毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~ 作:ケ・セラ・セラ
「さてと」
メルボージャが居間のテーブルに何枚かの図を敷き、作戦会議が始まった。
「大雑把じゃがまずここがアイズナー離宮。地下通路はなだらかに降下していって、水平距離ではメットーの西北10kmほどのところに『水晶の間』――わしの本体がいた場所がある。
その周辺に広がるのが『黄金の迷宮』、つまり黄金鱗の虹竜の作り出した迷宮じゃ。
水平距離で言えば"
地上でメットー軍が離宮を攻めるのと同時にわしらもこちらから入り込み、"
ここまではよいな?」
周囲が頷くのを確認して、メルボージャは別の地図を数枚広げた。いずれもかなり大きく、複雑な構造が何百の単位で描かれている。
「こいつぁ・・・ダンジョンの地図か?」
「ああ。『黄金の迷宮』のだ」
渋い顔をするのはサーベージ。酸っぱくなったワインを飲んでしまったような表情。
「お師匠さま、何か?」
「この迷宮、俺がマッピングしたんだよ。魔法使えば済むものを、隅から隅まで歩き回らせやがって・・・」
「ここは桁外れの魔力濃度と言ったじゃろうが。本体の力をもってしても限界がある」
「死ぬかと思ったぞ! それも何度も!」
「治してやったからええじゃろ。話を続けるぞ」
亭主の文句をさらりと流し、地図を指さす。
「と言うわけでジジイの尊い犠牲の上に調べられた黄金の迷宮の構造図じゃ。頭に叩き込め」
「これ全部かよ」
げんなりした顔のモリィ。
「アルテナがいたら必要ないのではありませんの?」
「そうじゃそうじゃ。わらわがいれば問題ない」
「だといいんですけどね。まあ常に予想外のことは起こりますので」
自分が頼りないと言われたように聞こえるのか、むすっとした顔のアルテナをなだめつつ視線は地図に釘付けになるヒョウエ。
カスミとティカーリ、愚痴りつつモリィも真剣な眼差しを地図に走らせている。
サフィアも額に指を当てていることからして、"
「小僧、自分のダンジョンの構造は頭に入っておるな?」
「ええまあ。モンスターがいなければ、目をつぶっててもガーディアンの間までたどり着けますよ。ただ、構造が多少変化してる節があるのと、最近は潜る暇がなかったのでそのへんはダンジョンコアを使って調べた方がいいとは思いますが」
「よし。まあ一番深いのはガーディアンの間じゃろうが、そこから通じているとも限らんからの。それは忘れるなよ」
「はい」
しばらく地図に目を走らせた後、傍らの姉の方を見る。
「裏口突入はここにいる面々として、兄さんたちとマデレイラ、シロウさんたちにモニカさんたちも地上攻略組ですよね」
「そうね」
「指揮はまた姉上ですか?」
カレンが首を振る。
「今回はさすがにジョエリー叔父様よ。冒険者組とうちの手の人間は任されてるけど」
「QBさんも?」
「ああ、現場での冒険者の指揮をしてもらうことになってる。まあ伝える命令が前進と撤退くらいだから連絡役と言った方が正しいかもしれんがな」
「QBさん、前回は活躍したらしいですね」
「ああ、ボクは割と最初の方で外したんで余りは見てないけど・・・」
いつもの調子で話しかけようとしたサフィアが僅かに戸惑い、顔を背けた。
つい先日青い鎧とヒョウエが同一人物であることに気付いてしまったその耳が少し赤い。
「・・・」
何と言ったらわからないヒョウエ。それなりに親しい、姉の友人ポジだった人間の態度がいきなり変わればそれは戸惑うだろう。
気付かないふりでモリィが言葉をかぶせる。
「まああたしらが軍隊みてぇに足並み揃えて行進ー、とかできるわけもねぇしな」
「そう言う事だ」
元金等級冒険者"ジェット"であるスパイマスターは、僅かに笑みを浮かべて首肯した。
「まあニホンなら違うんでしょうけどね」
「ほう。あちらでは冒険者にも軍隊訓練をしてるので?」
「ええ。ニホンでは五つか六つくらいから全ての子供が軍事教練を受けるそうよ」
「マジか!?」
「恐ろしいところじゃのう・・・」
「ニホンって凄い軍事国家だったんだな」
驚愕の事実にざわめく室内。ヒョウエが眉を寄せる。
「何かとんでもない勘違いしてませんか? サーベージ師匠の時代ですらそんなことしてませんよ」
「あら? でもニホンでは子供は例外なく一箇所に集めて教育して、その中に初歩の軍事教練もあると聞いたけど。子供には軍用の背嚢を支給するし、13になったら男は士官、女は海兵の服を着て学校に通うって」
「あ・・・いやまあ、嘘ではないんですけど多分かなりニュアンスが違うというか・・・」
多分運動会の行進、ランドセルと詰め襟学生服とセーラー服のことであろう。
行進は当時の軍隊の基礎だし、ランドセルは歩兵の背嚢だし、詰め襟は士官服でセーラー服は海兵(セーラー)の服。
確かに軍事に慣れさせるための明治時代の制度が元なので間違ってはいない。間違ってはいないが色々違う。
「話しておくことはこれで全部かしら」
「だと思います」
話が一通り終わり、カレンが手元のメモに目を落とす。
「確認しましょうか。突入部隊はメルボージャ師にサーベージ師、ヒョウエ、モリィ、リアス卿、カスミ、レディ・セーナ、ミトリカ、ティカーリ、サフィア、アルテナ。
サナとリーザは地上で待機して、瞬間転移によるいざというときの緊急脱出とヒョウエたちとの連絡役」
周囲が頷くのを確認すると、カレンが心配そうな表情を浮かべた。その胸にはモリィ達がつけているのと同じ、リーザの心話の目印になる銀のペンダント。
「・・・ねえ、本当にヒョウエが行かないといけないのかしら?
もう水晶の心臓はないのよ?」
「今回は僕が行く必要があるんですよ。説明したでしょう?」
「今回も、でしょ」
カレンが唇を尖らせる。
「いつもそういうんだから」
「・・・」
困ったような、嬉しいような笑顔のヒョウエ。
しばらく二人が見つめ合い、ヒョウエがそっとカレンの頬に手を伸ばした。
「今まで帰ってきたでしょう。今度も帰ってきますよ」
「絶対よ」
「はい」
「後でカーラにもちゃんと話をしてきなさい」
「はい、姉上」
それで会合はお開きになった。
ダンジョン突入部隊
ヒョウエ、モリィ、リアス、カスミ、セーナ、ミトリカ、ティカーリ、サフィア、アルテナ、サーベージ、メルボージャ
アイズナー離宮攻略部隊
イサミ、アンドロメダ、マデレイラ、シロウ、モニカ、ゴード、QB
司令部待機組
カレン、"狩人"、サナ、リーザ