毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~   作:ケ・セラ・セラ

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10-27 ディテク=コーミィ

 45度ほどの傾斜の地下洞窟、もしくは地下通路。

 そこをヒョウエたちが歩いていく。

 常人ならただ降りるのも苦労するような険路だが最低でも緑等級に相当するような面々のこと、王都の街路を歩いているように足取りは危なげない。

 

 ちなみに地下通路の入り口はダンジョンマスター権限で厳重に塞いである。

 その内またダンジョンの魔力干渉で道が開くかも知れないが、取りあえずは安心だ。

 地竜の巣から十分ほども降りたところで、ふとヒョウエが立ち止まった。

 

「空気が変わりましたね」

「みたいじゃの」

「ここからは黄金の迷宮と言うことか」

 

 頷くのはメルボージャとセーナ。ミトリカやアルテナも「ああ」と納得した顔になっている。

 

「そうなのかい、セーナ?」

 

 サフィアが横のエルフの王女に首をかしげてみせた。

 この二人、気があったのか先ほどからあれこれ話をしながら歩いている。

 ティカーリが「こいつは果たして話の通じる常識人かそれともセーナの同類か」という目で注視していたがそれはさておき。

 

「うまくは言えないが、大気に満ちる精霊の色というか香りというか・・・そんなものが違う。

 ヒョウエは上の迷宮のダンジョンマスターであるし、"残りし者(ジョ・ラガ)"は真正の真なる魔術師の分け身だ。彼らもそのへんを感じとったのだろう」

「へぇ。さすがエルフ、大したもんだね」

「オレも気付いてたぞっ!」

「うんうん、ピクシーもすごいすごい」

「わらわもじゃ!」

「はいはい、さすが伝説の竜」

 

 サフィアに褒められて、えっへんと胸を張るミトリカとアルテナ。

 ほほえましさに頬をゆるめつつ、ティカーリが苦笑を浮かべる。

 

「その辺はセーナやミトリカが凄いだけだからね? 私みたいな普通のエルフは全然わからないから。多分ピクシーも普通のひとはわからないんじゃないかな」

 

 セーナは神の直接の加護である"精霊神(アウレリエン)の《加護》"、ミトリカはピクシーの突然変異体であるドータボルカス、アルテナは言わずもがな黄金の迷宮を生み出した黄金鱗の虹竜の転生体だ。

 いずれもそれぞれの種族の平均を大きくはみ出た連中ばかりで、(エルフとしては)鍛えた凡人でしかないティカーリがもの申したくなるのもしょうがないところだろう。

 閑話休題(それはさておき)

 

「ではここからわらわの力で一番深いところに跳べばいいのかの?」

「いや、念のためにもう少し奥まで入ることとしよう。まだここは厳密な意味では迷宮内部ではなかろうからな」

「わかった」

 

 メルボージャの言葉にアルテナが頷き、それが合図であったかのように面々は歩みを再開した。

 

 

 

「魔導甲冑部隊、突撃!」

「突撃!」

 

 黄色と赤に黒のラインという派手な魔導甲冑の部隊が百人ほど、次々に大地を蹴る。50mを越える堀を飛び越え、一足飛びに対岸の離宮を目指す。

 「ディテク=コーミィ」。先だってのレスタラ戦役でも活躍した、国名を冠した最精鋭部隊だ。離宮を守った前回とは逆に、今度は攻略する側。

 数少ない、限定的とは言え飛行能力を持つ魔導甲冑を支給されており、魔導兵器の質においても兵士の練度においても間違いなく最優の部隊。最先鋒を命じられるのも当然の精鋭達であった。

 

「怯むな!」

「命を惜しむな、名を惜しめ!」

 

 全身から火を吐きながら宙を飛ぶ黄赤の甲冑達。

 その後方では術師部隊が陸上部隊の渡河のため、橋を造っている。

 ディテク=コーミィの仕事は橋を造るための援護だ。

 

 壁術師が堀の底から壁を出現させて橋の土台にする。氷を操る術師たちがその周囲を凍結させて補強する。

 十世代ほど前のオリジナル冒険者が生涯をかけて整備した魔術工兵部隊。

 

「おお・・・!」

 

 見守るディテク軍陣営から感嘆の声が漏れた。

 魔導甲冑部隊が堀を跳びこえる僅かな時間で、その真価を発揮するのは今とばかりに、驚くべき速度で橋が形成されていく。

 だが、望遠鏡を覗き込む指揮官は浮かない顔をしていた。

 

「おかしいな。何故奴らは迎撃してこんのだ?」

「奴らには飛び道具がありません。羽根こそありますが陸戦のほうが得意なのか、あるいは引き込んで殲滅しようとしているのでは」

 

 参謀の一人が述べた意見に首を振る将軍。

 

「だとしても渡河橋が出来ればこちらの主力が雪崩を打って押し寄せるのは理解出来ているはずだ。あいつらはともかく、あいつらを指揮するものには人間かそれ以上の知性がある」

「裏切者の真なる魔術師とやらですか・・・地下にあるという場所で何か作業をしていてこちらに手を出せないというのはありえそうですが」

「そこまで行くと希望的観測でしかないな。今は見守るしかないか」

 

 言葉を切って再び望遠鏡を覗き込む。

 そして先陣を切ったディテク=コーミィの最初の一体が対岸に足をつけようとした瞬間。

 

「!?」

 

 雷光銃のフルチャージ攻撃にも匹敵する光芒が走り、先頭の魔導甲冑数体が蒸発した。

 蒸発し損ねた魔導甲冑の一部が堀に落ち、ジュッという音を立てて水蒸気を上げる。

 二発、三発。

 続けて放たれた光芒が次々と後続の魔導兵達を蒸発させ、そのたびに魔力の光芒が包囲軍の頭の上を通り抜けていく。

 

「な・・・」

 

 望遠鏡の視界には、何が起きているかがはっきりと映っていた。

 対岸にいたドラゴンフライの一匹が、獲物を丸呑みする蛇のように関節を外して顎を大きく開く。

 次の瞬間、その口の中からあのまばゆい光芒が撃ち出されて再び数体の魔導甲冑が蒸発した。

 光芒を吐き出した個体は動かなくなり、見る間に黒く色を変えて塵のように崩れ去り、消滅する。

 

 メルボージャかヒョウエが見ていれば、召喚されたかりそめの肉体が存在し続けるための力を全てエネルギーに変えて光芒として放ったのだとわかったろう。

 だが魔導の専門家でなくともわかる事がある。歴戦の軍人なら尚更だ。

 呆然としていた将軍が顔色を変えた。

 

「非常通信! 工兵部隊作業中止! 自分たちを守るための防壁を作らせろ!」

「はっ!」

 

 即座に魔道具と心術師による通信が飛ぶ。

 やきもきする数瞬の間が過ぎ、その間にも王国の最精鋭部隊は次々と光芒の中に消えていった。

 

「・・・!」

 

 ぎり、と歯を食いしばる将軍。

 ディテク=コーミィが壊滅して、光芒の狙いが上空から水平になる。

 狙いは対岸の部隊と・・・橋をかけている工兵部隊。

 今度は数本の光芒が一度に放たれ、20mほどのところまで橋を造っていた工兵部隊と、対岸の魔導砲兵を直撃した。

 

「・・・おお!」

 

 光芒が収まり、歓声が上がった。

 壁術師の作った防壁に守られていた砲兵部隊は何とか無傷。

 水上の工兵部隊も、即座に作り上げた氷と岩の防壁で何とか難を逃れていた。

 ディテク=コーミィが文字通り命と引き替えに稼いだ時間が彼らを救ったのだ。

 

 だが即席に作っただけあって強度は足りない。

 人的被害こそなかったものの壁はほとんどが光芒によってえぐられ、場所によっては中の術師たちの顔が見えている。

 

「工兵の撤退急がせろ!」

「無理です! 間に合いません!」

 

 司令部で上がる悲鳴。

 もう一度呪文を詠唱する術師たちより、代わる代わるに光芒を吐き出す悪魔達の方が次弾は早い。

 対岸に並んだ悪魔達の喉奥に光が集まり、誰もが諦めたとき。

 

「"緑の盾"!」

 

 半透明の、かすかに光る緑色の壁が光芒を防ぎ止めた。

 光芒と防壁はしばらくの間拮抗し、やがてほとんど同時に消失する。

 壁の消えた後に立つのは褐色の肌に長い耳の戦士達・・・ズールーフの森のエルフの戦士達だ。

 呪文を詠唱するもの、矢を放つもの、槍を構えて接近戦に備えるものと様々だが、その全てが水上に立っている。

 その先頭に立つのは黄金の三叉戟と黄金の巨大な戦輪を持つ烈女。

 司令部に軽装の兵士が駆け込んでくる。

 

「伝令! サティ王太子妃殿下より、『抜け駆けご無礼、渡河を援護する』と!」

「助かった!」

 

 司令官が――今度は演技ではなく――天を仰いで安堵の息をつく。

 即座に表情を引き締め、矢継ぎ早に指令を飛ばす。

 

「架橋を継続! どの部隊でもいい、堀を越えられるものは全力で渡河し、それを援護せよ!」

「了解!」

 

 一糸乱れぬ復唱の声が司令部に響いた。




ディテク=コーミィ部隊がえらく派手な甲冑を装備してますが、これはディテクティブコミックス(社名ではなく雑誌のほう)のバットマン初出号がこのカラーリングだからです。
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