毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~ 作:ケ・セラ・セラ
「それでは我々はここまでです。ご武運を」
「今までありがとうございました。あなたたちもお気を付けて」
「はっ!」
ヒョウエの礼に、ディグ達が一糸乱れぬ敬礼を見せた。
王都郊外のダンジョン"
護衛の任を終え、ヒョウエたちを見送るディグ達。
それぞれに笑顔を見せて感謝を示すヒョウエと仲間たち。
僅かな時間の後、ヒョウエたち十一人の姿がふっと消えた。
同時刻、アイズナー離宮でも戦端が開かれていた。
「魔導砲部隊、術式貫通弾発射!」
「術式貫通弾発射!」
「てーっ!」
空中に、宮殿の屋根に、そして庭園に、無数にたむろするトンボの羽根を持つリザードマンのような悪魔、イサミ命名"ドラゴンフライ"の群れ。
四方を囲んだ魔導部隊の砲口から、離宮に対して魔力光が叩き付けられる。
地球でもこの世界でも、戦争のやり方は数千年前から基本的に変わっていない。
まず飛び道具を叩き付け、制圧射撃。
その後主力が前進して殴り合い。
石つぶてが投げ槍になり、弓になり、銃になり大砲やミサイル、空爆に。
石斧や棒きれが剣や槍になり、騎兵になり、ライフル銃になり、戦車に。
使う武装や戦術が変化したとしても、その手順は変わらない。
その基本セオリーに従って、前線指揮官は砲撃を叩き込み続ける。
日頃の訓練の成果を発揮し、高い射撃精度を発揮し続ける砲兵部隊。
それに満足そうに頷きながら、指揮官は望遠鏡を覗き込んだ。
アイズナー離宮の防御結界を抜けるとっておきの術式貫通弾は強力だが数が少ない。
「悪魔どもが出てくる様子はないか。貫通弾が尽きる前に結界の発生器を破壊できれば・・・」
「報告! 南東部分の結界が消失しました! 発生器の破壊に成功した模様!」
「よしっ!」
喜びを露わにして拳を握る指揮官。
こう言う時、大仰に喜んでみせるのも手練手管の一つだ。
「南東は通常魔導砲に切り替え、突入部隊を準備せよ! 残りの方面は事前の通達通り予備弾のみを残して砲撃を停止、発生器の破壊に失敗した場合はそのまま待機!」
指揮官の命令に従い、新たな動きが起こる。
慌ただしく伝令が走り、イサミやシロウ、モニカたち冒険者部隊、エルフの援軍も突入準備を整える。
戦いはこれからだ。
ダンジョンマスターであるヒョウエとリンクしたコアの力によって、彼らは300m四方はある大規模な空間に転移していた。
ガーディアンである
奥には隠し扉があり、ダンジョン・コアの安置所に繋がっていた。
ガーディアンはダンジョンが攻略されると再出現しない。
だが今、この空間には先客がいた。
「
100mを越える巨大なとぐろ。体幅も太いところで10m近くある。
ワーム。もしくはウィルム。「
蛇のような体にドラゴンのように見えなくもない頭部。足や翼はないが、明らかにただの蛇ではない。
「ガーディアンですの!?」
「
普通ならガーディアン級のモンスターが複数回出現することはありえん。
黄金の迷宮の影響が当時からあったと見るべきじゃろうな」
メルボージャの視線の先にはドームの隅に開いた巨大な穴。
「見た感じ直径50mはあんな」
「地上で見た連中も普通に通れそうでございますね」
モリィとカスミが頷く。
「しかし地上に出て来た連中、あいつ素通りさせたのか?」
「ダンジョンのモンスターは共食いしないからな」
「違うダンジョンのモンスターでもそうなのかな?」
「その辺議論の余地はありそうじゃが、黄金の迷宮の影響を受けたモンスター、もしくはこの迷宮そのものが黄金の迷宮の影響で生まれたと考えれば、同族と認識するのもないことではあるまい」
「取りあえずはあれ片付けるか。あの手の奴は再生能力が強いからな。サクッと片付けよう」
サーベージが親指で腰の刀の鯉口を切る。
「サクッと・・・?」
頭を持ち上げ、50mほどの高さから威嚇してくるワームにサフィアとティカーリが冷や汗を浮かべ、あきらめ顔のモリィがぽんぽんと二人の肩を叩く。
「よいではないか。その言や良し。それでこそ"
「ですわね」
逆に獰猛な笑みを浮かべるのはセーナとリアス。ミトリカやアルテナもやる気満々の表情だ。
ヒョウエが笑いながら手を上げた。
「戦うまでもありませんよ、師匠。こんなふうに」
「!?」
ヒョウエが手を振り下ろすと、一瞬にして巨大な壁がせり上がった。
それが100mはある
『・・・! ・・・!』
咆哮らしき声と内側から体当たりする震動。
だがせり上がった岩壁は微動こそすれ崩れる気配はない。
「さっさと行きましょう。僕たちには浪費していい時間も戦力の余裕もありませんからね」
「ちぇっ、つまんねえな」
サーベージが舌打ちして腰の刀から手を離す。
リアスとセーナも同様の表情で、カスミとティカーリが溜息をついていた。
「・・・お兄様たちは今頃ダンジョンの中かしら?」
「みたいです、カーラ様」
王宮の一室。
カーラの私室の長椅子にリーザ、カーラの姿があった。後ろにはカーラおつきの侍女たちとサナの姿。
不安がるだろうカーラを少しでも安心させるため、そしていざというときはカーラを護衛して逃げ延びさせるためのカレンの采配だった。
二人は幼少の頃からヒョウエのお付きだったため互いに見知っているし、カーラの方もそれなりに二人になついている。
本来二人はヒョウエとの連絡係、脱出担当としてカレンなり総司令官のジョエリーの傍にいるべきところだが、心話用の銀のペンダントと通信用の魔道具があるから大丈夫という理屈で押し通している。
公私混同だが今回に限っては誰も止めなかった。
「ねえねえ、リーザってヒョウエお兄様といつでも心でお話が出来るって本当?」
「ええ、本当ですよ。こう、私の《加護》で」
「いいな、いいな。私なんて四年もお話どころかお声も聞けなかったのに」
ぷうっと頬を膨らませる
顔こそ見えないものの、雰囲気でそれを察したリーザが微笑んだ。
サナや侍女たちも概ねその様な表情になっている。
「じゃあ今度ヒョウエくんにお願いして、魔法のペンダントを作ってもらいましょう。
直接話すのとは少し違いますけど、私を介して伝言が出来ますよ。
いえ、カーラ様ならそのうち直接話が出来るようになるかも」
「ほんと!?」
一転して喜色満面になるカーラ。
リーザの《心の耳の加護》は対象との親密度によって通信速度と精度が上下する。
サナとヒョウエ以外にも自身の母親とであれば同レベルでタイムラグ無しの会話が出来たし、多少ラグはあるもののジョエリーともペンダント無しで話すことができる。多分ヒョウエの母親ともできただろう。
以前から顔見知りでそれなりに親しいカーラとカレンなら、ペンダントの補助があればかなりのところまで行くはずだ。
先ほどまでの不安はどこへやら、有頂天になって笑顔の幼女。
カーラの横に座っていた彼女付きの女官が視線でリーザに感謝の意を伝え、雰囲気でそれを察したリーザが微笑んで返した。
なお今回ワームに大地虫という訳を当てたのは「14へいけ!」で有名なドラゴン・ファンタジーシリーズネタ。
多分原語ではドラゴン系の存在だと思うんですけど、翻訳で大地虫にされてしまい、日本語版のイラストもそっち系になってしまった悲運のモンスターw