜ、姐さん」

「ああ」

 

 かつてのライバルにして戦友が、再び固い握手を交わした。




「最も深き迷宮」はロードス島戦記・伝説で語られるデーモンの王、魔神王のいた迷宮。

そしてものすごくどうでもいい話。
黒等級パーティのメンツはなろう作品「おっちゃん冒険者の千夜一夜」コミカライズ版のSランクパーティ『黄金の牙』のメンツをイメージしてます。作画が同じ人だけに、懐かしのコミック版ダンジョンマスターのイアイドーっぽいのがいたりして楽しいw

黒箱リーダーが言ってる「ヒッサー」もコミック版ダンジョンマスターのキャラから。
多分前回死んだ別の黒等級パーティのひと。

モニカの仲間はモニカのイメージモデルになった女性ヒーロー、ミズマーベル(キャプテンマーベル)の歴代継承者です。
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