毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~ 作:ケ・セラ・セラ
エルフの戦士達が水上を駆ける。
系統魔法で"
だが悪魔達も黙って見ているわけではない。
緑の防壁に光芒が遮られたのを見た瞬間、塵に変わった同族に変わって新たな"ドラゴンフライ"が数体前に出て、口を大きく開く。
自らを構成する魔力をエネルギーに変えて撃ち出そうとしたその瞬間、黄金の光が飛来した。
直径1mはあろうかという金色の
それが十匹近いドラゴンフライをなます切りにして、庭木とブロンズ像を巻き込んで離宮の壁にめり込んでようやく止まる。
光芒を吐こうとしていたトカゲ悪魔達は、一瞬遅れて魔力を暴走させて大爆発を起こした。
それを放ったのは人間で言えば恐らく金等級にも手の届くつわもの。
次期族長ナタラの妃、サティ・ラジャリー・ソナハヴァリ・シーダ。
ズールーフ最強の戦士――『黄金の烈風』と呼ばれた猛女だ。
「ナパティ!」
離宮の敷地に駆け込み、黄金の三叉戟を縦横無尽に振るいながら、戦闘の喧騒を圧して猛女の声が響く。
対岸にて顔を歪めるバカ息子が一人。
「ええい、わかっておるわ! やればいいんだろううが!」
事前に満面の笑み(目が笑っていない)で『バッくれたら殺すからな(意訳)』とさんざん念押しされていた追放王子が半泣きで目を見開く。
「
大きく見開いた目に閃光が走る。
次の瞬間、両目から猛烈な火炎の筋が二条ほとばしった。
白くまばゆく輝くそれはまさしく火神の加護。概念の域に達した
それは堀の水に命中すると水蒸気爆発を起こし、爆風と巨大な水蒸気の雲を作り上げた。
ただし、離宮東南の角の突入口から外れた、やや西側に寄った場所だ。
「ハッシャ!」
「おうよ!」
相方をちょっと同情のまなざしで見ていたドワーフの細工師が大きく息を吸い込み、その胸がハトのように膨らむ。
その口から吹き出したのは風速80mの猛烈な突風。
ただし、これでも相当加減している。
何故なら目的は敵を吹き飛ばすことではなく――
「目くらましか!」
「こいつはありがたいな、大兄!」
エルフ達同様、水上を走って渡っていたシロウ達が笑みをこぼす。
水蒸気の雲は突入する彼らやモニカたちの姿をかき消し、場所をつかめなくする。
白兵戦に入ったドラゴンフライどもにこちらに光芒を放つ余裕があったとしても、これではめくら撃ちにならざるを得ない。
エルフ達の突入と合わせて完璧な援護であった。
「チェェェェインジ、ハーキュリーズスリィィィッ! 水上走行モォォォオドッ!」
一方で異常にテンションが上がっているのがイサミだ。
コックピットという名の作業室でポーズを取ると万能移動型要塞店舗ハーキュリーズの足が折りたたまれて、キャタピラのような形状に変形する。
腕の生えた家が水上を走るその姿に夫の後ろでサポートを務めるアンドロメダと、並行して飛ぶ魔導ポッド「ドルフィン」のマデレイラ、そして軍の兵士と冒険者たちが揃って名状しがたい表情になった。
「本当に全くもう、いくらつぎ込んだ・・・あなた! 接近する影が十数体!」
「おう、こっちでも見えてる!」
周囲のモニター画面に目を走らせたアンドロメダとイサミのやりとり。
ハーキュリーズに搭載された多数のセンサーは、ただの水蒸気の塊程度などものともしない。
「魔法力ビィィィムッ!」
霧の壁を利用して架橋部隊と、あわよくば後方の砲兵に打撃を与えようとしていたドラゴンフライ達が数十体、ハーキュリーズの両目から放たれた光芒に薙ぎ払われて四散消滅する。
離宮上空を旋回していた悪魔達も十数匹が巻き込まれて塵となった。
「あなた、司令部から通信よ。そのまま架橋部隊の前に陣取って盾になってくれって!」
「了解! 悪魔ども、思い知らせてやるぜ、ハーキュリーズの恐ろしさをなぁ~~~っ!」
またしても異様にテンションを上げる夫に溜息をついた後、今度はマデレイラに通信を繋ぐ。
モニタの中では、たった今ハーキュリーズの魔力砲から運良く逸れたドラゴンフライを一匹、人型モードとなったドルフィンが光の剣で斬り捨てたところだった。
「マディ、聞こえる?」
「聞こえてます、お姉様! 私はお姉様たちの援護ですね」
「私たちはここから動けないから、討ち漏らした相手はお願いね」
「任せて下さい!」
敬愛する姉からの頼みにこちらもテンションを上げる眼鏡の少女。
だがそれもつかの間、ふと不安げな影がその顔によぎる。
「メディ姉様・・・ヒョウエたちは大丈夫でしょうか・・・?」
「・・・」
心臓をえぐり出されたヒョウエの治療を手伝っていた関係で、マデレイラも青い鎧の正体を知っている。
尊敬の対象で恩人でもある青い鎧。
恋慕の対象であるヒョウエ。
その二人が同一人物であったことを、彼女はまだ自分の中で消化し切れていなかった。
「安心しなさい、マデレイラ。ヒョウエはサクッと片付けて戻ってくると言っていたでしょう? あれもちゃらんぽらんで無軌道なところのある子だけど、嘘をついたことはないわ」
「・・・はい」
少し、マデレイラの表情が緩む。
くすりと笑ってアンドロメダが続けた。
「それに私はあなたの事を応援していますからね。戻ってきたら全力でぶつかってやりなさい。いいわね?」
「・・・はいっ!」
勢いよく頷いて破顔するマデレイラ。
コクピットの魔導AIボボが両目を点滅させたが、音声は何も発しなかった。
「九曜顕現・日輪化身!」
宙に舞ったシロウの体が一瞬光り輝き、大陸横断レースの終盤で見せた白と赤の装束になる。
そのまま宙に留まったシロウの、額の黄金の日輪に光が集まる。
同様に光が集まるのは、十字に組んだ光の双剣。
「天魔伏滅・・・大日輪無量光!」
「うおっ!?」
「なんと!」
太陽のようなまばゆい光がほとばしり、閃光が視界を塗りつぶす。
光が収まったとき、視界内のドラゴンフライは全て消滅していた。
「お見事! 人間にもまだまだこのようなつわものがいるのですね!」
破顔するサティに目で微笑みつつ一礼。
「あやつらのような異界の魔と対すべく、磨いてきた業ですから。とは言え・・・」
「ですね」
表情を戻し、右手の三叉戟を握り直す。左手を伸ばすと離宮の壁に半ばまでめり込んだ黄金の大戦輪が手元に戻ってきた。
それと同時に現れたのは無数のドラゴンフライの群れ。
離宮の中から、建物の影から、どこに隠れていたのだと思うほどの大量の悪魔が現れる。
「あの術は後何度?」
「二度か三度が限界ですね」
「ではいざというときのために温存しておきましょう。まずは時間をかけてでもこやつらを確実にここで殲滅することです」
サティとシロウが頷き合う。
烈女の左手首で、ゆっくりと黄金の大戦輪が回り始めた。